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地震調査研究推進本部では、社会的・経済的に大き
な影響を与えると考えられ、マグニチュード(M)7以
上の大地震を引き起こす可能性のある主要活断層帯(長
さが20km以上の活断層)について、個別に地震規模
や発生確率の長期評価を行ってきました。しかし近年、
平成16年(2004年)新潟県中越地震(M6.8)などの
ようにM7未満の地震によっても被害を生じるなど、主
要活断層帯以外でも被害地震が発生する例が多発しまし
た。このことから、ある地域の地震危険度を詳細に検討
するためには、主要活断層帯を評価するだけでなく、周
辺のより規模が小さな活断層等も含めて総合的に評価す
る必要があることが明らかになっています。
このような背景をもとに、地震調査研究推進本部では、
対象地域に分布する活断層で発生する地震を総合的に
評価する「地域評価」の考え方を導入しています。具体
的には、地表の長さが短い活断層や沿岸海域の活断層
を新たに選定するなど、対象とする活断層の見直しを行
い、地域毎に地震発生確率や地震規模の評価を実施し
ています。こうした新たな評価方法に基づき、陸域及び
沿岸海域に分布し、M6.8以上の地震を引き起こす可能
性のある活断層について、対象とする地域ごとに総合的
に評価したものを「活断層の地域評価」と呼んでいます。
第1弾として九州地域の評価結果を平成25年2月に公
表し、第2弾として関東地域の評価結果を平成27年4
月に公表しました。
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関東地域の評価では、全体を6つの区域に分割して
評価を行いました(図1)。評価の対象とする範囲と区
域分割は、活断層のずれのタイプ、断層が生まれた起
源や背景、地震発生様式に関連した地質構造の違いや、
定常的に観測される地震活動の活発さなどを考慮して決
定されました。糸魚川−静岡構造線断層帯や長野盆地
西縁断層帯は、行政界としては「関東」ではありませんが、
このような理由で関東地域の評価に含められています。
図1 関東地域の地域評価において評価対象とした活断層と区域分け
今回の評価では、M6.8 以上の地震を生じうる24 の断層帯を 選定して評価した。また、活断層のずれのタイプ、地震発生様式や地質構造の違いを反映して、6つの区域に分割して評価した。
次に、区域ごと及び関東地域全域の地震発生確率を 計算しますが、この確率は、区域内の活断層の少なくと も1つが動く確率となるため、まず各活断層の長期評 価が必要になります。今回の関東地域評価では、上述 のようにこれまで長さが20km未満のために評価対象と なっていなかった短い活断層も含まれるため、評価対象 活断層は従来の15断層帯から24断層帯になり、新た に9断層帯について評価を実施しました。また、従来の 主要活断層帯のうち、前回の評価以降新たな知見が得ら れたものについても、評価の見直しを実施しました。
これらの評価結果から得られた、各区域内の活断層に おいて今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確 率を図2に示しています。最も地震発生確率が高いのは、 区域6の30〜40%となっていますが、その理由は、区 域内に分布する糸魚川−静岡構造線断層帯の地震発生 確率が極めて高いことにあります。また、関東の地域評 価対象の全体で求められた、今後30年のM6.8以上の 地震発生確率は50〜60%となります。この発生確率は、 日常的に地震災害への備えが必要であることを示してい ます。 また、個別の活断層で評価した地震規模や断層の位 置・形状から、地震が生じた場合の揺れの予測を行うこ とができます。具体的な揺れの予測結果については、で きるだけ早く全国地震動予測地図に含めて公表できるよ う、準備を進めています。

図2 関東地域の地域評価において評価対象とした活断層と区域ごとの地震発生確率
対象地域全体と各区域において活断層によりM6.8 以上の地震が今後30 年以内に発生する確率。
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今回公表した地域評価では、次のような課題がありま す。まず、評価対象とした活断層に関するデータが未だ に完全なものではありません。地震発生確率の算出に必要な活動履歴が不明なものが多く、隣接する活断層 が連動して通常よりも大規模な地震を生じる可能性もあ り、震源断層の実態を詳しく知るための調査観測が必 要です。さらに、対象断層そのものがまだ限定的である 可能性もあり、地表では認識しにくい短い活断層や認識 できない伏在断層を見落としている可能性も否定できま せん。これらの活断層で生じる地震は、今回評価対象と した活断層で想定される地震規模よりも小さいものとみ られますが、地盤の弱い地域や人口集中地域などでは、 規模の小さな地震であっても大きな被害が発生する可能 性があり、新たな調査および評価手法を模索していく必 要があります。



