活断層調査
陸域の活断層で発生する地震の発生間隔はおおよそ1,000年またはそれ以上であるために、歴史の資料のみから活断層の活動歴を調べることは困難であり、どうしても有史以前の資料が必要である。そのための活断層の調査方法としては、地形調査、トレンチ調査、地下構造調査などがある。一般的にいえば、はじめに空中写真を用いた地形調査を行い断層の位置・確実度を確かめ、さらにその断層で過去どのように地震が発生したかをトレンチ調査によって調べる。そしてさらに、その断層の深部の形態を知るために、地下構造調査を行う。
地形調査
活断層に沿って、断層運動の繰り返しによって生じた土地のずれや特殊な地形(断層変位地形という:図1)が認められることが多い。空中写真を用いた地形調査では、二枚の空中写真を使って立体的に地形を観察して、地形の微妙な起伏や食い違いを詳しく読み取り、断層運動の繰り返しによってできた地形を見つけだす。
図1 活断層のずれによってできた地形
図中の活断層を境に、向こう側が右上方向にずれています。活断層のずれの累積により、段丘や尾根のずれ、河川の屈曲など、様々な地形が認められます。
空中写真による調査のほかに、現地での調査も重要である。現地では、ずれている地形の詳しい測量をしたり、地形をつくっている地層や断層が露出している崖などの観察を行ったりする。活断層の活動度を求めるためには、活断層によりずれている地層や地形がいつ作られたものなのかを知る必要があり、そのための試料等も採取する。
地層や地形がいつ作られたかは、地層に含まれる有機物の放射性炭素の年代測定や、地形を覆う火山灰(火山灰は火山の大規模な噴火の時などごく短い期間に堆積するので、年代を決める良い指標になる)などから求められる。
トレンチ調査
断層を横切るようにトレンチ(調査溝)を掘り地層を観察して、活断層の過去の活動歴を調査する最も直接的な調査方法(図2)。 掘削によって露出した地層のずれの量やその地層の年代に関する情報を入手し、長期間にわたる過去の活動時期・活動間隔・ずれの量を明らかにして、地震の規模・時期などの今後の活動予測の資料とする。
図2 活断層調査(トレンチ調査)の様子[産業技術総合研究所撮影]
地下構造調査
トレンチ調査では通常深さ数mまでの地層の情報が得られるが、それより深い地下の断層の形態や位置を知るためには、様々な地下構造探査技術が用いられる。その中では弾性波探査及びボーリング調査が多く用いられる。地表では活断層が認められない場所でも、地層の食い違いの量と場所を推定するために、地下構造調査が行われることがある。地下構造探査により、トレンチ調査では分からない地下深部の構造や、海底下・川底の様な場所でも断層に関する情報を得ることができる。