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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 長周期地震動に対応した防災気象情報について 気象庁地震火山部地震津波監視課

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)夏号)

 気象庁では、長周期地震動による被害の可能性がある場合にも警戒を呼び掛けることとし、令和5年2月1日から、長周期地震動階級3以上を予測した場合にも、緊急地震速報(警報)を発表することとしました(図1参照)。

 これとあわせて、これまで発表に20~30分程度を要していた長周期地震動に関する観測情報について、地震発生から10分程度で発表できるように迅速化しました(図2参照)。

 長周期地震動とは、規模の大きな地震で生じる周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い大きな揺れのことです。大きな特徴は以下の3つです。

(1)地震の特性:一般的にマグニチュードの大きい地震ほど、より長い周期の揺れが大きくなります。また、長周期地震動の主成分である表面波は、震源が浅い(地表面に近い)ほど卓越します。このことから、震源が浅くて規模の大きな地震ほど長周期地震動が発生しやすくなります。

(2)伝播経路:周期が長い波ほど減衰しにくく、遠くまで伝わります。

(3)地盤の特性:関東平野などの大規模な平野や盆地は、柔らかい堆積層で覆われており、堆積層で長周期の波は増幅されます。首都圏、近畿圏及び中京圏などの大都市は大規模な平野部に立地しており、これらの都市は高層化等の進展により長周期地震動による影響を受ける人口が増加しています。

 建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があります。高層ビルの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と「共振」しやすく、共振すると高層ビルは長時間にわたり大きく揺れます(図3参照)。

 長周期地震動により、高層ビルが大きく長く揺れることで、室内の家具類が倒れたり・落ちたりする危険に加え、大きく移動したりする危険があります。また、エレベーターが故障することがあります。

 東北地方太平洋沖地震では、震源から約700km離れた大阪市の高層ビルでは地上で観測された震度は3でしたが、長周期地震動により大きく長く揺れることにより、内装材や防火扉の破損や、エレベーター停止による閉じ込め事故が発生しました。

 震度が小さくても高層ビルの高層階では大きな揺れになることがあります。震度だけでは高層ビル高層階の揺れの大きさは把握できないことから、気象庁では新たに長周期地震動階級(図4)を導入し、長周期地震動に関する観測情報の発表を平成31年3月19日から開始しました。さらに、令和5年2月1日からは、これまでのホームページ上での提供に加えオンラインでの情報配信も開始しました。これにより、これまで発表に20~30分程度を要していた長周期地震動に関する観測情報について、地震発生から10分程度で発表できるようになりました。

※ 長周期地震動階級とは、固有周期が1~2秒から7~8秒程度の揺れが生じる高層ビル内における、地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度から4つの段階に区分した揺れの大きさの指標です。

 令和5年2月1日から、緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を加え、長周期地震動階級3以上を予測した場合にも、緊急地震速報(警報)を発表することとしました。

 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震を例にした緊急地震速報のシミュレーションでは、大阪府南部は震度の警報基準に達しませんが、長周期地震動階級では警報基準に達します(図6の赤円内)。そのため、新たな発表基準では大阪府南部にも緊急地震速報(警報)が発表されます(図6参照)。

 長周期地震動に対する基本的な防災対応は通常の揺れに対するものと同じですが、高層ビルの高層階では、低層階よりも被害が大きくなることがあります。また、高層階では揺れが長く続くことがあります。長周期地震動を知り、事前に備えることで被害を軽減することができます。

 長周期地震動に対する日頃からの備えのうち、高層ビルの高層階での安全対策として、家具類が倒れたり移動したりする可能性を考慮し、配置に気を付けたり、固定するといったことが、被害を最小限にとどめることにつながります。また、エレベーターがしばらく復旧しない場合に備えて、水などの重たいものを日頃から多めに備蓄しておくといった工夫も考えられます。

 実際に地震が発生した場合には、家具類や照明機器などが「落ちてこない」「倒れてこない」「移動してこない」空間に身を寄せ、揺れがおさまるまで様子を見ましょう。

 被害を少しでも軽減するために、各々が「自らの命は自らが守る」意識を持ち、地震に対する日頃からの備えを行うことが重要です。

緊急地震速報の発表基準の変更について

https://www.data.jma.go.jp/eew/data/nc/lpgm_start/lpgm_start.html

長周期地震動に関する観測情報のページ

https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#contents=ltpgm

長周期地震動について

https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/choshuki/index.html

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)夏号)

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