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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 東北地方太平洋沖地震から10年

 政策委員会では、地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策の立案、関係行政機関の地震に関する調査研究予算等の事務の調整、地震に関する総合的な調査観測計画の策定、調査観測計画による評価に基づく広報を行うため、調査審議しています。

1. 地震調査研究の推進について

 地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)は、平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機として、同年6月に制定された「地震防災対策特別措置法」に基づき、地震に関する調査研究を一元的に推進する機関として設置されました。
 地震本部は、平成11年4月に「総合基本施策」、及び、平成21年4月に「新総合基本施策(平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震のような低頻度の超巨大海溝型地震において、地震調査研究に関する多くの課題等があったことから、地震調査研究が真に防災・減災対策に貢献することができるように平成24年9月に改訂)」を策定しました。
 これを踏まえて、国、関係研究機関、国立大学法人等が連携・協力した体制の下、例えば、次期ケーブル式海底地震・津波観測システム(以下「次期システム」という。)について、海域観測に関する対象海域や観測項目の優先順位、技術開発の具体的な方向性等を示すため、平成27年度から調査観測計画部会において検討を行い、平成28年11月に「地震調査研究における今後の海域観測の方針について」を取りまとめました。
 さらに、南海トラフの西側の海域にケーブル式海底地震・津波計を整備する必要性が示されたことから、次期システムの基本的考え方や具体例について検討を行うため、海域観測に関する検討ワーキンググループを設置し、その検討結果を平成29年8月に「次期ケーブル式海底地震・津波観測システムのあり方について(中間とりまとめ)」を取りまとめました。
 「新総合基本施策」が策定されてから10年程度が経過し、この間の環境の変化や地震調査研究の進展を踏まえつつ、将来を展望した新たな地震調査研究の方針を示す「第3期総合基本施策」を平成31年3月に策定し、地震防災対策の強化、特に地震による被害の軽減に資することを目標として政府の地震調査研究を推進しております。

2. 今後の地震調査研究と方向性

 第3期総合基本施策、海外の地震調査研究と情報科学等との連携の動向を踏まえつつ、今後の地震調査研究をより一層推進するため、近年のIoT、ビッグデータ、AIを始めとするデータサイエンスといった情報科学分野を含む新たな科学技術を活用し、地震防災・減災や地震現象の解明に活かしていく必要があります。今後の方向性として、これまでの地震調査研究における蓄積した莫大な観測データから新たな知見等を抽出することに挑戦しつつ、地震調査委員会の評価や観測手法などを進化させるために情報科学等を活用することを踏まえ、令和2年9月に「新たな科学技術を活用した地震調査研究について~データサイエンスを中心として~(中間とりまとめ)」を取りまとめました。
 地震災害から国民の生命・財産を守り、安全・安心な社会の実現に貢献するため、将来発生し得る地震に関して、その成果を適切に一般国民、防災関係機関等に提供する取組を推進していきます。

著者プロフィール

福和 伸夫(ふくわ のぶお)

福和 伸夫(ふくわ のぶお)

国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学減災連携研究センター、センター長・教授。名古屋大学大学院修了後、清水建設株式会社で勤務ののち、名古屋大学工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授、減災連携研究センター教授、現在に至る。建築耐震工学、地震工学、地域防災に関わる教育・研究に携わる傍ら、防災・減災活動を実践。災害対応、教育、研究の拠点として減災館を建設。






 地震調査委員会は、地震に関する観測、測量、調査又は研究を行う関係行政機関、大学等の調査結果等を収集し、整理し、及び分析し、並びにこれに基づき総合的な評価を行っています。

 2011年3月11日に、わが国観測史上最大規模、マグニチュード(M)9.0の超巨大地震、東北地方太平洋沖地震が午後2時46分に発生したとき、私は、文部科学省ビルの16階の会議室で行われていた調査観測計画部会に出席していました。出席者の持つ携帯電話のブザーが一斉に鳴り、緊急地震速報の着信を知らせ、その直後に建物がみしみしとゆっくりと大きく揺れ始めました。会議出席者の気象庁の課長から、今の地震は宮城県沖の大地震だとの発言があり、私の携帯電話にも同様な情報が表示されていました。当時、地震調査委員会は、宮城県沖でM7.5前後の地震が30年以内に発生する確率が99%であると、大変高く評価していたので、会議出席者の多くは、ついに、宮城県沖地震が発生したと思ったのです。
 現実に起こった地震は、長期評価されていた地震の規模をはるかに上回るM9.0の超巨大地震でした。11日の夕刻から開催された地震調査委員会では、この地震の震源域は、岩手県沖から茨城県沖までに及んでおり、その長さは400km以上、幅は約200kmで、最大の滑り量は20m以上であったと評価されました。滑り量の大きい領域は、地震調査委員会が長期評価で言っている三陸沖南部海溝寄り、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの一部、更に三陸沖中部、宮城県沖、福島県沖、茨城県沖の領域を含んでいると考えられました。しかし、それらの領域全部が同時に破壊される地震については評価されていなかったのです。
 地震調査委員会では、東北地方太平洋沖地震を教訓として、それまでの地震調査研究のあり方について、大きく二つの見直しを行いました。一つ目は、超巨大地震も対象にできるように地震の多様性や情報の不確実性を考慮した海溝型地震の長期評価の改訂です。南海トラフの地震活動の長期評価(2013年5月)、相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(2014年4月)、千島海溝沿いの地震活動の長期評価(2017年12月)、日本海溝沿いの地震活動の長期評価(2019年2月)では、現在の科学的知見の範囲で行った発生し得る超巨大地震の評価なども含めて改訂を行いました。全国地震動予測地図については、2010年版以来公表を見送っていましたが、これらの長期評価改訂の反映をはじめとして特に大規模・低頻度の地震を考慮するための検討を行い、2014年に発行を再開し、その後も更新を続けています。二つ目は、津波評価の実施です。2013年2月に「津波評価部会」を設置し、津波評価手法についてまとめて「波源断層を特性化した津波の予測手法(津波レシピ)」として2017年1月に公表し、2020年1月に「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」を公表しました。
 2016年4月に熊本地震が発生し、東日本大震災以来の大きな被害がもたらされました。この地震では、熊本県益城町で、約28時間を経て二度の震度7を観測しました。一度強いゆれを感じた地域では、再び同様の強い揺れに注意すべきという教訓が改めて得られたのです。この地震の後から、地震調査委員会は情報発信をより強化するため、これまでの地震活動の評価に加えて、「委員長見解」を発表して、関連する情報の発信に努めてきました。
 今後とも、地震防災に役立つ調査・研究の成果を適切に評価するとともに、評価の過程で得られた科学的な情報も分かりやすく提供する役目も果たしていきたいと思っています。

著者プロフィール

平田 直(ひらた なおし)

平田 直(ひらた なおし)

国立研究開発法人防災科学技術研究所参与・首都圏レジリエンス研究推進センター長、国立大学法人東京大学名誉教授。東京大学大学院理学系研究科地球物理学専攻博士課程退学、東京大学理学部助手、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ポスドク研究員、千葉大学理学部助教授、東京大学地震研究所助教授、東京大学地震研究所教授、地震研究所長、地震研究所地震予知研究センター長を得て、 2020 年より現職。専門は観測地震学。
首都直下地震や南海トラフ地震などの巨大地震の解明とともに、被災した都市機能の回復についての研究を進める。

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