国土地理院は、災害対策基本法に基づく政府の指定行政機関として、測量・地図分野の最新技術を活用して防災施策を推進しています。
GNSS(Global Navigation Satellite Systems)連続観測を行う電子基準点を全国に約1,200点設置し、地殻変動を常時監視しています(図1)。平成23年度には72時間の停電に対応できるように改良し、災害時でも安心した運用が可能となっています。
火山噴火直前のマグマの上昇によって、山体が膨張する場合がありますが、平成23年(2011年)に九州の霧島山(新しん燃もえ岳だけ)が噴火した際には、火山を挟む位置にある電子基準点間の距離を監視し、その伸縮を検出しました(図2、図3)。この情報は火山活動の判断に活用されました。特に、火山活動を注視する必要がある箇所については、火山活動を把握するため山体付近には電子基準点に加えてGNSS火山変動リモート観測装置(REGMOS)を設置し、火山活動による地殻変動の監視を強化しています(図4)。
国民がより安全な場所に住み、より的確に被害を予測し、その対策を講じるために必要な地形に関する精密な地理空間情報を提供しています。
・土地条件図
防災対策や土地利用・土地保全・地域開発等の計画策定に必要な土地の自然条件等に関する基礎資料の提供を目的とし、 主に地形分類について示したものです(図5)。
・火山土地条件図
火山災害の予測や防災対策立案のための基礎資料を提供するもので、過去の火山活動によって形成された地形や噴出物の分布、防災関連施設・機関、救護保安施設、河川工作物、観光施設等をわかりやすく表示しています(図6)。
・都市圏活断層図
全国の活断層帯のうち、想定被害が広範囲に及ぶと考えられる都市域周辺部の主要な活断層帯について、断層の詳細な位置、関連する地形の分布等の情報を整備・提供しています(図7)。
災害時に迅速に情報収集するため、測量用航空機「くにかぜ」により通年で機動性のある運航を可能とする体制を取っています。地震、火山噴火、水害等の大規模な災害発生時には、その状況に応じて、空中写真の緊急撮影、航空機搭載型SARおよび航空レーザスキャナによる観測を行い、迅速に被害情報等を関係機関に提供します。
・空中写真の緊急撮影
空中写真は、大地震など広域災害の際に、どこで、何が起きているのかを的確・網羅的に把握するための貴重な資料となります。
緊急撮影した空中写真は迅速に関係機関に提供する
ほか、国土地理院ホームページ(電子国土ポータル)で公開しています。
・航空機搭載型SARによる観測
火山の火口などで噴煙が上がって写真撮影ができない場合でも、航空機に搭載した合成開口レーダー(SAR)からマイクロ波を照射して、地表の状況を把握することができます(図8、図9)。
・航空レーザスキャナによる観測
高さの変動状況の把握は、大雨や台風等の水害対策を行うための基礎情報になります。大地震などによる被災地の高さの変動状況を航空機により機動的に計測し、復旧・復興対策の支援に取り組んでいます(図10)。
国土地理院ホームページURL〔http://www.gsi.go.jp/〕
(次号では東日本大震災での災害対応を紹介します。)
(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)3月号)