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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に係る防災対策について

(広報誌「地震本部ニュース」令和4年(2022年)冬号)

 日本海溝及び千島海溝沿いの領域では、2011年東北地方太平洋沖地震など、マグニチュード(以下「M」といいます。)7~9の大きな規模の地震が多数発生しており、地震の揺れや津波により甚大な被害が生じています。

 このような巨大地震の発生時期や場所・規模をあらかじめ確度高く予測できるのであれば、一時的に社会経済活動を止めてでも、住民の命を守るための防災対応をとることができますが、現時点で科学的な手法により地震を確度高く予測することはできません。

 この領域では、規模の大きな地震発生後にさらに続いて大規模な地震が発生する事例(以下「後発地震」といいます。)が知られています。そこで、一定の規模の地震が発生した場合に、後発の巨大地震の発生可能性が平時よりも相対的に高まっている旨を伝える情報の発信を行うこととしました。不確実性が極めて高い情報ですが、後発地震への備えの段階を上げることで被害軽減を図ることが期待されます。

 政府の「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」では、過去約6,000年間における津波堆積物資料を基に最大クラスの地震の推計を行い、日本海溝地震としてM9.1、千島海溝地震としてM9.3の2つの巨大地震を想定しました。どちらの地震でも北海道から千葉県にかけて高い津波が到達し、日本海溝地震では、青森県太平洋沿岸や岩手県南部の一部で震度6強の揺れ、岩手県宮古市で約30mの津波が、千島海溝地震では、北海道厚岸町付近で震度7の揺れ、北海道えりも町沿岸で約28mの津波が想定されています(図1、図2)。

 この震度分布、津波高に基づき作成された最大クラスの地震・津波による人的・物的・経済的被害想定では、死者数は最大で日本海溝地震では約19万9千人、千島海溝地震では約10万人(どちらも冬・深夜・避難意識が低い場合)と推定されており、そのほとんどが津波によるものです。一方で、避難意識を高め、津波からの早期避難を徹底することで、津波による死者数を大幅に減らすことができるとされています(図3)。

 今回の被害想定では、長時間屋外での避難が必要になる人数を、低体温症要対処者として推計しており、その数は日本海溝地震で最大約4万2千人、千島海溝地震で最大約2万2千人に達します。日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害が想定される地域は北海道、東北地方といった積雪寒冷地を含むため、避難場所での乾いた衣服、防寒着、暖房器具等の備蓄の充実や、屋内の避難所等への二次避難路の確保等が重要となります。

 一般的に、地震が発生すると、同程度の地震が発生する可能性が平常時に比べて高まることに加え、応力の変化やすべりの進行などによりさらに大きな地震が周辺で発生する可能性があります。M7.0以上の地震の後に必ず後発の巨大地震が発生するわけではありませんが、世界的な地震の統計ではM7クラスの地震の後にM8クラス以上の地震が概ね100回に1回程度の頻度で発生しています。日本海溝地震、千島海溝地震の想定震源域の近傍では、過去には以下の事例が発生しています。

 ・M7.3の地震の2日後にM9.0の2011年東北地方太平洋沖地震

 ・M7.0の地震の18時間後にM8.5の1963年の択捉島南東沖の地震

 このため、内閣府と気象庁では、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定震源域及びその周辺のエリアでM7.0以上の地震が発生した際に、続いて巨大地震が発生する可能性が平時よりも相対的に高まっている旨を伝える「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用を2022年12月16日より開始しました。

 情報発表時には、巨大地震により強い揺れや高い津波が想定される北海道から千葉県までの広い範囲を対象に、先に発生した地震から特に1週間程度、日常的な生活及び経済活動を継続しつつ、平時よりも巨大地震の発生への備えの段階を上げる対応が求められます。具体的には、日頃からの地震への備えの再確認に加え、揺れを感じたり、津波警報等が発表されたりした際に、直ちに津波から避難できる態勢の準備を行うとともに、先に発生した地震の被害状況に応じて、揺れによる倒壊や土砂災害等のリスクから身の安全を確保する備えなどの対応が考えられます(図4)。詳しくは、内閣府のウェブページも併せてご覧下さい。

https://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/hokkaido/index.html

 ここでご紹介した後発地震への注意を促す情報は、後発地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測する情報ではありません。大規模地震の発生可能性が平時より相対的に高まっているとはいえ、後発地震が発生しない場合の方が多いこと、加えて、防災対応を呼びかける1週間の後も、大規模な後発地震が発生する可能性があることなど、極めて不確実な状況の中で発表される情報です。

 巨大地震発生時の被害を少しでも軽減するために、この情報が持つ不確実性等の特性も踏まえつつ、各々が、真の意味で「自らの命は自らが守る」ために平時からどのように地震に備えるかを見直すことが重要です。皆様のご理解・ご協力のほどよろしくお願いします。

(広報誌「地震本部ニュース」令和4年(2022年)冬号)

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