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(広報誌「地震本部ニュース」令和4年(2022年)春号)
2月13日23時07分に福島県沖の深さ約55kmでM7.3の地震が発生した。今回の地震により宮城県及び福島県で最大震度6強を観測し、被害を伴った。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。
その後、M7.3の地震の震源を含む北東-南西方向約40kmに延びる領域では、地震活動が活発な状態で推移しており、2月28日までに最大震度1以上を観測した地震が93回、このうち最大震度3以上を観測した地震が7回発生している。M4.0以上の地震は44回発生しており、最大規模の地震は、2月15日21時26分に発生した M5.5の地震である。なお、このM5.5の地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
今回の地震により、宮城県石巻市の石巻港(港湾局)観測点で0.2m(速報値)など、宮城県・福島県の沿岸で津波を観測した。
今回の地震に伴って、宮城県山元(やまもと)町のKiK-net山元観測点で1,432gal(三成分合成)など、大きな加速度を観測した。
GNSS観測の結果では、今回の地震に伴って、福島県南相馬(みなみそうま)市の小高(おだか)観測点とS南相馬A観測点が西に、楢葉(ならは)町の楢葉A観測点が南西にそれぞれ2cm弱移動するなどの地殻変動が、福島県周辺で観測された。
今回の地震の発震機構と地震活動の分布、GNSS観測の解析結果から推定される震源断層は、北東-南西方向に延びる長さ約40kmの南東傾斜の逆断層である。
今回の地震は、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下、東北地方太平洋沖地震)の余震域で発生した。東北地方太平洋沖地震の発生から約10年が経過し、余震域内の地震活動は全体として東北地方太平洋沖地震前の状態に近づきつつあるが、1年あたりの地震の発生数は、依然として東北地方太平洋沖地震前より多い状態が続いており、現状程度の地震活動は当分の間続くと考えられる。
「日本海溝沿いの地震活動の長期評価(平成31年2月26日公表)」(以下、長期評価)では、日本海溝沿いの領域は、国内の他の海溝沿いの領域に比べて定常的に地震活動が活発で、規模の大きな地震が高い確率で発生すると評価している。今回の地震も、震源位置、発震機構、Mの大きさなどから、地震調査委員会が想定していた沈み込んだプレート内の地震(青森県東方沖及び岩手県沖北部~茨城県沖)であると考えられる。なお、長期評価では、M7.0~7.5程度の地震が30年以内に発生する確率はⅢランク*で、海溝型地震の中では発生する確率が高いグループに分類されている。さらに、東北地方太平洋沖地震以降、沈み込んだプレート内の地震は、より高い頻度で発生しており、確率はより高い可能性がある。
今後も長期間にわたって余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があることに注意が必要である。
なお、2004年に発生したスマトラ島北部西方沖の地震(モーメントマグニチュード(Mw)9.1)では、3ヵ月後にMw8.6、約2年半後にMw8.4、約5年半後にMw7.8、約7年半後および約11年後に海溝軸の外側の領域でそれぞれMw8.6 及びMw7.8 の地震が発生するなど、震源域及びその周辺で長期にわたり大きな地震が発生している。また、M5.0以上の地震の発生数は、2004年のMw9.1の地震発生から16年経過後も、地震発生前よりも多い状態である。
<令和3年3月9日地震調査委員会定例会>
3月5日にケルマデック諸島でMw8.1の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとインド・オーストラリアプレートの境界で発生した地震である。この地震により、北海道から関東地方にかけての太平洋沿岸及び小笠原諸島で津波を観測した。
<令和3年4月9日地震調査委員会定例会>
3月15日に和歌山県北部の深さ約5kmでM4.6の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
<令和3年4月9日地震調査委員会定例会>
3月20日18時09分に宮城県沖の深さ約60kmでM6.9の地震が発生した。今回の地震により宮城県で最大震度5強を観測し、被害を伴った。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
その後、M6.9の地震の震源を含む東西約30km、南北約30kmの領域で、3月31日までに最大震度1以上を観測した地震が29回発生するなど、地震活動が活発になった。3月31日までの最大の地震は、20日18時13分に発生した M4.2の地震である。
GNSS観測の結果では、今回の地震に伴って、宮城県登米(とめ)市の南方(みなみかた)観測点と栗原市の高清水(たかしみず)観測点が東南東にそれぞれ2cm強移動するなどの地殻変動が、宮城県を中心に広い範囲で観測された。
今回の地震の地震活動の分布やGNSS観測及び地震波の解析結果から、震源域は牡鹿(おしか)半島沿岸から沖合にかけての領域である。この震源域は、1978年宮城県沖地震(M7.4)の震源域の西側の一部に重なると考えられるが、同地震や2005年の宮城県沖の地震(M7.2)の震源域全体には及んでいない。
