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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 地震研究の現状(海洋研究開発機構)

(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)1月号)

 海洋研究開発機構ではこれまで多くの海域調査研究を実施してきています。特に、海溝型地震震源域においては、「かいよう」、「かいれい」ならびに「なつしま」といった研究船を用いた海底地形、地殻構造や地震活動などの調査観測研究を行っています。
 「かいよう」では主に海底地震計を用いた大規模な深部構造調査、「かいれい」では反射法システムを用いた大規模・高精度の構造調査、「なつしま」では海底地形調査を実施し、これまでに多くの成果を挙げています。また、海底観測網の整備に関しては、既存の海底観測ケーブルとして、釧路沖、初島沖、室戸沖ならびに豊橋沖ケーブルがあります。これらのケーブルは海底観測技術開発や海底観測を目的としたものです。また、南海トラフ巨大地震震源域のリアルタイムモニタリングを目的としたDONETはすでに2011年より本格運用が開始されており、DONET2は現在整備中です。2013年2月には地球深部探査船「ちきゅう」により掘削抗内に設置された長期坑内計測システム(坑内地震計、坑内傾斜計、坑内ひずみ計等)とDONETとの接続に成功し、DONETデータと長期坑内計測システムデータをリアルタイムで入手することが出来るようになりました。また、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)の宮城沖合の震源域で「ちきゅう」による緊急掘削を実施し、掘削時に孔壁の状態を計測するとともに、長期計測のための温度計を設置しています。この孔壁状態データの解析結果から、従来は圧縮と考えられていた応力場が、伸張場に変化していることが余震の発震機構と併せて明らかになりました。
 シミュレーション研究では、地球シミュレータを用いた各種の地震津波のシミュレーション研究や「京」コンピュータを戦略的に活用し、科学技術や防災研究に活かすプロジェクトとして設定された戦略分野のひとつである「防災・減災に資する地球環境変動研究分野」における地震津波課題において、先端的な防災減災に資する地震津波シミュレーションを実施しています。

 海洋研究開発機構では、文部科学省の委託研究に基づく様々な巨大地震震源域の調査観測研究を行ってきました。その成果のひとつは南海トラフの様々な地下構造のイメージングです。図1ではフィリピン海プレートの沈み込み形状が詳細にイメージングされています。また、図2には海底地震計を用いた日向灘の深部構造イメージングを示します。九州パラオ海嶺周辺での不整形構造が明瞭に示されています。

 紀伊半島熊野灘沖では「ちきゅう」による東南海地震震源域の掘削が実施され、掘削坑内に長期坑内観測システムとして地震計、傾斜計、ひずみ計を設置し、1月末にはDONETと接続を完了し、データはリアルタイムで古江陸上局舎に伝送されています(図3)。これによって、DONETで得られる稠ちゅう密みつな海底観測データと長期坑内観測データを併せた先端的な海底・海底下観測システムが整備されました。図4には、DONETでこれまで精度よく震源決定された微小地震の累計を示します。この熊野灘の微小地震活動変化と東南海地震の切迫度の関係も今後の重要な研究課題のひとつです。さらに、津波検知と海底地殻変動をモニタリングする新規ブイシステムを、宇宙航空研究開発機構(JAXA)および東北大と共同して開発しています(図5)。

 「地球シミュレータ」や「京」コンピュータを活用したシミュレーション研究を実施しています。具体的なシミュレーション例として、南海トラフ巨大地震の再来シミュレーション(図6)や、実際の津波被害を想定した精せい緻ち な津波被害シミュレーション(図7)があります。再来シミュレーションでは、DONET・長期坑内観測データやDONET 2ならびに海底地殻変動データなどの海域観測データを取り込んだデータ同化(図8)によるシミュレーション結果の信頼性評価とその向上が必要不可欠です。

 海洋研究開発機構は、以上ご紹介したような地震津波発生過程の研究、掘削科学研究、シミュレーション研究ならびにリアルタイムモニタリング研究などを行うとともに、地震津波の研究成果をどのようにわかりやすく伝えるか、ならびに防災・減災対策に活かすための情報発信のあり方についての勉強会も実施しています。こうした調査研究を通じて、地震研究の推進と地震津波被害軽減への貢献を目指します。

(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)1月号)

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