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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 減災に資する地震調査研究(福和伸夫)

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)2月号)

 地震調査研究推進本部の基本的な目標は、「地震防災対策の強化、特に地震による被害の軽減に資する地震調査研究の推進」にある。地震調査研究推進本部の活動により、従前に比べ、地震の物理の理解が遙かに進み、地震の発生予測や強震動の予測が現実的になった。特に、地震動や地殻変動の観測網整備、活断層調査や堆積平野地下構造調査、強震動予測レシピ、E−ディフェンスによる実大振動台実験などは、我が国の地震防災研究を大いに牽引してきた。最近では、地震ハザードステーションJ-SHISを介して広く成果を公開しようとする試みも行われ、確実に社会還元も行われている。
 しかし、残念ながら、未だ成果を地震被害軽減に直接的に資する段階には至ってはいないように思われる。新総合基本施策の中では、「防災・減災に向けた工学及び社会科学研究を促進するための橋渡し機能の強化」が謳われているが、橋渡しで留まっていては災害軽減への道のりは遠い。
 「地震調査研究」が表す意味については、専門家と一般国民とでは解釈が異なっているように感じる。一般国民にとっての地震調査研究とは、理学的研究に加え、工学や社会科学研究も総動員した地震被害軽減のための総合的研究だと思われる。
 東日本大震災を経験して、理科教育と社会教育が分離されている現状に問題を感じる。国難とも言える南海トラフ巨大地震を前に、残された時間は多くはない。“学問分野の村”や、“組織の村”を越えて、地震被害軽減のための実践に、本気で取り組む必要がある。科学の限界を社会に正直に伝えるとともに、減災のための解決方策を示し、社会を減災行動に確実に誘導する必要がある。地震被害軽減のためには、先端研究よりも底上げのための普及研究が役に立つ。また、減災行動の誘導には、研究よりも教育の力が大きい。次の世代に豊かな社会を引き継ぎ、真に安全・安心な社会を実現するために、地震調査研究の枠を広げ、教育を包含した活動が望まれる。

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)2月号)

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