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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 首都直下プロ6首都直下地震による社会の影響と復旧・復興

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)10月号)

 

 文部科学省委託業務「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト(2007年~2011年)サブプロジェクト3「広域的危機管理・減災体制の構築に関する研究」」では、首都直下地震を、首都圏を現場とする全国的な危機として捉え、日本全国の防災研究者の英知を集め、災害発生後に行われる応急対策から復旧・復興対策までを包括的にとらえて、「危機対応能力」と「生活再建能力」を向上させるためにどのような方策があるかを検討してきました。本研究での私の目的は、首都直下地震が東京湾北部を震源にマグニチュード7.3で発生する最悪シナリオを想定して、その影響を受けると予想される1都3県で最大2,500万人の被災者の生活再建までの方策を確立することです。

 東京湾北部地震では、死者1.1万人に加えて被害総額112兆円と東日本大震災をはるかに凌ぐ「未曾有」規模の災害が予想されています。そうした事態で、地震発生直後の応急対応から、長期的な視野で行われる復旧・復興までにわたる災害対応を効果的に実施するためには、災害対応業務の全体像を明らかにすることが不可欠です。そこで本研究では、研究メンバー全員が参加する全体ワークショップを繰り返し、首都直下地震によって生み出される問題の全体構造の解明に取組みました。その結果、首都直下地震を未曾有の大震災として恐れるのではなく、「都心」「下町」「山の手」という3つの異なる特性を持つ地域が同時被災する災害ととらえることが有効であり、先例となる災害事例も米国に存在することも明らかになりました。首都中枢機 能の維持が問題となる「都心」では、2001年の同時多発テロの対象となったニューヨーク、臨海部のゼロメートル地帯が長期湛たん水すいによって機能停止する危険がある「下町」では、2005年のハリケーンカトリーナによるニューオーリンズ、広域延焼火災が懸念される「山の手」は、1906年のサンフランシスコ地震や1991年のオークランド大火の対応が教訓となりうるのです。

 本研究では5つの研究グループを設けて、それぞれが地震発生直後の応急対応から、長期的な視野で行われる復旧・復興までにわたる包括的な災害対応を効果的に推進する方法を検討してきました。ここでは、得られた研究成果の主なものを3つ紹介します。
 首都直下地震の発生による甚大な被害にライフラインの機能停止があります。ライフラインの機能回復までが応急対応の期間と考えられるほどです。特に単一の組織によって運営される電力や都市ガスに比べて、上下水道と道路は複数の管理者が存在するため、被害や復旧の全体像が把握しにくいことが特徴です。そこで、木造建物被害を手掛かりとして、東京湾北部地震の際の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)について上水道被害と道路被害に関して統一的な予測手法を開発しました。道路については、一般国道クラスの道路網を対象に絞り、緊急交通路並びに緊急輸送路としての機能支障が電力、ガス、上水、下水等の各種ライフラインの復旧遅延に与える影響を明らかにしました。ライフラインの機能障害に伴う首都圏企業への影響評価を行い、上下水道の機能支障は9都県市の広い地域で、また都市ガスの機能支障は東京23区と千葉県、神奈川県の臨海部などで事業所の再開に与える影響を明らかにしました。その成果は、京都大学防災研究所が運営する首都直下地震ジオポータルを通して公開しています。
 被災者の生活再建は長期的な課題です。その基本となる建物被害認定調査とり災証明の発給、それに基づく被災者台帳を活用した「一人の取残しのない生活再建」の実現方法を構築しました。その結果、平成23年度には、首都圏の自治体での社会実装を目指して、東京都豊島区と調布市で東京都と共同で実証実験を実施し、各区市での導入に向けた検討が始まっています。また、東日本大震災で被災した岩手県では、新潟大学を中心とする支援によってクラウド型の被災者台帳利活用システムが導入され、生活再建に活用されています。
 科学的根拠のある災害シナリオに基づく防災訓練を中心に据えた新しい防災啓発の推進を図っています。東京大学地震研究所が担当するサブプロジェクト①※と連携して、個々人の自主性を重視する“ShakeOut”訓練を推進し、その一環として、「効果的な防災訓練と防災啓発」提唱会議を設置しました。“ShakeOut”とは、南カルフォルニアで2008年以来毎年実施されている訓練の名称です。サンアンドレアス断層によるMw=7.8の地震を想定し、その被害の科学的に推定した結果を広く社会に普及させる目的で始められた防災訓練です。初年度は570万人を動員し、以来毎年参加者は増加を続け、2011年には950万人に達しました。我が国でも“ShakeOut”型防災訓練は、平成24年3月9 日(金)に東京都千代田区で主催されたのを皮切りに、全国各地で広がりを見せています。詳細はwww.shakeout.jpをご覧ください。
※地震本部ニュース8・9月号参照

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)10月号)

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