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(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)春号)
1月4日に父島近海の深さ約60km(CMT解による)でM6.1の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。この地震の震源付近では、その後31日までに、震度1以上を観測する地震が13回発生した。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年2月9日地震調査委員会定例会〉
1月22日に日向灘の深さ約45kmでM6.6の地震が発生した。この地震の発震機構はフィリピン海プレートの沈み込む方向に張力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。その後、M6.6の地震の震源を含む北北東-南南西方向約15kmに延びる領域では、2月3日までに震度1以上を観測する地震が42回、このうち震度3以上を観測する地震が5回発生した。
今回の地震の発震機構と地震活動の分布、地震波の解析結果から推定される震源断層は、北北東-南南西方向の概ね鉛直な断層である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴って、大分県佐伯市の宇目観測点や米水津観測点が水平方向にわずかな移動、及び宮崎県北川町の北川観測点や大分県佐伯市の大分佐伯観測点が1cm程度の沈降などの地殻変動が、大分県や宮崎県北部を中心に観測された。
〈令和4年2月9日地震調査委員会定例会〉
3月16日23時36分に福島県沖の深さ約55kmでM7.4の地震が発生した。この地震により宮城県及び福島県で最大震度6強を観測し、被害を伴った。また、宮城県では長周期地震動階級4を観測した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。
その後、M7.4の地震の震源を含む北北東-南南西方向約40kmに延びる領域では、地震活動は継続しているものの、時間の経過とともに低下してきている。M7.4の地震発生以降の最大の地震は、17日に発生したM5.5の地震である。この領域では、今回の地震発生直前の16日23時34分にもM6.1の地震が発生した。このM6.1の地震以降、4月11日08時までに震度1以上を観測した地震が117回、このうち震度3以上を観測した地震が14回発生した。
今回の地震の震源付近では、3月25日にM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
今回の地震の震源付近では、2021年2月13日に太平洋プレート内部でM7.3の地震が発生しており、この2021年の地震の地震活動域は今回の一連の地震活動域の南側に位置し、主な活動域は概ね隣接した別領域に分布しているように見える。なお、今回の地震の震源から北北東へ約60kmの場所では、2011年4月7日に太平洋プレート内部でM7.2の地震が発生した。
3月25日のM5.2の地震は、2021年の地震活動域の南西端付近で発生した。この付近の太平洋プレートと陸のプレートの境界では、2021年の地震後、2021年2月14日にM5.2、2月15日にM5.5の地震が発生していた。
今回の地震により、宮城県石巻市の石巻港(港湾局)観測点で31cmなど、青森県から茨城県にかけての沿岸で津波を観測した。
GNSS観測の結果では、今回の地震に伴って、宮城県石巻市のS石巻観測点と牡鹿観測点が北向きに3cm程度移動、及び2cm程度隆起するなどの地殻変動が、宮城県や福島県を中心に広い範囲で観測された。
今回の地震の発震機構と地震活動の分布、GNSS観測及び地震波の解析結果から推定される震源断層は、北北東-南南西方向に延びる東南東傾斜の逆断層であり、断層面上のすべりは震源から北北東方向へ進行したと考えられる。
今回の地震に伴って、宮城県川崎町のKiK-net川崎観測点で1,233gal(三成分合成)など、大きな加速度を観測した。
今回の地震と2021年の地震の震度分布や最大加速度を比較すると、今回の地震は、全体として震度や最大加速度の大きい観測点が多く、特に、震源の北側では、その傾向が強くなる。これは、今回の地震は、地震の規模が大きいことや震源域が2021年の地震に比べ北側に位置したことなどが影響していると考えられる。
今回の地震は、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下、東北地方太平洋沖地震)の余震域で発生した。余震域内の地震活動は全体として東北地方太平洋沖地震前の状態に近づきつつあるが、1年あたりの地震の発生数は、依然として東北地方太平洋沖地震前より多い状態が続いており、現状程度の地震活動は当分の間続くと考えられる。2021年2月以降では、今回の地震のほか、2021年2月13日に福島県沖でM7.3の地震、3月20日に宮城県沖でM6.9の地震、5月1日に宮城県沖でM6.8の地震が発生した。
「日本海溝沿いの地震活動の長期評価(平成31年2月26日公表)」(以下、長期評価)では、日本海溝沿いの領域は、国内の他の海溝沿いの領域に比べて定常的に地震活動が活発で、規模の大きな地震が高い確率で発生すると評価している。今回の地震も、震源位置、発震機構、Mの大きさなどから、地震調査委員会が想定していた沈み込んだプレート内の地震(青森県東方沖及び岩手県沖北部~茨城県沖)であると考えられる。なお、長期評価では、M7.0~7.5程度の地震が30年以内に発生する確率はⅢランク*1で、海溝型地震の中では発生する確率が高いグループに分類されている。さらに、東北地方太平洋沖地震以降、沈み込んだプレート内の地震は、より高い頻度で発生しており、確率はより高い可能性があるとしている。
以上のような状況を踏まえて総合的に判断すると、今後も長期間にわたって東北地方太平洋沖地震の余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があることに注意が必要である。
なお、2004年に発生したスマトラ島北部西方沖の地震(モーメントマグニチュード(Mw)9.1)では、3ヵ月後にMw8.6、約2年半後にMw8.4、約5年半後にMw7.8、約7年半後および約11年後に海溝軸の外側の領域でそれぞれMw8.6及びMw7.8の地震が発生するなど、震源域及びその周辺で長期にわたり大きな地震が発生している。
〈令和4年4月11日地震調査委員会定例会〉
