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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 森本・富樫断層帯における重点的な調査観測について

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)冬号)

 令和4年度より「森本・富樫断層帯における重点的な調査観測」(代表:国立大学法人京都大学)を開始しています。石川県に位置する森本・富樫断層帯は、長期評価によれば、全長約26㎞の逆断層と考えられていて、金沢市や白山市といった都市を横切っており、本断層帯が活動した場合にはではマグニチュード7.2程度の地震が発生することが予想され、今後30年以内の発生確率は2~8%で、S*ランク(我が国の主な活断層の中では高いグループに属する)と評価されています。また、断層帯の西側には加賀平野が広がっていて、本断層帯が活動した場合は、金沢市、白山市といった石川県下のみならず、富山県西部の砺波平野でも震度6弱以上の揺れに見舞われる可能性が高いと評価されています。

 本重点調査観測は、現状の長期評価・強震動評価に関して、地震規模及び長期的な発生時期の予測精度の高度化、周辺断層帯との関係、断層帯周辺における地殻活動の現状把握の高度化、強震動の予測精度の高度化等の調査観測を行うことを目的としています。これらの調査研究課題を行うため、以下の4つのサブテーマを構築して、既存の分析データを基礎として調査研究を進めるとともに、本断層帯が活動した場合に影響が及ぶ地域の関連自治体等関係者と、当該地域の地震ハザードの現状と本重点調査観測の本調査観測成果の情報共有ができる地域勉強会を実施し、当該地域の地震ハザードと防災対策に関する理解の深化を専門家―自治体等との間で共有することを行っています。

・サブテーマ1.1 活断層の詳細位置・形状・活動性解明のための調査

 本断層帯の「様相」をより明らかにするため、①高分解能標高データ・空中写真の変動地形解析による活断層・変動地形の詳細位置と分布の解明、②トレンチ調査や群列ボーリングおよび高分解能極浅層探査等による断層活動履歴と平均変位速度の解明、③浅層・深部構造探査による断層形状の推定を目的としています。これまで既往研究や対象地域の高分解能標高データを整備してボーリング調査等の基礎資料とするとともに、断層帯中部を東西に横切る深部構造探査を実施し、地表でマップされている活断層の地下構造に関する情報を得ました(図1)。

・サブテーマ1.2 重力探査に基づく地下構造調査

 本断層帯周辺にも断層が分布していることから、重力探査を高密度で実施し、地下の断層構造の変化や構造の連続性に関する調査を行っています。平野縁辺部の堆積層構造情報を得て、強震動予測のための地下構造モデル構築に活用します。

 本断層帯及び周辺で起きている微小地震の震源メカニズム解析を行って、この地域の応力場を求めます。また、深部断層形状に関して、サブテーマ1.1、1.2と連携し、微動調査等で深部地盤構造情報を得ることで検討を進めます。これらに基づき、本断層帯の断層活動様式(震源断層のすべり方向)の推定を行います。高感度の臨時地震観測点を設置し(図2)、より規模の小さい地震の震源決定や、震源メカニズムの決定を行っています。

・サブテーマ3.1 浅部地盤構造モデルの構築

 本断層帯が活動した場合に強い揺れに見舞われる可能性の高い地域を対象として、工学的基盤面相当以浅の浅部地盤構造モデルの構築に資する速度構造探査等を実施し、サブテーマ3.2と協働して、対象地域の浅部・深部統合地盤構造モデルの構築を行います。令和4年度には加賀平野を中心として浅部地盤構造情報を面的に求めました。それをもとに、浅部地盤による揺れ易さをJ-SHISの既存モデルと比較すると、金沢平野ではより揺れやすい傾向、手取川沿い扇状地ではより揺れにくい傾向が見られました(図3)

・サブテーマ3.2 深部地盤構造モデルの構築と強震動予測

 強震動予測に必要な深部地盤構造モデル構築に資する調査を実施するとともに、各サブテーマで実施された構造調査に関係するデータをもとに、浅部・深部統合地盤構造モデルを構築します。研究グループ全体の成果をもちよって想定される本断層帯の震源断層モデルに基づいて強震動予測を試算します。

 本断層帯が活動した場合に影響が及ぶ、関連自治体や社会インフラストラクチャ事業者等と、当該地域の地震ハザードの現状と本調査観測成果の情報共有ができる地域勉強会を毎年実施しています。これにより、当該地域の地震ハザードと防災対策に関する理解の深化を進めています。対面での実施ができるようになり、「相手がよく見える」状態での意見交換の重要性を再認識しています。

 3年計画の折り返したところで、初年度に開始した観測データの蓄積が進んできているところです。観測データや成果をサブテーマ間で共有して活かすとともに、研究グループ全体で断層帯の震源断層像を明確にしていきたいと考えております。本調査観測には、石川県危機対策課をはじめとする関係機関のご支援、ご協力をいただいております。記して感謝致します。

(文責 岩田 知孝)

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)冬号)

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