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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 内陸における高密度地震観測(飯尾能久)

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)12月号)

 南海トラフの巨大地震による被害想定が注目されているが、もうひとつ忘れてはならないことは、その前後に西南日本の内陸において地震活動が活発化することである。しかし、西南日本のどこで大地震が発生する可能性が高いかはよく分かっていない。我々は、内陸地震の発生過程を解明し、それに基づいて内陸大地震の長期予測の精度向上に貢献したいと考えている。
 近年、内陸地震の断層直下に存在する「やわらかい」領域のゆっくりした変形により、断層をすべらせようとする力が増加し地震発生に至るという有力な仮説が提唱されている。「やわらかい」領域は断層の両端にある可能性も高い。これらの領域の位置や拡がり、その変形に起因する現象を捉えることができれば、長期予測に役立つと期待される。
 「やわらかい」領域は地震波速度が小さいと考えられる。断層付近の力の増加は地震のメカニズム解から推定可能である。しかしながら、内陸地震の断層サイズは数十kmと小さいため、基盤観測網のデータだけでは足らず、観測点を高密度で多数設置する必要がある。その場合、商用電源やアクセスの悪い山奥で観測することが多いと考えられるため、次世代型の地震観測装置を新たに開発した。小型軽量、取扱いが容易、低消費電力でかつ安価な装置であり、1万点規模の観測も可能なことから、満点(万点)システムと呼ばれている。従来の装置では、重さ100kg程度の大型バッテリーを用いても数か月程度の稼働であったが、満点システムで使用する装置は、単1乾電池32本で9か月以上の連続観測が可能であり、山奥での通年の連続観測が可能になった。
 現在、我々は、ひずみ集中帯重点的調査・観測プロジェクト等により、国内外に5か所ほどフィールドを設定し、それぞれ数十~百点ずつ、約250か所で観測を行い、これまでに無い高精度・高分解能の解析結果を得て仮説の検証を進めている。もし、100km×100kmの領域に約3kmおきに観測点を設置すると千点規模の観測網となる。従来の観測システムではこのような観測は極めて困難であったが、満点システムでは十分可能である。

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)12月号)

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