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(広報誌「地震本部ニュース」令和6年(2024年)春号)
1月1日16時10分に石川県能登地方の深さ約15kmでマグニチュード(M)7.6の地震が発生しました。この地震により石川県輪島市や志賀町で最大震度7を観測したほか、能登地方の広い範囲で震度6強や6弱の揺れを観測し、被害を伴いました。M7.6の地震の前後にも規模の大きな地震が発生し強い揺れが長く続きました。また、石川県では長周期地震動階級4を観測しました。この地震の発震機構※2は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震でした。
今回の地震により、金沢観測点(港湾局)で80cm、酒田観測点(気象庁)で0.8mなど、北海道から九州にかけての日本海沿岸を中心に津波を観測しました。そのほか、空中写真や現地観測から、能登半島等の広い地域で津波による浸水が認められました。また、現地調査により、石川県能登町や珠洲市で4m以上の津波の浸水高※3や、新潟県上越市で5m以上の遡上高※3を観測しました。
GNSS※4観測によると、今回の地震に伴って、輪島2観測点(国土地理院)で2.0m程度の南西方向への変動、1.3m程度の隆起が見られるなど、能登半島を中心に大きな地殻変動が見られました。さらに新潟県など日本海側だけでなく、関東地方や中部地方など広い範囲で北西から北向きの地殻変動が観測されました。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー※5画像の解析によると、輪島市西部で最大4m程度の隆起、最大2m程度の西向きの変動、珠洲市北部で最大2m程度の隆起、最大3m程度の西向きの変動が検出されました。現地調査により、能登半島の北西岸で、今回の地震に伴う新たな海成段丘が認められました。また、空中写真及び合成開口レーダー画像の解析や現地調査から、能登半島北岸の広い範囲で隆起により陸化した地域があることが分かりました。
2023年12月までの地震活動の範囲は能登半島北東部の概ね30km四方の範囲でしたが、1月1日のM7.6の地震の直後からの地震活動は北東-南西に延びる150km程度の範囲に広がっていました。直後の地震活動域は主として南東に傾斜した面に沿って、北東側では北西に傾斜した面に沿っていました。また、地震活動域の西端付近では1月1日にM6.1の地震が、東端付近では1月9日にM6.1の地震が発生するなど、現在も概ね同様の範囲で地震が発生しています。M7.6の地震の発震機構、地震活動の分布、GNSS観測、合成開口レーダー画像、地震波及び津波波形の解析から推定される震源断層※6は、北東-南西に延びる150km程度の主として南東傾斜の逆断層であり、断層すべりは震源から北東と南西の両側に進行したと考えられます。
津波データ解析※7から、M7.6の地震に伴う地震時の隆起域の東端は震源域北東(能登半島から北東に約40km)に推定されています。
2024年2月と2023年5月に取得した水深データを比較した結果、能登半島の東方約30kmにある海底谷の斜面が複数箇所で崩壊していることが分かりました。その内、最も大きく崩壊した箇所では長さ約1.6km、幅約1.1km崩れ、最大で約50m深くなっていました。この崩壊はM7.6の地震により生じたものと考えられます。
2024年と2010年に調査された富山湾の海底地形を比較した結果、富山市沖約4kmの海底谷の斜面が、南北約3.5km、東西約1kmにわたって崩れ、最大40m程度深くなっていることが確認されました。M7.6の地震発生の3分後に富山検潮所で観測された津波と関係した可能性があります※8。
能登半島北東部にある若山川沿いに約4kmにわたって最大で約2mの上下変位を伴う地表変状※9が確認されました。
昨年12月までと比べて地震活動の範囲は広がっており、現在も広い範囲で地震を観測しています。1月1日16時から3月8日08時までの間に、最大震度1以上を観測した地震は1,727回(震度7:1回、震度6弱:2回、震度5強:8回、震度5弱:7回)発生しました。
1月1日に発生したM7.6の地震発生当初に比べ、地震活動は低下してきているものの、地震活動は依然として活発な状態が継続しています。また、陸のプレート内で発生した大地震の事例では、平成16年(2004年)新潟県中越地震(M6.8)、平成28年(2016年)熊本地震(M7.3)、平成30年北海道胆振東部地震(M6.7)のように、最大の地震発生後数か月経って、地震の発生数が緩やかに減少している中で大きな規模の地震が発生したことがあります。
1月1日のM7.6の地震の後、およそ2か月間に能都観測点で北西方向に約3cmの水平変動など、能登半島を中心に富山県や新潟県、長野県など広い範囲で1cmを超える水平変動、能登半島北部では輪島観測点で約4cmの沈降が観測されるなど、余効変動※10と考えられる地殻変動が観測されています。
能登半島西方沖から北方沖、北東沖にかけては、主として北東-南西方向に延びる複数の南東傾斜の逆断層が活断層として確認されています。この領域で2024年1月から3月にかけて取得した水深データと2008年のデータを比較した結果、能登半島北部の活断層帯の猿山沖セグメントと珠洲沖セグメントでは、断層トレース南東側の海底でそれぞれ約4mと約3mの隆起が観測されています。これら隆起は1月1日のM7.6の地震に伴う変動を示している可能性が高く、南東傾斜の逆断層の活動が原因と推定されます。
更に北東の佐渡島西方沖にかけては、主として北西傾斜の逆断層が活断層として確認されており、この活断層の一部が今回の地震に関連した可能性も考えられます。
今回地震が発生した石川県能登地方の地殻内では2018年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020年12月から地震活動が活発になり、2021年7月頃から更に活発になっていました。一連の地震活動において、2020年12月1日から2023年12月31日までに震度1以上を観測する地震が506回発生しました。また、2020年12月頃から地殻変動も観測されていました。
これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、2020年12月以降の一連の地震活動は当分続くと考えられ、M7.6の地震後の活動域及びその周辺では、今後強い揺れや津波を伴う地震発生の可能性があります。
(本特集は、令和6年2月9日と3月11日に開催した地震調査委員会における令和6年能登半島地震に関する評価と2024年2月の地震活動の評価をまとめたものです。)
関連する図も含めた評価については、以下をご参照ください。
◆ 令和6年能登半島地震の評価(令和6年2月9日公表)
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2024/20240101_noto_3.pdf
◆ 2024年2月の地震活動の評価(令和6年3月11日公表)
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2024/2024_02.pdf
● 科学研究費助成事業(特別研究促進費)による助成
文部科学省では、能登半島周辺の地震活動に関する金沢大学等による総合調査に対して科学研究費助成事業(特別研究促進費)により助成していましたが、1月1日の地震を踏まえ、追加助成を行っています。本研究では、令和6年1月1日に最大震度7を観測する地震が発生し、地震活動の範囲が能登半島北東沖等に拡大したことや、広い範囲で津波を観測し、被害が発生したことなどを踏まえ、海域での地震・電磁気観測等を追加実施するとともに、新たに津波調査や地域経済への影響調査等を実施しています。地震調査研究推進本部では、総合調査により得られた成果についても、今後の地震活動の評価等に活用していきます。
関連する資料全文については、以下をご参照ください。
◆ 令和6年能登半島地震に関する総合調査に対して、科学研究費助成事業(特別研究促進費)による追加助成を行います
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2023/1420210_00003.htm
(広報誌「地震本部ニュース」令和6年(2024年)春号)
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