北海道東部(網走、釧路、根室地方)の地震活動の特徴
北海道東部地域に被害を及ぼす地震は、主に、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生する地震と、沈み込んだプレートの内部で発生する地震と、陸域の浅い場所で発生する地震です。
北海道東部とその周辺の主な被害地震(図をクリックすると拡大表示)
太平洋側の沖合では、北海道東部地域以外の海域で発生したものも含めると、数多くの被害地震が発生しています。例えば、1952年の十勝沖地震(M8.2)、「1968年十勝沖地震」(M7.9)、「1973年6月17日根室半島沖地震」(M7.4)、「平成5年(1993年)釧路沖地震」(M7.5)、「平成6年(1994年)北海道東方沖地震」(M8.2)、「平成15年(2003年)十勝沖地震」(M8.0)、2004年の釧路沖の地震(M7.1)があります。このうち、「平成5年(1993年)釧路沖地震」と「平成6年(1994年)北海道東方沖地震」は、太平洋プレートそのものが破壊するプレート内の地震でした。一方、他の地震は、太平洋プレートが陸側のプレートの下へ沈み込むことによって発生するプレート間地震でした。
太平洋側沖合の地震では、特に東部地域の南半分(釧路地方、根室地方)で著しい被害を受けます。また、多くの場合、地震に伴って津波が発生し、太平洋沿岸に被害を与えます。なお、1975年の北海道東方沖の地震(M7.0)は、有感の範囲は比較的小さかったものの、大きな津波が発生しました。このように、揺れから通常予想されるよりもはるかに大きな津波を引き起こす、専門用語で「津波地震」と呼ばれる特殊な地震が起きることもあります。
陸域の浅い場所で発生した地震は、阿寒・弟子屈(てしかが)地域に集中しています。1938年の屈斜路(くっしゃろ)湖付近の地震(M6.1)では、震源域付近で著しい被害が生じました。さらに、1959年にも、この付近でいくつかの地震(M5.6,M6.3,M6.1)があり、被害が生じています。このように、ここでは同じ程度の規模の地震が、比較的短い時間内で続いて発生することがあります。また、1963年には、中標津(なかしべつ)町でM5.3の地震があり、小被害が生じました。北見山地からオホーツク海にかけての地域には、地震は多くありません。しかし、1956年に網走沖で発生した地震(M6.3)では、北見市常呂(ところ)町で地震の揺れによる小被害があり、網走市でごく小さな津波が観
測されました。
1964年に羅臼付近で群発地震活動が約3ヶ月間続き、活動の中で最大のM4.6の地震により羅臼温泉で小被害が生じました。この他、1965年には弟子屈付近でM5.1の地震を含む群発地震活動がありました。また、2004年には網走・根室地方の境界付近でM4.8の地震を含む群発地震活動がありました。
2018年9月6日に「平成30年北海道胆振東部地震」(M6.7)が発生しました。この地震により、道内で死者43人、負傷者782人、住家全壊469棟などの被害が生じました(平成31年4月1日現在、消防庁調べ)。
1933年の三陸地震(M8.1)に伴って根室や釧路に高さ1m前後の津波が来たように、三陸沖の地震や、1960年の「チリ地震津波」のような外国の地震によっても、津波による被害を受けたことがあります。また、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(M9.0)では、根室や釧路をはじめとして広く海岸沿いに2m以上の津波が押し寄せ、防波堤や船舶等が被害を受けました。
東部地域には、知床半島の付け根に標津断層帯があります。また、東部地域のすぐ西側の十勝地方に十勝平野断層帯があります。
この地域に被害を及ぼす可能性のある海溝型地震には、十勝沖の地震、根室沖の地震、色丹島沖及び択捉島沖の地震、超巨大地震(17世紀型)、ひとまわり小さいプレート間地震(十勝沖及び根室沖)、ひとまわり小さいプレート間地震(色丹島沖及び択捉島沖)、十勝沖から択捉島沖の海溝寄りのプレート間地震(津波地震等)、沈み込んだプレート内のやや浅い地震、沈み込んだプレート内のやや深い地震、海溝軸の外側で発生する地震があります。
釧路湿原や根室平野はやや軟弱な地盤であるため、地震が発生した場合には他の地域より揺れが大きくなる可能性があります。
釧路地方及び根室地方の全市町は、日本海溝・千島海溝周辺の海溝型地震によって被害が生じるおそれがあり、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」に指定されています。
【 北海道東部地域および周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 】
