パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 東北地方太平洋沖地震を踏まえた津波警報の改善用(気象庁)

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)10月号)

 

 気象庁は、わが国沿岸で発生した地震によって津波の発生が予想される場合に、地震発生から約3分を目標として、迅速かつ的確な津波警報・注意報の発表に努めてきました。平成25年3月、東日本大震災での甚大な津波被害を重い教訓として、検証・改善した新しい津波警報の運用を開始します。本編では、その改善内容について紹介します。

 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」では、日本周辺で発生した地震としてはわが国の観測史上最大となる規模、マグニチュード(M)9.0 を記録し、この地震で発生した津波により甚大な人的被害が発生しました。気象庁では、地震発生3分後に津波警報を発表しましたが、地震の規模や津波の高さ予測は、実際を大きく下回るものでした。こうした事態を受け、津波警報の課題や改善策について有識者や関係機関等からの意見を踏まえつつ検討を進め、平成23年9月に「東北地方太平洋沖地震による津波被害を踏まえた津波警報の改善の方向性について」、及び平成24年2月に「津波警報の発表基準等と情報文のあり方に関する提言」として取りまとめました。

 津波避難の重要なきっかけとなる津波警報第1報の迅速性を確保しつつ、地震規模の過小評価を防止する
ための技術的な改善に加え、避難行動に一層結びつくように警報や情報の伝え方を大きく見直しました。

(1)技術的な改善
 M8を超えるような巨大地震や津波地震の規模を3分程度で正確に算出することは技術的に困難です。このため、数分内で算出した地震の規模が過小評価となっている可能性を速やかに認識できる監視・判定手法(強震域の広がり、長周期成分の卓越など)を導入し、その可能性があると判定した場合は、当該海域で想定される最大地震、ないしは判定手法から得られる地震の規模の概算値を適用し、安全サイドに立った津波警報の第1 報を発表します。
 一方で、正確な地震の規模を早期に把握するため、大きな揺れでも振り切れない広帯域地震計を整備し、地震発生後15分程度でモーメントマグニチュード(Mw)を迅速かつ安定的に求め、より確度の高い津波警報へ更新します。また、津波の早期把握のため、東北地方の太平洋側300km以上沖合にブイ式海底津波計を整備し、GPS波浪計やケーブル式海底水圧計と合わせて津波の監視に活用します。

(2)情報文等の改善
①津波警報の発表基準と津波の高さ予想 津波の高さと被害との関係の調査結果を基に、津波警報・注意報の発表基準と津波の高さ予想の区分を見直しました(表1)。津波の高さ予想の区分は、津波予測の誤差やとりうる防災対応の段階等を踏まえて現行の8段階から5段階の区分とし、各区分の幅の高い方の値を予想される津波の高さとして発表します。
 また、前述の手法により、巨大地震等に対し、地震発生から数分内で算出した地震規模を過小と判定した場合は、予想される津波の高さを数値ではなく、想定し得る最大級の津波であることを示す「巨大」「高い」など定性的表現で発表し、通常の地震とは異なる非常事態であることを伝えます。

②津波観測データの発表
 津波を観測した時に発表する観測情報は、津波が観測されたという事実を伝えることが重要である一方で、津波の観測値が小さい場合、それだけを見聞きし、「今回の津波は小さい」ものとの誤解や思いこみの恐れがあります。そこで、津波の第1波については、到達した時刻と押し・引きのみ発表します。また、最大波については、現在までの最大の高さであり、今後更に大きな津波が来る可能性があり危険な状態が続いていることがわかるように、観測された津波の高さが、予想されている津波の高さよりも十分低い場合は、観測値を数値で発表せず、「観測中」と定性的表現で発表します(表2)。

③沖合の津波観測データの発表
 これまで、沖合での観測値と沿岸での観測値は同じ観測情報の中で発表してきましたが、沿岸より早く観測できる沖合で津波を検知したことをいち早く伝えるため、沖合の観測情報を別に新設し、発表します。津波は沿岸では沖合よりずっと高くなって来襲するため、観測値だけではなく沿岸で推定される津波の高さが分かる場合は、それを合わせて発表します。
 沿岸で推定される津波の高さが警報で予想される高さより十分低い場合は、観測値を「観測中」や沿岸での推定値を「推定中」と定性的表現で発表します。

 津波から命を守るためには、一人ひとりの主体的な避難行動が基本となります。津波からの避難は、強い揺れや弱くても長い揺れがあったら、津波警報等の情報を待たずに迅速に避難することが必要です。気象庁では、新しい津波警報や津波情報の内容について十分に周知していくとともに、自主避難の意識や津波等の知識の普及啓発活動に取り組んで参ります。

【参考】本記事に関連する気象庁サイト内のページ
  「津波警報の改善について」
  「津波警報が変わります」(リーフレット)
  「津波からにげる」(津波防災啓発ビデオ)

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)10月号)

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する