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  3. 地震調査研究推進本部地域講演会 「親と子の地震実験教室 in 横浜」を開催!

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)秋号)

 地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)では横浜地方気象台との共催により、8月24日(木)に地震調査研究推進本部地域講演会「親と子の地震実験教室 in 横浜」を同気象台において開催しました。

 「地域講演会」は地震本部の成果の周知およびその地域特性に応じた災害リスクの認知等の向上を目的に開催する新たな取り組みです。今年は関東大震災から100年という節目の年ということもあり、地震と防災に関する知識を高めてもらいたいという思いから、震源地である神奈川県小田原市に近く、甚大な被害を受けた横浜市を舞台に親子参加型の実験教室として開催しました。

 実験教室の前には、横浜地方気象台の職員による台内見学ツアーを行い、実際に地震計による観測が行われている様子や、関東大震災に関する貴重な資料等を紹介しました。

 実験教室の講師には名古屋大学名誉教授であり、地震本部政策委員会委員長を務める福和伸夫先生をお招きしました。総勢11組(22名)にご参加いただき、慣れ親しんでいるお菓子や文房具を使って、地震の揺れの仕組みをわかりやすく学んでもらいました。主な実験の様子をピックアップして紹介します。

 実験教室のはじめに、福和先生から参加者のみなさんへ「地震が来ても大丈夫な家に住んでいる人は手を挙げて!」と質問すると、手を挙げたのは1人という結果に。続けて家具の固定や備蓄などの解説が福和先生よりあり、参加者の方は、思ったより多くの備えが必要なことを知り、驚きの表情で話に聞き入っていました。それらの話から、色々な実験をして、実際に建物の構造や地震の仕組みを学びましょういうことで実験教室の幕が開けました。

 参加者全員で、建物に見立てた下敷きを、縦に持ったり、横に持ったりして、様々な揺らし方をしてみます。下敷きを縦または横にもって左右に揺らしますが下敷きは揺れません。「これは壁の多い建物を表現していて、壁の多い建物は全然揺れないんだよ」との説明。今度は、横に持って仰ぐように揺らすと小刻みに揺れ、縦に持って仰ぐように揺らすと大きな幅で揺れます。このように、揺れる方向や建物の高さによって揺れが違うことがわかります。次に下敷きの先端をクリップで挟み、おもりを付けて揺らすと、さらに大きくゆったりと揺れることが分かります。福和先生は、「柱ばかりで屋根が重い家はこのような揺れ方になります」と家の構造による揺れの違いを説明しました。

 次の実験では、飲料の入った紙コップを下敷きの上に載せます。画用紙の上に色鉛筆を2本、間隔をあけて置き、その上に紙コップの載った下敷きを載せて、画用紙を揺すります。色鉛筆は転がり下敷きは左右に動きますが、上に載った紙コップはびくともせず、コップの中の飲料も揺れません。「これを免震といいます」と福和先生。身近にあるもので作った免震装置、参加者の皆さんは不思議そうに画用紙を揺すりながら免震構造を体感していました。

 この実験では、プリンを柔らかい地盤に見立て、プリンの形を変えることで様々な地形に例えて揺れの違いを学びます。まず、カップに入ったままプリンを揺らしたあと、カップからプリンを外しお皿に移して揺らしてみます。すると両者の揺れ方は全く異なり、後者は大きく揺れます。カップに入っているプリンを地形に例えると周りを山などに囲まれた盆地を表し、同じ地盤でも周りが囲まれているかどうかで揺れ方に違いがあることが分かります。

 次に、プリンの一部を一口だけすくって、地形でいう谷を作って揺らしてみます。すると、高い部分は揺れますが、谷の部分は揺れにくいことが分かります。さらにプリンをすくって、崖のような形にして揺らしてみます。すると、プリンの高い部分、地形に例えると見晴らしのいい部分はよく揺れます。このように地形の高低によって揺れ方が変化することをプリンを通して学んでもらいました。

 前の実験で使ったプリンとともに、キノコとタケノコの形のお菓子が用意されました。福和先生は「これを建物に見立てて…」と説明しながら、タケノコ型のお菓子をプリンの上に置き揺すってみると、簡単にひっくり返ってしまいました。続けて、キノコ型のお菓子は軸の部分をプリンに突き刺して揺らします。すると、キノコ型のお菓子は全く揺れません。「さて、プリンに突き刺したキノコの軸の部分はなんていうでしょうか」と福和先生から質問。参加者からいろいろな意見が出ますが、なかなか正解がでません。正解は「杭」。キノコ型のお菓子のように、地面にしっかりと杭を打っている建物は地震の揺れに強いのです。福和先生からは「建物は上屋の見栄えのいい部分だけを見るのではなく、見えないところの基礎がしっかりしていることが重要なんだよ」とのお話がありました。

 実験の合間には、福和先生から「今日、なぜこの実験教室を開いたかというと、関東大震災からちょうど100年たった年だから、そして、一番被害が大きかったのが横浜だから、今日この実験教室をここでやっています」と開催の趣旨を参加者のみなさんに説明しました。その他にも、開催場所の横浜地方気象台は100年前に焼失してしまい、より揺れに強い今の場所に移転してきたこと、関東大震災で壊れた横浜の街のがれきで埋め立ててつくられたのが山下公園であること、関東大震災は東京の地震だと思われているが、東京の大きな被害は火事によってもたらされたものであるなどの説明を受けると、参加者のみなさんは興味深そうに聞き入っていました。

 実験のまとめとして、福和先生より参加している子供たちに向けて、将来の大地震に備え、今回の実験で地震による地盤や建物の揺れの違いや仕組みを学んだことを生かして、自分たちが住んでいる地域について、「安全な土地はどのような土地か」「どのような建物が安全か」を普段から意識すること、そして、家具の固定や飲料などの備蓄品の準備など、今すぐにできる対策を行って備えることが大事であるとのお話で実験教室の最後を締めくくりました。

 今回、初の試みである地震本部地域講演会は、親子参加型の実験教室という形での開催となりましたが、開催地の地域の特性等に合わせ、様々な開催形態(講演会、サイエンスカフェ等)での開催を計画しています。地震本部では、今後も地域講演会をとおして長期評価などの地震調査研究の成果を示すとともに、開催地域の特性に応じた災害リスクを認知していただき防災意識を高めてもらうことを目的として、より多くの地域において開催できるよう努めていきます。

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)秋号)

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