GNSS
GNSSは、上空を周回するGNSS衛星から発射される電波を利用して、受信機の位置を正確に測定するためのシステムです。現在では、自動車のカーナビゲーションシステムや、携帯電話等の位置情報を取得するために利用されるほか、地殻変動の観測にも用いられています。
かつては専ら米国のGPS衛星が用いられており、このシステムもGPSと呼ばれていました。近年では、日本の準天頂衛星システム「みちびき」なども活用されており、こうした衛星測位システム全般を示す呼称として、GNSSという言葉が使われています。
GNSS衛星には、非常に正確に時を刻む「セシウム原子時計」が搭載されており、GNSS衛星と受信機の距離を、衛星から電波の発射された時刻と、受信機で受信された時刻の差によって推定し、受信機の位置を決めます。この方法は、単独測位と呼ばれ、位置の精度は十メートルから数十メートル程度になります。
地震や火山活動による地殻変動を観測する際には、その精度は1cmあるいはそれより良い精度が必要となります。そこで、地殻変動の観測にGNSSを用いる際には、干渉測位という方法を用います。
干渉測位は、受信機を2台用意し、衛星から各々の受信機までの距離を推定し、その差によってお互いの位置(2点間の距離、方位等)を相対的に観測する方法です。受信する際には、その電波の波形を調べ、波の1波長の内のどのタイミングで受信したかを記録し、衛星との距離を推定します(図参照)。すなわち、1波長を「物差し」として、距離を測定します。その物差しの長さは約25cmです。25cmの物差しで、上空の衛星との距離を測定しますから、距離の絶対値を推定するのは困難ですが、2台の受信機の衛星の距離の差を推定することはできます。
干渉測位を用いることで、1cm以下の精度で地殻変動を観測することができますが、様々な誤差要因も含まれています。衛星と受信機の間の距離を電波の伝播にかかった時間で推定していますから、電波の速度が変化すると誤差が生じます。具体的には、電離層の影響、大気の影響によって、電波の伝搬速度は変化しますが、 特に水蒸気量による影響は大きくなり、水蒸気量の変化の大きい夏場では、誤差が大きくなる場合があります。
最近では様々な測位方法が提案され、それに伴って、より短時間に(あるいは即時的に)、より精度良く観測できるようになってきています。