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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 海底GPS観測(木戸元之)

(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)1月号)

 海底GPS観測は、キネマティックGPS測位により位置がモニタリングできる船舶やブイなどの海上プラットフォームと、海底に設置した複数の音響トランスポンダとの距離を音響測距により求めることで海底の位置を計測するものであり、海底の水平地殻変動を直接計測する唯一の手段として、特に陸から離れた震源域を持つ海溝型地震のモニタリングにおいて重要な役割を果たしている。これまで国内では、主に海上保安庁、東北大学、名古屋大学がそれぞれ独自の観測点を設け、約10年近くにわたり技術開発をはじめとして定期的な観測を実施しており、cmオーダーの定常的なひずみ蓄積過程や地震時変位の検出で成果を挙げてきた。特に東北地方太平洋沖地震時には、20~30mにも及ぶ大きな変位を検出し、巨大地震を引き起こした数十mの断層すべりがあったことを決定付けたことは記憶に新しい。
 この巨大地震の危険性を事前に予想できなかった要因のひとつとして、陸上のGPS観測網や陸寄りの浅い海域の海底GPS観測点では判別できない、海溝軸近傍の固着状態の把握の欠如があげられる。この反省から、政府は大幅な海底観測網の強化の一環として、日本海溝沿いに20点、南海トラフ沿いに8点の追加観測点の予算を措置し、上記研究機関が平成23年から24年にかけて設置および観測を開始した。特に水深の大きな日本海溝沿いは、新たに水深6,000mでも測距可能な機器を開発した。今後のキャンペーン観測を経て、平成25年度中にはまとまった成果が出てくると期待される。
 今後の課題として、長期的視点に立ち、多くの観測点を維持しながら成果を出し続けていくために、精度向上による観測の効率化(観測時間短縮)、自律海上プラットフォームによる観測自動化、観測手法の標準化による多くの研究機関の観測への参入が極めて重要な要素となってくる。また、特定の観測点においては、係留ブイと衛星通信を用いることでリアルタイム連続観測の実現も試みられている。一方、北海道沖、房総沖、琉球海溝沿いなどの観測の空白域を埋めることも必要であろう。

(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)1月号)

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