パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 「全国地震動予測地図2020年版」の概要

(広報誌「地震本部ニュース」令和3年(2021年)夏号)

 地震調査研究推進本部(地震本部)地震調査委員会は、2005年公表の「全国を概観した地震動予測地図」から、国民の防災意識の向上や効果的な地震防災対策を検討する上での基礎資料として活用されることを目的に、地震動予測地図を更新し公表してきました。近年では、2011年東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日・マグニチュード9.0)の発生を受けて指摘された確率論的地震動予測地図の諸課題のうち、特に大規模・低頻度の地震を考慮するための検討等に重点的に取り組み、その成果をまとめて、2014年12月に「全国地震動予測地図2014年版~全国の地震動ハザードを概観して~」を公表し、その後も、活断層や海溝型地震の長期評価の更新により得られた知見に基づいて、全国地震動予測地図を更新し、公表してきました。

 2019年2月には「日本海溝沿いの地震活動の長期評価」、2020年1月には「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」が公表されたことから、この間に得られた新たな知見に基づいて全国地震動予測地図を更新し、2021年3月に「全国地震動予測地図2020年版」として公表しました。

 大きく分けて二種類の地図からなる全国地震動予測地図のうち、「確率論的地震動予測地図」に関しては、最新の長期評価や津波評価に基づいて日本海溝沿いのプレート間巨大地震や南海トラフ沿いで発生する大地震について従来よりも震源域の多様性を考慮したモデルに変更するとともに、震源断層を予め特定しにくい地震のモデルの改良や浅部地盤構造モデルの改良を行いました。なお、地震発生確率の評価基準日は2020年1月1日としました。

 もう一方の種類の地図、「震源断層を特定した地震動予測地図(シナリオ地震動予測地図)」に関しては、関東地方においては浅部・深部統合地盤構造モデル(2021年版)の活用、関東地方以外においては微地形区分の見直しに対応した浅部地盤増幅率の改良に伴い、既往の全国地震動予測地図に掲載していた活断層帯を対象に詳細法および簡便法による再評価を行いました。更に、全国地震動予測地図2018年版と同様に、従来からの震度分布の地図に加えて、全国地震動予測地図を利用した被害対策への橋渡しとなる「震度曝露人口」の地図も作成しました。また、地震動予測地図の配色についても、色の規格や色の統一化に関する国内外の動向や多様な色覚に対応した配色の在り方の検討を踏まえて地震本部政策委員会が策定した配色方針(詳細は「地震本部ニュース 令和2年(2020年)春号」を参照)に基づき、従来の配色から変更しています。

 全国地震動予測地図2020年版の確率論的地震動予測地図の例を図1に、シナリオ地震動予測地図の例を図2に、それぞれ示します。

 「確率論的地震動予測地図」では、現時点で考慮し得るすべての地震の位置・規模・発生確率に基づき、各地点がどの程度の確率でどの程度揺れるのかを計算し、揺れの強さ、期間、確率のうち2つを固定して残りを地図に示すなど、様々な種類を作成しました。図1(a)ではそれらのうち期間と確率を固定した場合の例を、図1(b)では期間と揺れの強さを固定した場合の例を示しています。図1(b)の「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」の地図では、北海道南東部や仙台平野の一部、首都圏、東海~四国地域の太平洋側および糸魚川-静岡構造線断層帯の周辺地域などの確率が高くなっています。中でも人口や産業が集中している堆積平野内の地域では、一般に地震動の増幅が大きく、強い揺れに見舞われる確率が高い傾向があります。全国地震動予測地図2018年版と比べて、今回の確率論的地震動予測地図では、震源断層を予め特定しにくい地震のモデル化において東北地方太平洋沖地震後の地震活動を考慮したことによる影響が東北地方や関東地方北部の太平洋側に、増幅率の計算に用いる浅部地盤構造モデルを改良したことによる影響が関東地方などで見られます。また、南海トラフ沿いで発生する大地震について従来よりも震源域の多様性を考慮したことによる影響が、山梨県・静岡県・長野県東部で見られます。

 「シナリオ地震動予測地図」では、ある特定の震源断層において、地震が発生した場合の各地点の揺れを計算してその強さの分布を示しています。図2では糸魚川-静岡構造線断層帯中北部区間が活動する地震のうち、断層破壊が南から北側へ進むケースを例として示しております。図2(a)で震度6強以上の揺れが計算されている地域は、主に主要な破壊領域の直上周辺や地盤が揺れやすい地域に見られます。また、図2(b)では、震度6弱以上にさらされる人口の概数とその分布を把握することができます。

 図1および図2のような情報は、防災科学技術研究所のwebサイトである地震ハザードステーション(J-SHIS)を用いて、お住まいの地域を拡大して調べることが可能です。揺れの強さは表層地盤などによって変わるため、同一市町村内でも、強い揺れに見舞われる確率や揺れの強さは一律ではありません。是非詳しく調べて全国地震動予測地図を防災対策に活用して頂きたいです。また、地震ハザードステーション(J-SHIS)では、地震ハザードに対してどのような地震が相対的に大きな影響を及ぼしているか、確認することもできます。

 地域によって確率が低い場所もありますが、確率が低いからといって安全とは限りません。日本は世界的にみると地震により大きな揺れに見舞われる危険性が非常に高く、日本国内で相対的に確率が低い地域でも、過去に大きな地震が発生し、強い揺れに見舞われたことがあります。また、今後、新たな知見が得られた場合、確率が上がる可能性もあります。

 地震本部では、今後とも、新たな情報・知見の蓄積とそれに基づく様々な評価結果に応じて、全国地震動予測地図を随時更新していくと共に、地震動予測結果の説明のわかりやすさの向上にも取り組んでいく予定です。今後の地震動予測地図にも是非ご期待ください。

 本検討結果は、地震本部のwebサイト上の全国地震動予測地図のページ(https://www.jishin.go.jp/evaluation/seismic_hazard_map/shm_report/)で公表されています。その他の計算結果や、その詳細なデータや関連情報は防災科学技術研究所のwebサイトの地震ハザードステーション J-SHIS(https://www.j-shis.bosai.go.jp/)でも公開されています。

(広報誌「地震本部ニュース」令和3年(2021年)夏号)

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する