2011年の主な地震活動の評価
各地震活動の評価は、発生後、1年程度の間に公表された評価内容をとりまとめたものです。(これまでの地震活動の評価の閲覧へ)
○ 3月9日に三陸沖でM7.3の地震が発生し、宮城県で最大震度5弱を観測した。また、大船渡で55cmなど、東北地方や北海道地方・関東地方の一部の太平洋沿岸および伊豆諸島で津波を観測した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、大船渡観測点(岩手県)が約3cm東南東に移動するなどの地殻変動が観測されている。今回の地震の震源付近では、2月にもM5.0以上の地震が4回発生するなどのまとまった地震活動があった。
※この地震に対し、気象庁は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名した。
○ 3月11日14時46分頃に三陸沖の深さ約25kmでM9.0の地震が発生した。今回の本震の規模はこれまでに日本国内で観測された最大の地震である。この地震により宮城県栗原市で最大震度7を観測した。また、宮古で8.5m以上、大船渡で8.0m以上、石巻市鮎川で7.6m以上、相馬で7.7m以上などの高い津波を北海道地方、東北地方、関東地方の太平洋沿岸で観測し、死者・行方不明者約2万人などの甚大な被害を生じた。これまでの調査によると、小堀内(こぼりない)漁港(岩手県宮古市)で30m以上などの遡上が確認されている。
(注)その後の精査の結果、相馬の津波の高さは当初の7.7m以上から9.3m以上へ修正された。
○ 発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 4月11日現在、最大の余震は3月11日15時15分に発生したM7.7の地震で、M6.0以上の余震が60回以上発生している。また、4月7日には、M7.1の地震が発生し、宮城県で震度6強を観測した。余震域は南北約500kmにわたっており、今後も引き続き規模の大きな余震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある。
○ GPS観測結果によると、本震の発生に伴って、東北地方から関東地方の広い範囲で地殻変動が観測されており、牡鹿観測点(宮城県)では東南東方向に約5.3mの水平変動、約1.2mの沈降が観測されている。地震発生後、余効変動と考えられる東向きの地殻変動が観測されており、4月5日現在、山田観測点(岩手県)で約41cm、銚子観測点(千葉県)で約27cmなどの地殻変動が観測されている。また、陸域観測技術衛星「だいち」に搭載された合成開口レーダー(SAR)のデータからも、東北地方から関東地方にかけての広い範囲でGPS観測結果と調和的な地殻変動が観測されている。
○ 今回の地震の震源域は、岩手県沖から茨城県沖までに及んでおり、その長さは400km以上、幅は約200kmで、最大の滑り量は20m以上であったと推定される。滑り量の大きい領域は、地震調査委員会で評価している三陸沖南部海溝寄り、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの一部であったと考えられる。震源域の範囲は、更に三陸沖中部、宮城県沖、福島県沖、茨城県沖の領域を含んでいると考えられる。
○ 今回の地震の発生に伴って、水平方向に5m以上の変動が観測されるなど、大きな地殻変動が観測され、広域にわたってひずみ変化を与えている。東北地方から関東・中部地方にかけて、まとまった地震活動が観測されている地域があり、今回の地震の影響であると考えられる。
○ 3月11日に静岡県伊豆地方の深さ約5kmでM4.6の地震が発生し、静岡県で最大震度5弱を観測した。この地震の後、3月21日にM4.2の地震が発生するなどのまとまった地震活動が見られた。
○ 3月12日3時59分頃に長野県・新潟県県境付近の深さ約10kmでM6.7の地震が発生した。この地震により長野県栄村で最大震度6強を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内の浅い地震である。この地震の発生後、震度6弱を観測する地震が2回発生するなどのまとまった地震活動が見られた。
○ GPS観測結果によると、この地震に伴い、松之山観測点(新潟県)が約39cm北東に移動するなどの地殻変動が観測されている。
○ 3月15日22時31分頃に静岡県東部の深さ約15kmでM6.4の地震が発生した。この地震により静岡県富士宮市で最大震度6強を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。同日22時40分頃にM4.2(最大震度4)の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。この地震の発震機構は南北方向に圧力軸を持つ型である。今回の地震の余震分布と本震の発震機構から推定される震源断層は、北東-南西方向に延び、南東に下がる断層面を持つ左横ずれ断層であると考えられる。
○ GPS連続観測結果によると、この地震に伴い、裾野1観測点(静岡県)が約3cm東北東に移動するなどの地殻変動が観測されている。
○ 今回の地震は、想定東海地震の想定震源域の近くで発生しているが、想定東海地震とは異なる発震機構で発生した地震である。気象庁の観測によると、東海地域に設置したひずみ計には、直ちに想定東海地震に結びつくような異常な地殻変動は観測されていない。
○ 3月11日に発生した平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の発生に伴って、水平方向に4m以上の水平変動が観測されるなど、大きな地殻変動が観測され、概ね東西方向に伸張、南北方向に圧縮するひずみを、広域にわたり与えており、今回の地震はその影響によって発生した可能性は否定できない。
○ 3月19日に茨城県北部の深さ約5kmでM6.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北東-南西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、里美観測点(茨城県)が約2cm西南西に移動するなどの地殻変動が観測されている。また、陸域観測技術衛星「だいち」に搭載された合成開口レーダー(SAR)のデータによると、この地震に伴い、震央付近で地殻変動が観測された。
○ 3月23日に福島県浜通りの深さ約10kmでM6.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、いわき2観測点(福島県)が約6cm東南東に移動するなどの地殻変動が観測されている。
○ 3月24日に茨城県南部の深さ約50kmでM4.8の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 4月1日に秋田県内陸北部の深さ約10kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 4月2日に茨城県南部の深さ約55kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。また、今回の地震の震源付近では、4月19日と4月26日にもM5.0の地震が発生した。
○ 4月7日23時32分頃に宮城県沖の深さ約65kmでM7.2の地震が発生した。この地震により宮城県で最大震度6強を観測し、死者が出るなどの被害を生じた。
(注)その後の精査の結果、マグニチュードは当初の7.1から7.2へ修正された。
○ 今回の地震は、発震機構が西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、震源が深いこと、余震分布が南東傾斜であることから、プレートの境界の地震ではなく、太平洋プレート内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、M牡鹿観測点(宮城県)で西方向に約3cmの水平変動、約5cmの隆起などの地殻変動が観測されている。
