- DiMAPS開発の経緯
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東日本大震災の教訓として、大規模かつ広範囲に及ぶ災害の場合には、道路を始めとする交通ネットワーク等の被害状況について、初動段階から災害の全体像を把握し、現場と災害対策本部の間で情報を共有し、迅速な応急復旧につなげていくことが、その後の人命救助や救援物資輸送にとってきわめて重要であることがわかった。このため、どこが被災しているのか、どこが通れるのかといった、インフラや交通関連の被害情報を、わかりやすく一元的に地図上に表示して、共有できる仕組みを構築することが求められてきた。
統合災害情報システム(Integrated Disaster Information Mapping System; DiMAPS)は、上記の教訓を踏まえ、地震や風水害などの自然災害発生時に、いち早く現場から災害情報を収集して地図上にわかりやすく表示することができる今までにないシステムとして構築された(図1)。なお、DiMAPSのシステム整備は国土地理院が行い、運用は国土交通省水管理・国土保全局が実施している。
- DiMAPSの特徴
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DiMAPSの特徴としては、以下の4点が上げられる。
- 1)地震発生時に、震源、震度、津波に関する情報を発生直後に表示することができる。地震発生時は、震度観測点の震度や震央の位置、マグニチュード、津波警報・注意報が発令された場合は、津波予報区ごとの予報の種別や予想される津波の高さ、津波が実際に観測された場合は、観測された地点と最大波の高さなどの発信された情報、などが自動的にDiMAPS上に表示される(図2)。
- 2)インフラや交通関連の多岐にわたる被害情報を地図上に重ね合わせて表示することができる。国土交通省では、従来より自然災害によって所管する施設等に被害が生じた場合は、災害情報(被害報)を取りまとめてPDF形式で公表している。DiMAPSでは、この災害情報を取り込んで処理することにより、被害情報(道路、鉄道の被害状況、土砂災害の発生箇所など)を地図化して表示することができる(図3)。
- 3)防災ヘリが上空から撮影した被災箇所の映像や現地からの画像(写真)などを迅速に地図上に表示することができる。地方整備局の防災ヘリに搭載されたヘリサットシステムにより、山中や海上など、これまで配信が難しかったエリアでも、画像(動画)をほぼリアルタイムに取得・電送することができる。DiMAPSでは、取得した動画を背景地図と重なるオルソ画像となるよう処理し、ほぼリアルタイムでDiMAPS上に表示するヘリサット画像オルソ化システムを導入している。これにより、災害対策本部で現地の様子を的確に把握することが可能となっている。また、TEC-FORCEなどが携帯電話等で撮影した位置情報付の現地画像をメールで送ることにより、DiMAPS上で撮影位置にアイコンを表示し、必要に応じて写真や報告を確認することが可能となっている。さらに、地震等に伴う火災や浸水の状況など、必要な状況を利用者が作図してDiMAPSに登録することも可能である(図4)。
- 4)災害発生前後にも役立つ事前情報も表示することができる。上述の被害を表す情報のほか、交通網(道路、鉄道)、各種インフラ施設(ダム、官公庁施設、道の駅、避難施設など)、ハザード情報(土砂災害危険箇所、浸水想定区域など)といった、災害発生前後にも役立つ情報(事前情報)も平常時からあらかじめDiMAPSに登録しており、必要に応じて表示することが可能なシステムとなっている。
- DiMAPS情報の利用
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DiMAPSに登録された情報は、国土交通省の災害対応だけではなく、一般企業等の災害対応にも有用と考えられるため、公開用ウェブサイトで提供している。公開用ウェブサイトでは、情報の登録・修正はできないものの、被害報および事前情報のほぼ全てを閲覧することが出来る。また、DiMAPSに掲載されているデータは、ウェブ地図で汎用的に使用されている形式(画像情報はpngもしくはjpeg形式、ベクトル情報はgeojson形式)で作成されており、かつ提供方式も標準的なタイル形式であるため、例えばgoogleマップ上に公開用ウェブサイトで提供されているヘリサット画像や道路・鉄道等の運行状況を容易に重ねて表示することができる。関東・東北豪雨の事例では、鬼怒川の氾濫に見舞われた常総市が運営する常総市災害情報マップでDiMAPSの情報が活用されている。
公開用ウェブサイトは、国土交通省のHPからDiMAPSのバナーをクリックするか、文末に示すURLを入力することで閲覧可能である。
(http://www.mlit.go.jp/saigai/dimaps/index.html)
- 終わりに
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DiMAPSは、災害発生後の初動段階から、被害状況の全体像を把握することができ、その後の災害対策の的確な意思決定に寄与する有効なシステムであるため、今後も訓練や実際の災害対応での活用を通じて応急対策を的確に意思決定していく能力を高めるとともに、関係省庁・機関との連携推進を図り迅速な応急復旧や救援活動へ貢献していきたい。
(広報誌「地震本部ニュース」平成27年(2015年)冬号)