鹿児島県の地震活動の特徴
鹿児島県に被害を及ぼす地震は、主に陸域や沿岸部の浅い場所で発生する地震と、日向灘や種子島、奄美大島の東方沖の海域での地震と、南海トラフ沿いの巨大地震です。
鹿児島県とその周辺の主な被害地震(図をクリックすると拡大表示)
島嶼部を除く鹿児島県での地震は、薩摩半島など県西部で多く発生しています。ここではこれまで知られている陸域の浅いところで発生した地震のうち九州地方で最大といわれる1914年の桜島の地震(M7.1)が発生しています。このほか、知覧付近に起きた1893年(M5.3)と1894年(M6.3)の地震、1913年の串木野南方の地震(M5.7)、霧島山北西麓では1915年の栗野付近の群発地震(最大M5.0)、1961年の吉松付近での群発地震(最大M5.3)などの被害地震があります。さらに、1968年の「えびの地震」(M6.1)のように、周辺地域で発生した地震によって被害を受けることもあります。「えびの地震」では、宮崎県えびの町(旧名、現在のえびの市)を中心に多くの住家が全半壊し、多数の山(崖)崩れが発生し県内でも死者3名、住家全壊35棟、住家半壊202棟などの被害が生じました。
最近では、1997年3月26日に鹿児島県北西部の地震(M6.6)が発生し、薩摩川内(さつませんだい)市、阿久根(あくね)市及びさつま町宮之城で震度5強を観測し、負傷者31名、住家全壊4棟などの被害が生じました。この地震の震源の深さは12kmと浅く、東西方向の左横ずれの断層運動による地震です。4月3日に薩摩川内市で震度5強を観測した最大余震(M5.6)が発生し、負傷者5名、住家半壊6棟などの被害が生じました。また、5月13日にはその南西5km、深さ9kmのところでM6.4の地震が発生し、薩摩川内市で震度6弱、さつま町宮之城で震度5強を観測し、負傷者43名、住家全壊4棟、同半壊29棟などの被害が生じました。この地震は、東西方向の左横ずれ断層運動と、ほぼ同時に南北方向の横ずれ断層運動があったと考えられています。
島嶼部では、1996年に種子島中部の地震(M5.8)が、奄美大島周辺の被害地震には、奄美大島に崖崩れ等を引き起こした1970年奄美大島北西沖の地震(M6.1)があります。1996年の地震は浅いところ、1970年の地震はやや深いところで発生した地震です。
日向灘南部から種子島東方沖を経て奄美大島東方沖にいたる海域では、プレート境界付近に発生する地震がみられ、震源が浅い場合には津波を伴うことがあります。このうち、鹿児島県東部地域は、日向灘の地震で被害を受けることがあります。例えば、1961年の日向灘の地震(M7.0)では、大隅半島、特に大崎町、志布志(しぶし)市で死者や家屋全壊などの被害が生じました。また、1662年の日向灘の地震(M7 1/2 ~ 7 3/4)での県内の被害の詳細は不明ですが、津波被害などが生じた可能性があります。さらに、陸域の下へ深く沈み込んだフィリピン海プレート内の地震で被害を受けることがあります。1909年の宮崎県西部の深い地震(M7.6、深さ約150km)では、鹿児島市で小被害が生じました。
種子島東方の海域では、1923年に地震(M7.1)が発生し、種子島の中部と南部において家屋などへの被害が生じました。この地震はプレート境界付近の地震と考えられますが、津波の報告はなかったため、震源域は陸域にかなり近く、また震源はやや深かった可能性があります。奄美大島東方の海域では、1901年の地震(M7.5)、1911年の地震(M8.0)、1995年の地震(M6.9、M6.7)などの被害地震が発生しています。1911年及び1995年の地震では、津波が喜界島や奄美大島を襲いました。また、国外の地震によって津波被害を受けることがあり、1960年の「チリ地震津波」では、種子島及び奄美大島で被害が生じました。
悪石島・小宝島・諏訪之瀬島などの近海でしばしば発生する群発地震は、火山列上に発生するため、火山活動に伴うものと考えられます。1972年の小宝島付近に発生した群発地震(最大M3.5)や1995年の小宝島近海の群発地震(最大M5.4)では小被害が生じました。
鹿児島県の主要な活断層は主として県北西部にあり、八代海から県北西沖に延びる日奈久断層帯、熊本県南西部から県北部に延びる出水断層帯、阿久根市西方沖から甑島周辺の海域に分布する甑断層帯、いちき串木野市から甑海峡に分布する市来断層帯があります。短い活断層は、水俣断層帯、鹿児島湾東縁断層帯、鹿児島湾西縁断層帯、池田湖西断層帯があります。桜島や開聞岳、霧島などの火山活動に伴って大きい地震が火山の周辺部で発生する可能性もあります。