今回の地震は、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下、東北地方太平洋沖地震)の余震域で発生した。余震域内の地震活動は全体として東北地方太平洋沖地震前の状態に近づきつつあるが、1年あたりの地震の発生数は、依然として東北地方太平洋沖地震前より多い状態が続いており、現状程度の地震活動は当分の間続くと考えられる。
「日本海溝沿いの地震活動の長期評価(平成31年2月26日公表)」(以下、長期評価)では、日本海溝沿いの領域は、国内の他の海溝沿いの領域に比べて定常的に地震活動が活発で、規模の大きな地震が高い確率で発生すると評価している。今回の地震の震源域は、長期評価で評価対象領域としている宮城県沖の西端に位置しており、宮城県沖の陸寄りの領域では、一般に「宮城県沖地震」と呼ばれるM7.4前後の繰り返し発生するひとまわり小さいプレート間地震が30年以内に発生する確率はⅢランク*と評価され、海溝型地震の中では発生する確率が高いグループに分類されている。なお、宮城県沖では、この他に、M7.0~7.5程度のひとまわり小さいプレート間地震が30年以内に発生する確率はⅢランク、M7.9程度のプレート間巨大地震が30年以内に発生する確率はⅡランクと評価されている。さらに、東北地方太平洋沖地震の余効すべりによる応力変化の影響で、これらの地震がより発生しやすくなったと考えられることなどから、確率はより高い可能性がある。
以上のような状況を踏まえて総合的に判断すると、今後も長期間にわたって東北地方太平洋沖地震の余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があることに注意が必要である。
なお、2004 年に発生したスマトラ島北部西方沖の地震(モーメントマグニチュード(Mw)9.1)では、3ヵ月後にMw8.6、約2年半後にMw8.4、約5年半後にMw7.8、約7年半後および約11年後に海溝軸の外側の領域でそれぞれMw8.6及びMw7.8の地震が発生するなど、震源域及びその周辺で長期にわたり大きな地震が発生している。また、M5.0以上の地震の発生数は、2004年のMw9.1の地震発生から16年経過後も、地震発生前よりも多い状態である。
<令和3年4月9日地震調査委員会定例会>
5月1日に宮城県沖の深さ約50kmでM6.8の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
今回の地震は、3月20日の宮城県沖の地震(M6.9)の震央の南東約40km、4月18日の宮城県沖の地震(M5.8)の震央の南西約20kmで発生した。今回の地震以降、この地震の震央を含む東西約40km、南北約20kmの領域で、まとまった地震活動が見られている。
GNSS観測の結果では、今回の地震に伴って、宮城県石巻市のS石巻牧浜(いしのまきまきはま)観測点と東松島市の矢本(やもと)観測点が東南東にそれぞれ1cm 強の移動、及び女川(おながわ)町の女川観測点が1cm 強の沈降などの地殻変動が、宮城県を中心に広い範囲で観測された。
今回の地震の震源域は、地震活動の分布やGNSS観測及び地震波の解析結果から、牡鹿(おしか)半島の沖合で、震央から北側に広がる領域である。今回の地震の震源域と3月20日の地震の震源域を合わせた領域は、1978年宮城県沖地震(M7.4)の震源域の西側の一部に重なるが、1978年宮城県沖地震や2005年の宮城県沖の地震(M7.2)の震源域全体には及んでいない。
今回の地震は「平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震」(以下、東北地方太平洋沖地震)の余震域で発生した。余震域では、1年あたりの地震の発生数は、依然として東北地方太平洋沖地震前より多い状態が続いていること、他の巨大地震における事例、「日本海溝沿いの地震活動の長期評価(平成31年2月26日公表)」を踏まえて総合的に判断すると、今後も長期間にわたって、余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があることに注意が必要である。
<令和3年6月9日地震調査委員会定例会>
9月16日に石川県能登地方の深さ約15kmでM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。この地震の震源付近では、2018年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020年12月から地震活動が活発になっている。今回の地震は、2020年12月以降で最大の地震であった。この他、2021年6月26日にM4.1、7月11日にM3.9、8月14日及び9月7日にM4.2、10月3日にM4.3の地震が発生するなど、9月以降も活発な地震活動は継続している。2020年12月1日から2021年10月6日までに震度1以上を観測する地震が46回、このうち9月1日から10月6日までに16回発生した。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。一方、能登半島では、2020年12月頃から、石川県能登町の能都(のと)観測点が南南西に1cm程度の移動、及び珠洲(すず)市の珠洲観測点が2cmを超える隆起などの地殻変動が観測されている。
