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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 「白鳳丸」による令和6年能登半島地震緊急調査航海

(広報誌「地震本部ニュース」令和6年(2024年)夏号)

※ 国立研究開発法人海洋研究開発機構・国立大学法人東京大学地震研究所・国立大学法人東京大学大気海洋研究所・国立大学法人北海道大学大学院理学研究院・国立大学法人東北大学・国立大学法人千葉大学大学院理学研究院・国立大学法人東京海洋大学・中央大学・東海大学海洋学部・国立大学法人新潟大学・国立大学法人富山大学・国立大学法人金沢大学・国立大学法人京都大学防災研究所・国立大学法人神戸大学・兵庫公立大学法人兵庫県立大学大学院理学研究科・国立大学法人鳴門教育大学・国立大学法人高知大学・国立大学法人九州大学・国立大学法人鹿児島大学大学院理工学研究科・国立大学法人琉球大学・国立研究開発法人産業技術総合研究所

 2024年1月1日に石川県能登地方で発生した令和6年能登半島地震(M7.6)と、それに伴う津波により、石川県能登地方や、その周辺地域では大きな被害が発生しました。能登半島北東部と、その北側の海域を中心とした地域では、2023年5月5日にM6.5の地震が発生するなど、近年活発な地震活動が続いていました。2023年12月までの活動は、能登半島北東部の約30km四方の範囲が中心であったのに対し、2024年1月1日以降の地震活動は、能登半島北東の海域から能登半島の西方にかけて北東―南西方向に延びる約150kmの範囲に広がっていました。発震機構や地震活動の分布などから、2024年1月1日に発生したM7.6の地震の震源断層は、主として北東―南西に延びる南東傾斜の逆断層と考えられています。この地域では、北東―南西方向の走向を持つ複数の活断層の存在が知られています。これらの活断層は、主として南東傾斜の逆断層と考えられており、M7.6の地震と関係していると考えられます。一方で、1月1日以降の地震活動域は能登半島北東の海域にも大きく広がっていますが、その海域には北西傾斜の逆断層の存在も推定されています。海域の地震活動や活断層の実態を把握することは、今回の地震や津波と活断層の関係を考える上で重要です。また、震源域や周辺海域では、海底活断層付近の海底隆起や、海底斜面の崩壊なども報告されています。そこで、今回の地震を起こした地震断層の実態や地震・津波の発生メカニズムの解明を目的に、学術研究船「白鳳丸」(図1)による緊急調査航海を実施し、海底地震計(OBS)、海底電位磁力計(OBEM)の設置回収に加え、地殻構造探査、海底地形調査、海底堆積物の採取、カメラによる海底観察などを行いました。

 「白鳳丸」による緊急調査航海は、2024年1月16日から1月23日までのKH-24-JE01航海(一次航海)と、2月19日から3月1日までのKH-24-JE02C航海(二次航海)の2回に分けて実施しました(図2)。また、2024年3月4日から3月16日の期間には、「白鳳丸」の共同利用研究航海としてKH-24-E1航海(三次航海)を実施しました。

 1月に実施した一次航海では、海域の地震活動の詳細な震源分布と震源メカニズムを得ることを目的に、SPOBS(4.5Hz地震計)26台、LTOBS(1Hz)5台、BBOBS(360秒)3台を設置し震源域直上に稠密な観測網を構築したのに加え、能登半島北東の沿岸域にOBEM2台を設置しました。2月の二次航海では、一次航海で設置したSPOBS26台とOBEM2台を回収するとともに、新たに20台のOBS(内訳はSPOBS(4.5Hz)5台、LTOBS(1Hz)12台、CBBOBS(120秒)3台)と、5台のOBEMを設置しました。また、3月の三次航海では、震源域の活断層構造の把握を目的としたマルチチャンネル反射法地震探査システム(MCS)による地殻構造探査に加え、ピストンコアラーやマルチプルコアラーによる海底堆積物の採取、CTD観測ならびに採水、曳航式のカメラや水中ドローンによる海底観察などを行いました。また、3回の航海を通じて、海底地形調査を実施し、能登半島北東沖から富山湾にかけての広域の海底地形データを取得しました。なお、調査航海は文部科学省科学研究費補助金(特別研究促進費)(23K17482)の一部支援により行われております。

 2024年1月の一次航海で設置し、2月の二次航海で回収した26台のSPOBSのうち、25台で良好なデータが得ることができました。これらのOBSデータに加え、能登半島北東部に位置する陸上観測点4点のデータも使用して、気象庁が震源決定した地震のうち観測対象域に震央がある地震を対象に、震源の再決定や、震源メカニズムの推定を行いました(図3)。解析の結果、能登半島の沿岸域では深さ10km程度の深さまで地震が発生しているのに対し、北東沖の海域ではより深い場所(深さ16km付近)まで地震が発生していることが分かりました。過去の構造探査の結果と比較すると、余震活動の多くは上部地殻内で発生しているようです。また、初動極性から求めた震源メカニズムの多くは、逆断層型のメカニズムを示しますが、横ずれ断層型のメカニズムを示す地震も見られました。どちらの震源メカニズムも、北西―南東方向の圧縮応力が卓越しています。

 三次航海では、能登半島沿岸から北東沖の海域でMCS調査が実施され、南東傾斜の逆断層と関連していると思われる横ずれ断層が、海底面付近まで達している様子が確認されました(図4)。また、能登半島北部沿岸で実施した水中ドローン(小型ROV)による海底観察では、地震に伴って形成された可能性のある海底面の段差が観察されています。

 これまでに取得したデータについては、現在、詳細な解析を進めています。また、OBSやOBEMによる観測を継続するとともに、追加の構造探査なども実施しています。今後、海域の活断層の詳細な構造把握を進めるとともに、震源分布や震源メカニズムと対比して、今回の地震や津波の発生メカニズム、余震活動と海域活断層の関係を明らかにしていきたいと考えています。

● 令和6年能登半島地震に伴う学術研究船「白鳳丸」緊急調査航海の実施について(2024/1/12)
 https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20240112/

● 令和6年能登半島地震に伴う学術研究船「白鳳丸」緊急調査航海(第二次)の実施について(2024/2/16)
 https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20240216/

● 令和6年能登半島地震に伴う学術研究船「白鳳丸」 緊急調査航海(第三次)の実施について―共同利用研究航海:地震発生域の海洋地球科学総合調査―(2024年3月1日)
 https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2024/20240301.html

(広報誌「地震本部ニュース」令和6年(2024年)夏号)

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