また、鹿児島県周辺に震源域のある海溝型地震はありませんが、南海トラフ沿いの巨大地震や日向灘や南西諸島の海域で発生する地震で津波や強い揺れの被害を受ける可能性もあります。
鹿児島市や志布志湾沿岸などのやや弱い地盤の場所では、地震が発生した場合には他の地域より揺れが大きくなる可能性があります。
出水市を除いた県内の42市町村は、南海トラフの地震で著しい地震災害が生じるおそれがあり、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。また、志布志市をはじめ太平洋の沿岸部の8市町は全て「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定されています。
【 鹿児島県周辺の活断層帯と海溝で起こる地震 】
【 鹿児島県に被害を及ぼした主な地震 】
【 確率論的地震動予測地図 】 【 リンク 】
○鹿児島県周辺の活断層帯と海溝で起こる地震 [上に戻る]
地震 | マグニチュード | 地震発生確率 (30年以内) 【地震発生確率値の留意点】 |
|||
海溝型地震 | |||||
南海トラフ | 南海トラフで発生する地震 | 8~9クラス | 70%~80% | ||
日向灘及び 南西諸島海溝 周辺 |
日向灘 | 8程度 | - | ||
ひとまわり小さい地震 | 7.0~7.5程度 | 80%程度 | |||
安芸灘~伊予灘~豊後水道 | 6.7~7.4程度 | 40%程度 | |||
九州中央部 | 7.0~7.5程度 | - | |||
南西諸島周辺及び与那国島周辺 | 8.0程度 | - | |||
ひとまわり小さい地震 | 南西諸島周辺 | 7.0~7.5程度 | - | ||
与那国島周辺 | 7.0~7.5程度 | 90%程度以上 | |||
南西諸島北西沖 | 7.0~7.5程度 | 60%程度 | |||
内陸の活断層で発生する地震 | |||||
布田川断層帯・ 日奈久断層帯 |
布田川断層帯(布田川区間) | 7.0程度 | ほぼ0% | ||
布田川断層帯(宇土区間) | 7.0程度 | 不明 | |||
布田川断層帯(宇土半島北岸区間) | 7.2程度以上 | 不明 | |||
日奈久断層帯(高野−白旗区間) | 6.8程度 | 不明 | |||
日奈久断層帯(日奈久区間) | 7.5程度 | ほぼ0%~6% | |||
日奈久断層帯(八代海区間) | 7.3程度 | ほぼ0%~16% | |||
雲仙断層群 | 北部 | 7.3程度以上 | 不明 | ||
南東部 | 7.1程度 | 不明 | |||
南西部 (北部) | 7.3程度 | ほぼ0%~4% | |||
南西部 (南部) | 7.1程度 | 0.5%~1% | |||
出水断層帯 | 7.0程度 | ほぼ0%~1% | |||
人吉盆地南縁断層 | 7.1程度 | 1%以下 | |||
甑断層帯 | 上甑島北東沖区間 | 6.9程度 | 不明 | ||
甑区間 | 7.5程度 | 0.3%~1% | |||
市来断層帯 | 市来区間 | 7.2程度 | 不明 | ||
甑海峡中央区間 | 7.5程度 | 不明 | |||
吹上浜西方沖区間 | 7.0程度以上 | 不明 |
○鹿児島県に被害を及ぼした主な地震 [上に戻る]
西暦(和暦) | 地域(名称) | M | 主な被害(括弧は全国での被害) |
1707年10月28日 (宝永4) |
(宝永地震) | 8.6 | (死者20,000人、家屋全壊60,000棟、同流失20,000棟。)志布志湾など津波被害が推定されるが県内被害は不詳。 |
1854年12月24日 (安政元) |
(安政南海地震) | 8.4 | (安政東海地震の32時間後に発生、二つの地震の被害や、津波被害と区別困難。)津波被害が推定されるが、県内被害は不明。 |
1911年6月15日 (明治44) |
奄美大島近海 | 8.0 | (喜界島・奄美大島・沖縄島などに被害。死者12人、家屋全壊422棟。) |
1914年1月12日 (大正3) |
桜島 | 7.1 | 鹿児島市内で死者13人、負傷者96人、住家全壊39棟。鹿児島市近郊で死者22人、負傷者16人。 |
1961年2月27日 (昭和36) |
日向灘 | 7.0 | 大崎町・志布志町で被害。死者1人、負傷者3人、家屋全壊2棟。 |
1968年2月21日 (昭和43) |
(えびの地震) | 6.1 | 山崩れが多かった。死者3人、負傷者10人、住家全壊35棟。 |
1997年3月26日 (平成9) |
鹿児島県北西部 | 6.6 | 負傷者31人、住家全壊2棟。 |
1997年5月13日 (平成9) |
鹿児島県北西部 →【地震本部の評価】 |