<令和3年10月11日地震調査委員会定例会>
10月6日に岩手県沖の深さ約55kmでM5.9の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。
その後、この地震の震源付近では、10月31日までに震度1以上を観測した地震が3回発生した。31日までの最大の地震は、9日に発生した M4.7の地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
<令和3年11月10日地震調査委員会定例会>
10月7日に千葉県北西部の深さ約75kmでM5.9の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。
その後、M5.9の地震の震源を含む東西約10km、南北約10㎞の領域で、10月31日までに震度1以上を観測した地震が7回発生した。最大の地震は、29日に発生した M4.2の地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない
今回の地震の震源付近では、2005年7月23日にM6.0の地震が発生し、東京都で最大震度5強を観測した。この他、1980年9月25日にM6.0の地震が発生するなど、M6前後の地震が時々発生している。最大は1956年9月30日のM6.3の地震である。
今回の地震が発生した南関東地域は、南側から沈み込むフィリピン海プレートの下に、東側の日本海溝から太平洋プレートが沈み込んでおり、これまでにM7程度の地震が多く発生していることが知られている。「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)(平成26年4月25日公表)」では、このようなプレートの沈み込みに伴うM7程度(M6.7~M7.3)の地震が30年以内に発生する確率はⅢランク*と評価され、海溝型地震の中では発生する確率が高いグループに分類されている。
<令和3年11月10日地震調査委員会定例会>
12月3日06時37分に山梨県東部・富士五湖の深さ約20kmでM4.8の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。また、この地震の震源付近では、同日02時17分にM4.1の地震が発生していた。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
この付近は、フィリピン海プレートが陸側のプレートに衝突する地域になっており、1983年にM6.0の地震が発生するなど、M5.0以上の地震が時々発生している。2012年1月28日にはM4.9の地震の発生直後にM5.4の地震が発生した。
<令和4年1月13日地震調査委員会定例会>
12月3日に紀伊水道の深さ約20kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
<令和4年1月13日地震調査委員会定例会>
12月9日にトカラ列島近海(小宝島付近)でM6.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型で、陸のプレート内で発生した地震である。トカラ列島近海では、12月4日から地震活動が活発になり、31日までに震度1以上を観測する地震が308回、このうち震度3以上を観測する地震が18回発生した。
GNSS観測の結果によると、今回の地震に伴う有意な地殻変動は観測されていない。
今回の地震活動域付近は、過去にも活発な地震活動が継続したことがある地域である。2000年10月の活動では、10月2日にM5.9の地震が発生し最大震度5強を観測する他、震度5弱を観測する地震が2回発生した。また、最近では、2021年4月にも活発な活動があり、4月10日と12日にM5.3の地震が発生するなど、4月9日から30日までに震度1以上を観測する地震が265回発生した。
<令和4年1月13日地震調査委員会定例会>
令和3年10月7日22時41分に千葉県北西部でマグニチュード(M)5.9の地震が発生し、埼玉県及び東京都で震度5強を観測しました。また、千葉県及び東京都では、長周期地震動階級2を観測しました。この地震を受けて、地震調査委員会は、地震発生翌日の10月8日に臨時の委員会を開催し、どのような地震であったのかを評価するための議論を行いました。また、10月11日及び11月10日の定例の委員会でも議論しました。臨時及び定例の委員会での議論の結果は、その日のうちに「2021年10月7日千葉県北西部の地震の評価」、「2021年9月の地震活動の評価の補足(10月1日以降の地震活動)」及び「2021年10月の地震活動の評価」として公表しました。評価の内容については、P4に掲載しています。
注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。
*:海溝型地震における今後30年以内の地震発生確率が26%以上を「Ⅲランク」、3%~26%未満を「Ⅱランク」、3%未満を「Ⅰランク」、不明(すぐに地震が起きることを否定できない)を「Xランク」と表記している。
(広報誌「地震本部ニュース」令和4年(2022年)春号)
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