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(広報誌「地震本部ニュース」令和6年(2024年)夏号)
地震を引き起こした断層がどこにあるのか、どの方向にどれくらい動いたのかなどを知ることは、その地震の性質を明らかにするためだけではなく、将来の活動を予測するためにも大切です。陸上にある断層の活動であれば、現地に出かけて行って地表地震断層の分布を調べたり、人工衛星を使って地形の変化を調べたりするなど様々な方法を使って調査をすることができますが、海の中の断層ではこのような方法は使えません。
そこで、海上保安庁は令和6年1月1日に発生した能登半島の地震後に測量船「昭洋」、「拓洋」、「天洋」を使って詳しい海底地形の調査を行い、地震の前後の地形を比べることによって地震を引き起こした断層について調べました。
海底地形の調査は、地震後の令和6年1~2月と5月に能登半島周辺の海域で行われました(図1)。海上保安庁や産業技術総合研究所が地震前に調べた地形とこれら地震後の地形を比較し、地震にともなう地形の変化の一例を表したのが図2です。図2(b)では赤が隆起、青が沈降を示していて、地震調査研究推進本部による断層線を緑色の線で描いています。これを見ると、断層線の付近で南側が最大3~4m隆起しており、これらの断層が今回の地震を引き起こした可能性が高いといえます。このような地震前後の地形変化は門前町沖(図1の①)や珠洲市沖(図1の②)でも見られ、能登半島北方沿岸で断層が広く活動したと推定されます。このことは、震源の分布や陸上での地殻変動の観測結果とも合っています。
また、今回の地震では津波が発生しましたが、富山湾の最奥部(図1の③)では予想より早く津波が到達しており、能登半島北部での断層の活動以外に津波を発生させた原因があるのではないかと予想されていました。同じように北陸地方整備局が地震前に調べた富山湾最奥部の地形と地震後の地形とを比較してみると、海底の谷に沿った急な崖の部分で地形の変化がみられ、このことから、地震の揺れによってがけ崩れが起き、それによっても津波が発生したのではないかと考えられます。
我が国は周辺を海で囲まれており、陸上だけでなく海の中でも多くの地震が発生します。それらの地震の性質や断層の活動を調べるためにも、あらかじめ地震が起きる前に詳しい海底地形の調査を行っておき、地震後の地形と比べられるようにしておくことが大切です。
(広報誌「地震本部ニュース」令和6年(2024年)夏号)
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