6.4 | 負傷者43人、住家全壊4棟。 |
2024年8月8日 (令和6) |
日向灘 【地震本部の評価】 →令和6年8月9日公表 →令和6年9月10日公表 【リンク集】 |
7.1 | 負傷者4人、住家全壊1棟(令和6年8月28日10時00分、総務省消防庁調べ)。 |
◆ 鹿児島県(奄美地方を除く)
◆ 鹿児島県(奄美地方)
「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」(評価基準日:2020年1月1日)
を示した地震動予測地図です。
詳しい内容を知りたい方は、「全国地震動予測地図2020年版」をご覧下さい。
全国地震動予測地図の詳細なデータや関連情報は地震ハザードステーション(J-SHIS)をご参照下さい。
○リンク [上に戻る]
地震動予測地図等
- 全国地震動予測地図
「全国地震動予測地図」 のページです。 - 地震ハザードステーション(J−SHIS)
防災科学技術研究所の地震ハザードステーション(J−SHIS)です。地震動予測地図の各種地図の閲覧、数値データ等のダウンロードが可能です。 - 長周期地震動予測地図
将来ある特定の地震が発生した際に生じる長周期地震動の揺れの強さや性質を予測した地図です。 - 応答スペクトルに関する地震動ハザード評価
工学的利活用に向けて、試作版の報告書を公表しています。 - 強震動評価
ある特定の震源断層に着目して、そこで地震が発生した場合に周辺の地域がどの程度の強い揺れに見舞われるかを示した地図です (震源断層を特定した地震動予測地図)。- 「九州地域の活断層の長期評価(第一版)」で新たに評価対象となった活断層で発生する地震の予測震度分布(簡便法計算結果)
九州地域評価において新たに詳細な評価を行った断層帯および評価の改訂を行った主要活断層帯について、簡便法により予測震度分布を計算した結果を掲載しています。
掲載した活断層: 小倉東断層,福智山断層帯,西山断層帯,宇美断層,日向峠−小笠木峠断層帯,佐賀平野北縁断層帯,布田川断層帯(布田川断層帯・日奈久断層帯),日奈久断層帯(布田川断層帯・日奈久断層帯),緑川断層帯,甑断層帯,市来断層帯 - 布田川・日奈久断層帯の地震を想定した強震動評価(平成15年7月31日公表)
- 布田川断層帯(布田川断層帯・日奈久断層帯)の地震による予測震度分布(簡便法)/日奈久断層帯(布田川断層帯・日奈久断層帯)の地震による予測震度分布(簡便法)
「布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂)(平成25年2月1日公表)」とあわせて示した予測震度分布図です。 - 人吉盆地南縁断層の地震による予測震度分布
「人吉盆地南縁断層の長期評価(平成18年12月18日公表)」とあわせて示した予測震度分布図です。 - 日向灘の地震を想定した強震動評価(平成17年9月26日公表)
- 「九州地域の活断層の長期評価(第一版)」で新たに評価対象となった活断層で発生する地震の予測震度分布(簡便法計算結果)
- 長周期地震動予測地図作成等支援事業
文部科学省では、「新しい総合的かつ基本的な施策」(地震調査研究推進本部,2009)の中で今後推進すべき研究とされた長周期地震動について、平成22年度から研究機関に委託して調査研究を行っています。 - 防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト
南海トラフでは、マグニチュード8クラスの大地震が発生し、残りの領域においても連動して大地震が発生する可能性が高まる(「半割れ」ケース)などの「異常な現象」が観測される可能性が示されています。文部科学省では、こうした「異常な現象」が起こった後の地震活動の推移を科学的・定量的データを用いて評価するための研究開発や、「異常な現象」が観測された場合の住民・企業等の防災対策のあり方、防災対応を実行するにあたっての仕組みについて調査研究を実施し、これら研究成果の活用を推進するため、令和2年度より研究機関に委託して研究プロジェクトを実施しています。 - 南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト
文部科学省では、南海トラフから南西諸島海溝域までの震源モデルを構築、地震・津波の被害予測とその対策、発災後の復旧・復興対策を検討し、地域の特性に応じた課題に対する研究成果の活用を推進させるため、平成25年度より研究機関に委託して研究プロジェクトを実施しています。 - 東海・東南海・南海地震の連動性評価研究プロジェクト
