内閣府では、本年度より、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を開始しています。本プログラムは、府省・分野横断的で、国際標準化も意識しつつ、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて一気通貫で研究開発を推進することとされています。総合科学技術・イノベーション会議が選定した10課題のひとつである「レジリエントな防災・減災機能の強化」を推進するため、独立行政法人防災科学技術研究所(防災科研)では、10月1日にレジリエント防災・減災研究推進センターを設立しました。ここでは、SIPの全体像を含め、その概要について紹介します。
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT;インパクト)と並び、本年6月に閣議決定された「科学技術イノベーション総合戦略」において、我が国の科学技術イノベーションを強力に推進することを目的として掲げられている2大「国家重点プログラム」の1つです。総合科学技術・イノベーション会議が先頭に立ち、府省が一体となって、産学連携の下、基礎研究から、出口である実用化・事業化までを見据えて、研究開発のみならず制度的課題の解決にも一体的に取り組みます。本年5月に、我が国の持続的発展に必要な10個の課題(プロジェクト)と、各プロジェクトを強力にリードする10名のプログラムディレクター(PD)が決定されました (表1)。
SIPの課題のひとつが、「レジリエントな防災・減災機能の強化」です。そのPDには、中島正愛 京都大学防災研究所教授が選ばれております。本課題「レジリエントな防災・減災機能の強化」とは、「将来の大規模自然災害から我が国を護りきり、国民の安全・安心と、我が国のプレゼンス・産業力を確保する」ことを究極の目標に掲げ、「災害関連情報の共有」を基軸として、(1)予測、(2)予防、(3)対応の3分野において7つの項目(研究開発課題)に取り組むものです(表2)。
自然災害による被害を軽減することは、我が国にとって最重要な政策課題の一つであり、防災科研は、防災に関する総合的な研究機関として、「災害から人命を守り、災害の教訓を活かして発展を続ける、災害に強い社会の実現」を基本目標として、研究活動を進めて参りました。今般、防災科研は、管理法人である独立行政法人科学技術振興機構(JST)によるSIP課題「レジリエントな防災・減災機能の強化」の公募に応募した結果、(1)津波予測技術の研究開発、(4)ICT を活用した情報共有システム及び災害対応機関における利活用技術の研究開発、(5)災害情報収集システム及びリアルタイム被害推定システムという3項目の研究開発機関に、また、(2)豪雨・竜巻予測技術の研究開発の共同研究開発機関に、それぞれ選定されました。 これを受けて、防災科研は、関係府省、共同研究開発機関、協力機関、研究開発項目間と緊密に連携し一体的な推進を図りながら、また、中島PD、内閣府、文部科学省、JSTといった皆様よりご指導、ご支援を仰ぎながら、目標達成のために全力を挙げて研究開発を推進するため、その拠点として「レジリエント防災・減災研究推進センター」を10月1日に設立いたしました。 防災科研は、これまでの研究実績を活かしながら、本センターを中心に、全所一丸となって本課題に取り組んで参りますが、その際、新たに創設した参与制度などを活用し、外部より必要な人材・専門家をお招きするなど、開かれた体制で取り組みます。
防災科学技術に対する社会からの期待に応えるためには、これまでの研究実績を踏まえ、基盤的な研究開発のみならず、それら研究成果の社会実装に向けた取り組みを強化することが必要です。レジリエント防災・減災研究推進センターの活動が、SIP課題「レジリエントな防災・減災機能の強化」に貢献すると共に、今後の防災科研の機能強化にもつながる第一歩となるように全力を尽くしたいと思います。関係者の皆様方には、一層のご指導と暖かいご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
藤原 広行(ふじわら・ひろゆき)
独立行政法人防災科学技術研究所レジリエント防災・減災研究推進センター長。1989 年京都大学大学院理学研究科中退。科学技術庁国立防災科学技術センター(現:防災科学技術研究所)入所。強震観測網の整備、地震動予測地図の作成、統合化地下構造データベースの構築、災害リスク情報プラットフォームの開発等に従事。専門は、応用地震学。2011 年4 月より社会防災システム研究領域長。2014 年10 月より現職(研究領域長兼務)。
(広報誌「地震本部ニュース」平成26年(2014年)冬号)