2008年の主な地震活動の評価
各地震活動の評価は、発生後、1年程度の間に公表された評価内容をとりまとめたものです。(これまでの地震活動の評価の閲覧へ)
A | 2008年1月26日 石川県能登地方の地震活動 | M4.8 | 最大震度5弱 | |
B | 2008年5月8日 茨城県沖の地震活動 | M7.0 | 最大震度5弱 | |
C | 2008年6月14日 岩手・宮城内陸地震の地震活動 | M7.2 | 最大震度6強 | |
D | 2008年7月5日 茨城県沖の地震活動 | M5.2 | 最大震度5弱 | |
E | 2008年7月8日 沖永良部島付近〔沖縄本島近海〕の地震活動 | M6.1 | 最大震度5弱 | |
F | 2008年7月19日 福島県沖の地震活動 | M6.9 | 津波を観測 | |
G | 2008年7月24日 岩手県中部〔岩手県沿岸北部〕の地震活動 | M6.8 | 最大震度6弱 | |
H | 2008年9月11日 十勝沖の地震活動 | M7.1 | 最大震度5弱 | 津波を観測 |
○ 1月26日に石川県能登地方の深さ約10kmでM4.8の地震が発生した。発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、「平成19年(2007年)能登半島地震」の余震である。
○ 5月8日01時45分に茨城県沖でM7.0の地震が発生した。発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。この地震により、宮城県と福島県の沿岸で微弱な津波が観測された。この地震の震源付近では、5月7日夕方頃からM4~5の地震が発生しており、この地震の約40分前にもM6.4、約30分前にはM6.3の地震が発生し、M7.0の地震発生直後は5月9日のM5.8を含む余震活動が一時やや活発になった。全体的には余震活動は低下してきている。
○ GPS観測結果によると、今回の地震に伴い、関東地方の広い範囲でわずかながら地殻変動が観測された。
○ GPS観測結果や地震波形データから推定される今回のM7.0の地震の断層モデルは北北東-南南西走向、西傾斜の逆断層であった。また、地震波形データから推定した今回の地震と1982年のM7.0の地震の主な破壊領域はほぼ一致する。
○ この地域では地震活動が活発であり、1940年以降、1943年、1961年、1965年、1982年にM6.7~M7.0のプレート間地震が4回発生しており、今回もほぼ同じ領域で発生した。今回の地震は震源位置、発震機構、マグニチュードの大きさなどから、地震調査委員会が想定していた茨城県沖のプレート間地震(想定M6.8程度)であると考えられる。なお、地震調査委員会が平成14年7月31日に公表した長期評価では、平均発生頻度は15.5年に一回程度であり、M6.8程度の地震が10年以内に発生する確率は50%程度、20年以内で70%程度、30年以内で90%程度(ポアソン過程)であった。
○ 6月14日08時43分頃に岩手県内陸南部の深さ約10kmでM7.2の地震が発生し、岩手県と宮城県で最大震度6強を観測した。発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内の浅い地震である。
○ 地震活動は本震-余震型であり、余震の大部分は北北東から南南西に延びる長さ約45km、幅約15kmの領域で発生しており、大局的には西傾斜の分布となっている。7月10日までの最大の余震は6月14日09時20分頃に発生したM5.7の地震(最大震度5弱)で、余震活動は全体的に減衰しつつある。
○ 今回の地震に伴い、震源域直上にある
○ GPS観測結果によると、震源域の直上の栗駒2観測点で、2.1mの隆起、1.5mの南東方向の水平変位などが観測された。また、加速度波形記録の解析から、一関西観測点で、1.4mの隆起と0.6mの北東方向の水平変位が得られた。SAR干渉解析結果によると、震源域の変動の大きかった領域は、長さ約30km、幅10kmに広がっており、その東縁に、現地調査で明らかになった地表地震断層と見られる地表変状が位置している。
(注)GPS観測結果の記述は2008年7月11日時点のものである。
○ また、GPS観測結果によると、震源域を中心に余効変動と見られる西北西-東南東方向の短縮が観測されている。
○ 本震の震源過程解析によると、すべり量の大きい領域は破壊開始点の南側の浅い部分に集中していたと推定される。GPS観測及びSAR干渉解析から推定した断層モデルからも同様なすべり量の集中域が見られる。地震時の地殻変動から、主なすべりを生じた断層の長さは30km程度で、断層面は西傾斜であると推定される。
○ 7月11日までの現地調査で、地表変状は北北東-南南西方向に約20kmにわたって点在していることが確認されている。このうち、少なくとも約8kmにわたっては、最大50cm程度の上下方向のずれを伴う北西側隆起の地表変状が、断続的に分布していることが確認された。これらの場所は地質図に示されている地質境界としての断層に沿っている。
○ 1976年に撮影された空中写真について、地震後に詳細な判読が行われた結果、地表変状が確認された場所に沿って、約4kmにわたり活断層によると考えられる地形が断続的に認められた。この地形に一致して地表変状が現れた地点で実施したトレンチ調査により、過去の活動の痕跡が認められた。今回の地震は、この活断層に関係したと考えられる。
○ 余震は、今回主なすべりを生じた領域より広く分布しており、余震域北部では北上低地西縁断層帯の南部にあたる活断層(
○ 7月5日に茨城県沖の深さ約50kmでM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 7月8日に
○ 7月19日に福島県沖でM6.9の地震が発生した。発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。この地震により、石巻市鮎川で0.2mなど、東北地方の太平洋沿岸で津波を観測した。地震活動は本震-余震型で推移しており、次第に低下してきている。8月11日までの最大の余震は7月21日のM6.1の地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、宮城県と福島県の太平洋沿岸を中心にわずかな地殻変動が観測されている。
○ 7月24日00時26分頃に岩手県中部〔岩手県沿岸北部〕の深さ約110kmでM6.8の地震が発生し、青森県と岩手県で最大震度6弱を観測した。発震機構は太平洋プレートが沈み込む方向に張力軸を持つ型で、太平洋プレート内(二重地震面の下面)で発生したやや深い地震である。過去には2001年に同様に下面で同じタイプの地震(M6.4)が発生している。
○ 地震活動は本震-余震型で推移した。深い場所で発生した地震によく見られる傾向であるように、余震活動は低調であった。8月11日までの最大の余震は7月24日11時27分頃に発生したM4.8(最大震度3)の地震である。
○ 岩手県玉山観測点(盛岡市)では、上下成分593Gal、水平成分で1,019Galの加速度が観測されている。ただし、短周期成分が卓越していたため、加速度の大きさの割に建物の被害が甚大とはならなかったと考えられる。なお、今回の地震は、地震の揺れの大きさが減衰しにくい太平洋プレート内部を震動が伝わったため、強い揺れが比較的遠くに伝わったと考えられる。
○ 周辺のGPS観測結果では、この地震の発生前後で顕著な地殻変動は観測されていない。
○ 9月11日09時20分頃に十勝沖でM7.1の地震が発生した。発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
地震活動は本震-余震型で推移している。10月9日までの最大の余震は9月11日09時32分頃に発生したM5.7の地震で、余震活動は全体的に減衰しつつある。
今回の地震は、平成15年(2003年)十勝沖地震の余震域で発生した。
○ えりもで0.5m、浦河で0.2mなど、北海道と東北地方の太平洋沿岸でこの地震による津波を観測した。
○ 北海道日高地方及び十勝地方の南部を中心とする地域で、この地震に伴う小さな地殻変動を観測した。
○ GPS観測結果から推定される今回の地震の断層モデルは北北東-南南西方向に延び、西北西方向に傾き下がる低角の逆断層であった。