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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 東北地方太平洋沖における調査観測について1

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)2月号)

 地震調査研究推進本部地震調査委員会では、海溝型地震について、どこの領域で、どのくらいの規模の地震が、どのくらいの繰り返し間隔で発生してきたかなどの評価(長期評価 図1)を行い公表してきましたが、2011年東北地方太平洋沖地震のように、広い領域が一度に破壊される地震については、過去に発生した事例の知見が少なかったことから、評価をすることができませんでした。
 海域で発生する地震の正体を明らかにするには、海域における調査観測が重要となりますが、技術的な困難さもあり、これまであまり行われてきませんでした。今回、東北地方太平洋沖地震の発生を受け、この領域における地殻活動の現況や、過去の履歴を解明するため、調査・観測を行うこととしましたので報告します。

 海溝型地震の長期評価を行うには、過去に発生した地震の履歴、現在の地殻活動(地震活動、地殻変動)を明らかにする必要があります。
 過去の地震・津波発生の履歴の調査には、
①海底において地震が繰り返し発生したことによる変動地形があるか
②海底(あるいは海底表層)に過去の地震による地層の乱れがあるか
③海底下の地殻構造はどうなっているか、海底下の深い地殻の構造はどうなっているか
等の海域での調査があります。
 また、海域以外でも
④海岸での津波堆積物や海岸地形の変形(隆起や沈降)の調査
⑤古文書等の調査が考えられます。
 さらに、現在の地殻活動を把握するには、
⑥海底地震計による自然地震観測
⑦音響GPSや海底水圧計による地殻変動観測
が必要となります(図2)。
 今回の調査観測では、上記①~③の調査と⑥の観測を重点的に行います。

 東北地方太平洋沖地震では長さ400km以上、幅200km 以上という広い範囲が震源域となりました。今回の調査観測では、震源域およびその周辺を対象とする必要があることから、根室沖から房総沖の海域において実施します。
(1)海底地形調査
 地形ソナー等を用いて、地形の調査を行います。海底においても、陸上の活断層と同様に断層が動いた形跡が残っている場合があります。また、今回発生した東北地方太平洋沖地震のような巨大地震では、海底において地すべりが発生した可能性があります。それらの分布等を推定し、過去に発生した地震を明らかにするために、地すべりを含んだ地形マップを作成します。
(2)海底堆積物調査
 巨大な地震が発生すると、海底において堆積物の乱れが生じることがあります。それらを検出し、分析することにより、過去の地震の発生履歴や震源の拡がりを明らかにすることができます。
 自航式深海底サンプリング採取システム(NSS)やピストンコアラー、潜水艇等によって採取した柱状コアから、地震による海底斜面崩壊により堆積した濁流物等を検出するとともに、サンプルの堆積構造を分析することで、陸上における津波堆積物調査からでは得られない、震源域直上での地震の発生履歴や震源域の拡がりが明らかになります。
(3)海底自然地震観測
 これまでは、陸上に設置した地震計により、海域で発生する地震の震源等を求めていました。海域において地震観測を行うことにより、海域での震源決定がより高精度化されるとともに、さらに深部や海溝外側での地震観測のデータを用いることで、津波予測に必要な深部や海溝外側の地震活動や地殻構造を把握し、将来発生する大規模津波発生の評価や海溝型地震の評価につなげることが可能になります。さらに、これまでの観測で行われていなかった広帯域地震計を観測網に含めることにより、低周波の地震等の解析を行い、近年、南海トラフで観測されている、低周波の地震と比較することにより、巨大地震と低周波イベント等の関連性の推定にも繋がり、海溝型地震の評価に役立つことが期待されます(図3)。
(4)海底地殻構造探査
 海溝から陸域に向けての範囲において、人工地震を用いた反射法地震探査により、深部構造、浅部構造を高分解能でイメージングすることができます。海底地形観測と合わせて、地震発生履歴評価の基礎データとすることができます。また、海溝から陸域までに至るプレートや地殻内の断層の形状について、海陸統合の地殻構造探査を行うことで、地殻変動観測と合わせて、海溝型巨大地震の発生に関する評価のために、プレート運動によるひずみの蓄積という、最も必要なデータが得られます。
 以上の調査観測にあわせて、海底地殻変動調査、海岸地形地質調査、歴史地震史料調査等を行うことにより、過去の地震発生履歴、現在の地殻活動の様子をより詳しく知ることができます。

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)2月号)

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