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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 首都直下プロ2E-ディフェンスによる「長周期地震動による被害軽減対策の研究開発」

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)6月号)

 

 今世紀前半のうちには、東海・東南海・南海地震の発生する可能性が高いと考えられています。海溝型の巨大地震が発生すると、数秒以上の卓越周期をもつ継続時間の長い長周期地震動が、首都を代表とする大都市に伝わり、数多く存在する超高層建物に大きな影響を与えることが予想されます。社会の中枢機能を担う超高層建物群が地震によって大きな被害を受ければ、社会に対する影響は甚大です。したがって、長周期地震動を受ける超高層建物について、骨組の耐震性、室内の被害様相を総合的に検証し、さらに、効果的な対策方法を特定することは切迫した重要な課題です。

 文部科学省のもとで平成19年度より開始された5か年間の研究開発プロジェクト「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」の一環として、超高層建物を対象とした「長周期地震動による被害軽減対策の研究開発」が実施されました。防災科学技術研究所が運用する実大三次元震動破壊実験施設、E −ディフェンスを用いた大規模実験に基づく研究計画が策定され、以下の研究項目(1)、(2)、(3)に対応する計3回の実験が平成19年度、平成21年度および平成23年度に実施されました。

(1)長周期地震動を受ける超高層建物の損傷過程・安全余裕度把握
(2)長周期地震動を受ける超高層建物の応答低減手法の開発
(3)超高層建物における非構造部材の機能損失・修復性評価

 本研究では、E−ディフェンスを運用する防災科学技術研究所が、防災施策を推進する国土交通省系研究所、関連する研究に取り組む大学、および実践への展開を担う産業界とともにスクラムを組みました(図1)。


 これまでに超高層建物の地震被害調査や復旧事例調査、耐震対策に関する事項について系統的にまとめられた資料は少なく、特に大地震時に超高層建物に生じる被害に関する詳細なデータはありませんでした。本研究では、E−ディフェンスを用いて、実際の揺れのなかで超高層建物に生じうる被害様相を直接表現する振動実験を実施しました。成果は、建築関連団体と連携して技術資料として取りまとめられました。

 平成19年度と平成21年度の実験(図2)では、巨大な錘おもりとばねで構成される長周期化装置を用いて超高層建物の骨組に加わる揺れを再現しました。長周期地震動を用いた実験では、長時間繰り返し変形することによって、設計で想定されていた値の数倍以上のエネルギーが骨組部分に入力されました。その結果、現在の設計法で要求される接合条件を満たしていない1970年代に設計された骨組の梁の根本の溶接接合部に破断が生じやすいことが明らかになりました。本研究では、耐震改修への適用を想定した骨組の溶接補強方法を提案し、破断までの限界性能が飛躍的に向上することを実証しました。さらに、ダンパーを骨組内に設置することで、入力エネルギーがダンパーにより消費され、その結果、骨組に発生する損傷が大きく軽減されることを実証し、その効果を定量的に評価するエネルギー論による設計手法の精度を検証しました。加えて、目視において発見・判断が困難な構造体の損傷状態を評価するための機器類を組み込み、実データを取得することで、建物の継続使用性を判断する技術の開発についても成果を得ることができました。

 平成23年度の実験(図3)でも同様の手法が用いられ、長周期地震動を受ける超高層建物のオフィス空間や住宅の被害様相を明らかにするとともに、対策方法とその有効性を検証しました。天井や空調設備については、応答加速度データから床応答と天井空間の損傷との相関を分析しました。家具の転倒も含めて室内被害を評価するための高密度な実験データによって、建物の継続使用性を評価する資料を蓄積しました。


 本研究の成果は、一般向けの技術資料導入編としても取りまとめられています(図4)。防災科学技術研究所は今後も、長時間で長周期成分を含む地震動が建築物等に与える影響を大規模な実験を行うことで継続的に調査し、被災に至るメカニズム等の検証、構造物の被害推定と耐震性向上を含む減災技術の提案に貢献していきます。

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)6月号)

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