【 北海道に被害を及ぼした主な地震 】 【 確率論的地震動予測地図 】 【 リンク 】
○北海道東部地域および周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 [上に戻る]
地震 | マグニチュード | 地震発生確率 (30年以内) 【地震発生確率値の留意点】 |
|||
海溝型地震 | 千 島 海 溝 沿 い |
十勝沖 | 8.0~8.6程度 | 10%程度 | |
根室沖 | 7.8~8.5程度 | 80%程度 | |||
色丹島沖及び択捉島沖 | 7.7~8.5前後 | 60%程度 | |||
超巨大地震(17世紀型) | 8.8程度以上 | 7%~40% | |||
ひとまわり小さい プレート間地震 |
十勝沖及び根室沖 | 7.0~7.5程度 | 80%程度 | ||
色丹島沖及び択捉島沖 | 7.5程度 | 90%程度 | |||
十勝沖から択捉島沖の海溝寄りの プレート間地震(津波地震等) |
Mt8.0程度 | 50%程度 | |||
沈み込んだプレート内のやや浅い地震 | 8.4前後 | 30%程度 | |||
沈み込んだプレート内のやや深い地震 | 7.8程度 | 50%程度 | |||
海溝軸の外側で発生する地震 | 8.2前後 | 不明 | |||
内陸の活断層で発生する地震 | |||||
標津断層帯 | 7.7程度以上 | 不明 | |||
十勝平野断層帯 | 主部 | 8.0程度 | 0.1%~0.2% | ||
光地園断層 | 7.2程度 | 0.1%~0.4% |
○北海道に被害を及ぼした主な地震 [上に戻る]
西暦(和暦) | 地域(名称) | M | 主な被害(括弧は全国での被害) |
1611年12月2日 (慶長16) |
三陸沿岸および北海道東岸 | 8.1 | 津波により死者多数。 |
1792年6月13日 (寛政4) |
後志 | 7.1 | 津波により死者5人。 |
1833年12月7日 (天保4) |
羽前・羽後・越後・佐渡 | 7.5 | (死者約100人、家屋全壊475棟、津波被害大。) |
1834年2月9日 (天保5) |
石狩 | 6.4 | 石狩川河口付近を中心に被害。住家全壊23棟。 |
1843年4月25日 (天保14) |
釧路・根室 | 7.5 | 釧路で4~5mの津波。釧路、根室で溺死46人、家屋破損76棟。 |
1856年8月23日 (安政3) |
日高・胆振・渡島・津軽・南部 | 7.5 | 北海道南岸一帯に津波。函館で浸水あり。 |
1894年3月22日 (明治27) |
根室南西沖 | 7.9 | 根室、釧路、厚岸に被害。死者1人、負傷者6人、住家全壊12棟。 |
1896年6月15日 (明治29) |
((明治)三陸地震津波) | 8.2 | 十勝から函館までの沿岸で津波により被害。死者6人、北海道から宮城にかけて家屋流失全半壊1万棟以上。 |
1915年3月18日 (大正4) |
広尾沖 | 7.0 | 帯広地方で被害。死者2人。 |
1933年3月3日 (昭和8) |
(三陸地震) | 8.1 | 津波により被害。死者13人、負傷者54人、家屋倒壊48棟、同流失19棟。 |
1938年5月29日 (昭和13) |
屈斜路湖付近 | 6.1 | 死者1人、住家全半壊7棟。 |
1940年8月2日 (昭和15) |
神威岬沖 | 7.5 | 天塩、羽幌、苫前を中心に津波等により被害。死者10人、家屋流失20棟。 |
1952年3月4日 (昭和27) |
(十勝沖地震) | 8.2 | 太平洋沿岸一帯に津波により被害。死者・行方不明者33人、住家全壊815棟、同流失91棟。 |
1959年1月31日 (昭和34) |
弟子屈付近 (連発地震) |
6.3(5時38分) 6.1(7時17分) |
弟子屈、阿寒を中心に被害。住家全壊2棟。 |
1960年5月23日 (昭和35) |
(チリ地震津波) | Mw9.5 | 津波により被害。死者・行方不明者15人、負傷者15人、住家全壊38棟、同流失158棟。 |
1968年5月16日 (昭和43) |
(1968年十勝沖地震) | 7.9 | 南西部地域を中心に、津波により被害。死者2人、負傷者133人、住家全壊全焼27棟。 |
1970年1月21日 (昭和45) |
十勝支庁南部 | 6.7 | 日高支庁に被害。負傷者32人、住家全壊2棟。 |
1973年6月17日 (昭和48) |
(1973年6月17日根室半島沖地震) | 7.4 | 津波と強い揺れにより釧路・根室支庁に被害。負傷者26人、住家全壊2棟。 |
1982年3月21日 (昭和57) |
(昭和57年(1982年)浦河沖地震) | 7.1 | 日高支庁沿岸を中心に、負傷者167人、住家全壊13棟。 |