東海・東南海・南海地震については、今後30年以内の発生確率が非常に高く、これら3つの地震は将来連動して発生する可能性も高いことから、これら3つの地震の時空間的な連動性を評価するため、海底稠密地震・津波・地殻変動観測や物理モデルの構築、シミュレーション研究、強震動・津波予測、被害想定研究等を総合的に行っています。 - 内閣府 東南海・南海地震対策
内閣府の東南海・南海地震対策のページです。 - 内閣府 南海トラフ地震対策
内閣府の南海トラフ地震対策のページです。
長期評価等
- 長期評価
- 海溝型地震の将来の発生可能性についての評価
- 内陸の活断層帯の将来の地震発生の可能性についての評価です。
- 「九州地域の活断層の地域評価」
九州地域の陸域及び沿岸海域に分布し、M6.8以上の地震を引き起こす可能性のある活断層について、総合的に評価しました。
- 活断層調査・観測等
- 地域評価のための活断層調査(九州地域)
文部科学省では、「活断層の地域評価」で新たに評価の対象となった短い活断層のうち、断層の位置・形状や活動履歴等に関する情報が十分ではない 活断層を対象として調査を実施しています。
- 平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査
文部科学省では、「平成28年(2016年)熊本地震」の発生を受け、布田川断層帯・日奈久断層帯において今後発生する地震像の解明及び強震動予測の高度化を図るため、大学等に委託し、平成28年度から総合的な活断層調査を実施しています。 - 熊本県 平成7年度 布田川断層帯(立田山断層を含む)に関する調査成果報告書
- 熊本県 平成9年度 日奈久断層に関する調査成果報告書
- 独立行政法人産業技術総合研究所 平成18年度 布田川・日奈久断層帯の活動性および活動履歴調査(「基盤的調査観測対象断層帯の追加・補完調査」成果報告書 No.H18−7)
- 独立行政法人産業技術総合研究所/地域地盤環境研究所/東海大学 平成22年度 沿岸海域における活断層調査 布田川-日奈久断層帯/中部・南西部(海域部) 成果報告書
- 国立研究開発法人産業技術総合研究所 地域評価のための活断層調査(九州地域) 平成27年度成果報告書 3.布田川断層帯/宇土区間
- 地域評価のための活断層調査(九州地域)
- 産業技術総合研究所 活断層データベース
日本全国の活断層(活動セグメント)の分布とそのパラメータ、日本の活断層に関係する文献の書誌データ、文献から採録された調査地点ごとの調査結果データ、地下数十キロメートルまでの地下構造データが収録されています。 - 国土地理院 活断層図(都市圏活断層図)
国土地理院の活断層図(都市圏活断層図)のページです。
地震活動等
- 毎月の地震活動の評価
地震調査委員会による毎月(および臨時)の地震活動の評価です。
【1997年3月26日鹿児島県北西部の地震】 - 主な地震活動の評価
各地震活動について、これまでに公表された評価結果をとりまとめたものです。 - 日本の地震活動 −被害地震から見た地域別の特徴−
全国の地震活動の概要と地震に関する基礎知識、そして、日本を北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国及び九州・沖縄に区分し、その地方の地震活動の概要をはじめ、その地域に被害を及ぼす地震のタイプ、これまでに発生した主な被害地震の概要、都道府県別(北海道は地域別)の特徴について書かれています。 - 震源・震度に関する情報
気象庁、防災科学技術研究所、大学などの地震観測データに基づく震源・震度に関する情報です。 - 地震に関するパンフレット
地震発生のしくみ、地震調査研究推進本部の取組などを解説した各種パンフレットです。
津波評価等
- 津波評価
地震調査委員会では、津波予測の手順を標準化し、「波源断層を特性化した津波の予測手法(津波レシピ)」を公表しています。また、長期評価の結果と津波レシピをもとに、津波評価を進めています。 - 津波予測手法
「波源断層を特性化した津波の予測手法(津波レシピ)」についてのページです。 - 南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価
南海トラフ沿いで発生する大地震を対象に、長期評価の結果と津波予測の手順をもとに、公表時から30年以内に長期評価で想定される大地震が発生し、海岸の津波高がある高さ以上になる確率を評価した報告書です。
地方自治体等
- 鹿児島地方気象台
鹿児島地方気象台のページです。鹿児島県の地震概況等を閲覧することができます。
- 鹿児島県
鹿児島県の「危機管理・防災」のページです。地域防災計画等を閲覧することができます。
〔「九州・沖縄地方」に戻る〕