3月18日に岩手県沖の深さ約20kmでM5.6の地震が発生した。また、この地震の震源付近では、30日にM4.9の地震が発生した。これらの地震の発震機構は北北西-南南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、陸のプレートの地殻内で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年4月11日地震調査委員会定例会〉
4月19日に茨城県北部の深さ約95kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年5月13日地震調査委員会定例会〉
5月22日に茨城県沖の深さ約5kmでM6.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、陸のプレートの地殻内で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年6月9日地震調査委員会定例会〉
石川県能登地方の地殻内では、2018年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020年12月から地震活動が活発になり、2021年7月頃からさらに活発になっている。一連の地震活動において、2020年12月1日から2022年7月8日09時までに震度1以上を観測する地震が183回、このうち震度3以上を観測する地震が30回発生した。最大の地震は、2022年6月19日に発生したM5.4の地震である。この地震により石川県で最大震度6弱を観測した。この他、2021年9月16日にM5.1の地震が発生し最大震度5弱、2022年6月20日にM5.0の地震が発生し最大震度5強を観測した。
一連の地震活動は、現在のところ減衰する傾向は見えず、依然として活発な状態が継続している。
一連の地震活動は、東西約15km、南北約15kmの領域で発生している。特に北側から東側にかけての領域で地震活動が活発であり、2021年9月16日のM5.1の地震、2022年6月19日のM5.4の地震、及び6月20日のM5.0の地震も、これらの領域で発生した。東側の領域では、2022年3月頃からはM3.0程度以上の地震回数が増加している。
また、一連の地震活動では、概ね南東傾斜の震源分布が複数見られ、時間の経過とともに深部から浅部へ広がっている。これまでの地震活動における発震機構解は、概ね北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、南東傾斜の震源分布とも概ね調和的である。
GNSS観測の結果によると、2020年12月頃から、石川県珠洲市の珠洲観測点で南南東に累積で1cmを超える移動及び4cm程度の隆起、能登町の能都観測点で南南西に累積で1cmを超える移動が見られるなど、地殻変動が継続している。また、周辺のより多くのGNSS観測点におけるデータを加えると、概ね一連の地震活動域を中心とした放射状の広がりと隆起を示す地殻変動が捉えられている。
なお、2022年6月19日のM5.4の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
2022年6月19日に発生したM5.4の地震に伴って、石川県珠洲市のK-NET正院観測点で606gal(三成分合成)など、大きな加速度を観測した。
今回の地震活動域の周辺では、今回のような同規模の地震が長期間継続して発生する活発な地震活動は、これまでに知られていない。一方で、日本国内では、同様の地震活動が見られたことが時々ある。1965年からの松代群発地震をはじめ、近年では、2011年3月からの福島県会津から山形県置賜地方にかけて、2016年12月頃からの鹿児島湾の地震活動などがある。それらの中には、1年以上継続した地震活動もある。
能登半島の周辺では、これまでにも被害を伴う規模の大きな地震が発生している。2007年3月25日には「平成19年(2007年)能登半島地震」(M6.9)が発生し、最大震度6強を観測した。また、1993年には今回の地震活動域の北方でM6.6の地震が発生した。この他、今回の地震活動域付近で被害を伴った地震として、1729年にM6.6~7.0の地震、1896年にM5.7の地震などが知られている。
能登半島の北岸沖の海底には、活断層が存在することが知られている。これらの活断層は、概ね北東-南西の走向で、南東傾斜の逆断層であると推定されている。
これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、一連の地震活動は当分続くと考えられるので強い揺れに注意が必要である。
〈令和4年7月11日地震調査委員会定例会〉
6月26日に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西-南南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年7月11日地震調査委員会定例会〉
8月11日00時53分に上川地方北部*3の深さ約5kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。また、この地震の震源付近では、同日00時35分にM5.2の地震が発生していた。これらの地震の震源付近では、8月11日から9月8日08時までに震度1以上を観測する地震が28回発生した。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴って、北海道幌延町の幌延観測点で北向きにごくわずかな地殻変動が観測された。
今回の地震活動域付近では、2012年7月15日から18日にかけて、M4.1からM4.3の地震が4回発生した。なお、2022年8月4日の宗谷地方北部のM4.1の地震は、今回の地震活動域から北西に約30km離れた場所で発生していた。
〈令和4年9月9日地震調査委員会定例会〉
10月2日に大隅半島東方沖の深さ約30kmでM5.9の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年11月10日地震調査委員会定例会〉
10月21日に福島県沖の深さ約30kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に張力軸を持つ正断層型で、陸のプレート内で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年11月10日地震調査委員会定例会〉
11月9日に茨城県南部の深さ約50kmでM4.9の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
〈令和4年12月9日地震調査委員会定例会〉
(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)春号)
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