1983年5月26日 (昭和58) |
(昭和58年(1983年)日本海中部地震) | 7.7 | 渡島・檜山・奥尻に津波と強い揺れにより被害。死者4人、負傷者24人、住家全壊9棟。 |
1993年1月15日 (平成5) |
(平成5年(1993年)釧路沖地震) | 7.5 | 釧路支庁に被害。死者2人、負傷者966人、住家全壊53棟。 |
1993年7月12日 (平成5) |
(平成5年(1993年)北海道南西沖地震) | 7.8 | 奥尻島を中心に、津波と強い揺れにより、死者・行方不明者229人、負傷者323人、住家全壊601棟。 |
1994年10月4日 (平成6) |
(平成6年(1994年)北海道東方沖地震) | 8.2 | 釧路・根室支庁に被害。負傷者436人、住家全壊61棟。 |
2003年9月26日 (平成15) |
(平成15年(2003年)十勝沖地震) →【地震本部の評価】 |
8.0 | 死者1人、行方不明1人、負傷者849人、家屋全壊116棟。 |
2004年11月29日 (平成16) |
釧路沖 →【地震本部の評価】 |
7.1 | 負傷者52人。 |
2008年7月24日 (平成20) |
岩手県中部〔岩手県沿岸北部〕 →【地震本部の評価】 |
6.8 | 負傷者1人。 |
2011年3月11日 (平成23) |
(平成23年(2011年) 東北地方太平洋沖地震) 【地震本部の評価】 →平成23年3月11日公表 →平成23年3月13日公表 →平成23年4月11日公表 →平成25年3月11日公表 →平成26年3月11日公表 →平成27年3月10日公表 →平成28年3月9日公表 →平成29年3月9日公表 →平成30年3月9日公表 →平成31年3月11日公表 →令和2年4月10日公表 →令和3年3月9日公表 →地震調査委員長見解 (令和3年3月9日公表) |
9.0 | 死者1人、負傷者3人(令和3年3月1日現在、消防庁調べ)。 |
2018年9月6日 (平成30) |
(平成30年北海道胆振東部地震) 【地震本部の評価】 →平成30年9月6日公表 →平成30年9月11日公表 →平成30年10月12日公表 【リンク集】 |
6.7 | 死者43人、負傷者782人、住家全壊469棟、住家半壊1,660棟(平成31年4月1日現在、消防庁調べ)。 |
2019年2月21日 (平成31) |
胆振地方中東部 【地震本部の評価】 →平成31年2月22日公表 |
5.8 | 負傷者6人(平成31年2月27日、消防庁調べ)。 |
◆ オホーツク総合振興局
◆ 釧路総合振興局
◆ 根室振興局(その1)
◆ 根室振興局(その2)
「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」(評価基準日:2020年1月1日)
を示した地震動予測地図です。
詳しい内容を知りたい方は、「全国地震動予測地図2020年版」をご覧下さい。
全国地震動予測地図の詳細なデータや関連情報は地震ハザードステーション(J-SHIS)をご参照下さい。
○リンク [上に戻る]
地震動予測地図等
- 全国地震動予測地図
「全国地震動予測地図」 のページです。 - 地震ハザードステーション(J−SHIS)
防災科学技術研究所の地震ハザードステーション(J−SHIS)です。地震動予測地図の各種地図の閲覧、数値データ等のダウンロードが可能です。 - 長周期地震動予測地図
将来ある特定の地震が発生した際に生じる長周期地震動の揺れの強さや性質を予測した地図です。 - 応答スペクトルに関する地震動ハザード評価
工学的利活用に向けて、試作版の報告書を公表しています。 - 強震動評価
ある特定の震源断層に着目して、そこで地震が発生した場合に周辺の地域がどの程度の強い揺れに見舞われるかを示した地図です (震源断層を特定した地震動予測地図)。 - 内閣府 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策
内閣府の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策のページです。
長期評価等
- 長期評価
- 海溝型地震の将来の発生可能性についての評価です。
- 内陸の活断層帯の将来の地震発生の可能性についての評価です。
- 長期評価結果一覧
主要な活断層や海溝型地震(プレートの沈み込みに伴う地震)の活動間隔、次の地震の発生可能性〔場所、規模(マグニチュード)及び発生確率〕等の評価(長期評価)の概要を一覧にして掲載しています。
- 活断層調査・観測等
【標津断層帯】 【十勝平野断層帯】 - 根室沖等の地震に関する調査研究