○ 4月11日に福島県浜通りの深さ約5kmでM7.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内の浅い地震である。この地震の後、4月12日にM6.4の地震が発生して最大震度6弱を観測するなどの活発な地震活動が見られている。
○ GPS観測結果によると、この地震に伴い、いわき4観測点(福島県)で北北西方向に約29cmの水平移動、約50cmの沈降などの地殻変動が観測されている。また、陸域観測技術衛星「だいち」に搭載された合成開口レーダー(SAR)のデータによると、この地震に伴い、震央付近で地殻変動が観測された。現地調査によって地表断層変位が観察されている。
○ 4月12日に長野県北部のごく浅いところでM5.6の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西-南南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、長野栄観測点(長野県)が約3cm北東に移動するなどの地殻変動が観測されている。この地震の発生後、M4.0以上の地震が3回発生するなどのまとまった地震活動があった。
○ 4月12日に千葉県東方沖の深さ約25kmでM6.4の地震が発生した。この地震は、フィリピン海プレート内で発生した地震である。発震機構は南北方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型であった。GPS観測結果によると、この地震に伴い、銚子観測点(千葉県)が約1cm南に移動するなどの地殻変動が観測されている。
○ 4月16日に茨城県南部の深さ約80kmでM5.9の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
○ 4月17日に長野県・新潟県県境付近の深さ約10kmでM4.9の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。今回の地震の震源付近では、3月12日にM6.7の地震が発生している。
○ 4月19日に秋田県内陸南部の深さ約5kmでM4.9の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 4月21日に千葉県東方沖の深さ約45kmでM6.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。
○ 5月6日に福島県浜通りの深さ約5kmでM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西-南南東方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。この地震の後、5月25日にM5.0の地震が発生して最大震度5弱を観測するなど、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の発生後から活発な地震活動が続いている。
○ 6月2日に新潟県中越地方の深さ約5kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ型で、地殻内で発生した地震である。同日12時51分にM4.1の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。
○ 6月23日に岩手県沖の深さ約35kmでM6.9の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、S普代観測点(岩手県)が約2cm東に移動するなどの地殻変動が観測されている。
○ 6月30日に長野県中部の深さ約5kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、震央付近で小さな地殻変動が観測されている。この地震の発生後、同日08時21分にM5.1の地震が発生するなどのまとまった地震活動が見られている。今回の地震の震源の東側に糸魚川-静岡構造線断層帯(牛伏寺断層を含む区間)が存在しており、余震の一部は牛伏寺断層の近傍で発生している。
○ 7月5日19時18分に和歌山県北部の深さ約5kmでM5.5の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。また、同日19時34分にM4.5の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。
○ 7月10日に三陸沖でM7.3の地震が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した地震である。発震機構は西北西-東南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型であった。この地震により、大船渡(岩手県)で10cm、仙台港(宮城県)で12cm、相馬(福島県)で9cmの津波を観測した。GPS観測結果によると、この地震に伴い、宮城県とその周辺でごくわずかな地殻変動が観測されている。
○ 7月15日に茨城県南部の深さ約65kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。
○ 8月1日に駿河湾の深さ約25kmでM6.2の地震が発生した。この地震はフィリピン海プレート内部で発生した地震である。発震機構は南北方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
○ 8月19日に福島県沖の深さ約50kmでM6.5の地震が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した地震である。発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
○ 9月7日22時29分に日高地方中部〔浦河沖〕の深さ約10kmでM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北東-南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。また、同日07時27分にM4.3の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。
○ 9月21日に茨城県北部の深さ約10kmでM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 9月29日に福島県浜通り〔福島県沖〕の深さ約10kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、震央付近で小さな地殻変動が観測されている。
○ 10月5日に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.5の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 11月20日に茨城県北部の深さ約10kmでM5.3の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 11月21日に広島県北部の深さ約10kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。この地震の後、25日にM4.7の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。
○ 11月24日に浦河沖の深さ約45kmでM6.2の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。