文部科学省が、「今後の重点的な調査観測について」(地震調査研究推進本部,2005)の中で重点的調査観測の対象とした根室沖の地震について、平成19年度から研究機関に委託して調査観測を実施しています。 - 産業技術総合研究所 活断層データベース
日本全国の活断層(活動セグメント)の分布とそのパラメータ、日本の活断層に関係する文献の書誌データ、文献から採録された調査地点ごとの調査結果データ、地下数十キロメートルまでの地下構造データが収録されています。 - 国土地理院 活断層図(都市圏活断層図)
国土地理院の活断層図(都市圏活断層図)のページです。
地震活動等
- 毎月の地震活動の評価
地震調査委員会による毎月(および臨時)の地震活動の評価です。
【2019年2月21日北海道胆振地方中東部の地震】 【平成30年北海道胆振東部地震 (2018年9月6日)】 【平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 (2011年3月11日)】- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (令和3年3月9日公表)
- 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震から10年にあたって(地震調査委員長見解) (令和3年3月9日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (令和2年4月10日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (平成31年3月11日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (平成30年3月9日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (平成29年3月9日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (平成28年3月9日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (平成27年3月10日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (平成26年3月11日公表)
- 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価 (平成25年3月11日公表)
- 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の評価 (平成23年4月11日公表)
- 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の評価 (平成23年3月13日公表)
- 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の評価 (平成23年3月11日公表)
- 主な地震活動の評価
各地震活動について、これまでに公表された評価結果をとりまとめたものです。 - 日本の地震活動 −被害地震から見た地域別の特徴−
全国の地震活動の概要と地震に関する基礎知識、そして、日本を北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国及び九州・沖縄に区分し、その地方の地震活動の概要をはじめ、その地域に被害を及ぼす地震のタイプ、これまでに発生した主な被害地震の概要、都道府県別(北海道は地域別)の特徴について書かれています。 - 震源・震度に関する情報
気象庁、防災科学技術研究所、大学などの地震観測データに基づく震源・震度に関する情報です。 - 地震に関するパンフレット
地震発生のしくみ、地震調査研究推進本部の取組などを解説した各種パンフレットです。
津波評価等
- 津波評価
地震調査委員会では、津波予測の手順を標準化し、「波源断層を特性化した津波の予測手法(津波レシピ)」を公表しています。また、長期評価の結果と津波レシピをもとに、津波評価を進めています。 - 津波予測手法
「波源断層を特性化した津波の予測手法(津波レシピ)」についてのページです。
地方自治体等
- 北海道
北海道の危機対策局危機対策課のページです。災害情報や地域防災計画を閲覧できます。 - 北海道立総合研究機構 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所
北海道立総合研究機構 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所のページです。
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