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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-E プロジェクト)(その1) 信号処理と機械学習を活用した地震波形 ビッグデータ解析による地下断層の探索

(広報誌「地震本部ニュース」令和3年(2021年)秋号)

「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト」(STAR-Eプロジェクト)の採択5課題の一つとして、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」という)を代表とする「信号処理と機械学習を活用した地震波形ビッグデータ解析による地下断層の探索」(令和3年度~7年度)が始まりました。近年、深層学習の急激な進展と普及に伴って、地震学においても地震波形の自動検測や地震波形の分類、波線計算、強震動予測などに機械学習・深層学習が応用され、各種処理の精度の向上や計算時間の削減がなされつつあります。本研究課題では、その名に示す通り、信号処理と機械学習・深層学習を活用して地震波形データを処理して、地下断層の検出と形状推定を客観的に行うことで、大地震を引き起こすような地下の地震断層やその周辺の副次的な断層の姿を明らかにすることを目指します。これによって、強震動予測や地球科学研究を推進する基礎を築くことを狙いとしています。

 上述の目的を達成するために、図に示す通り、研究課題を具体的な問題に分割し、以下の4つのサブテーマを設定しています。

 サブテーマ1「インテリジェントな地震波形処理」では、地震計の異常検知、観測波形のノイズ除去、自動検測(P波・S波・後続波の読み取り)といった地震波形処理を包括的に扱う手法を開発します。後続波としては、地下における地震波速度のコントラストによる反射波や、コントラストに沿って伝播するガイド波などを想定しています。特に、これらの後続波を自動的に読み取れるようになれば、震源決定や地下構造の推定精度が格段に向上します。

 サブテーマ2「震源分布・震源メカニズム解による断層面形状の決定」では、従来、震源の並びを見ながら地下の断層面を主観的に決めていたものを、客観的に行おうとするものです。気象庁一元化処理震源カタログに加えて、サブテーマ1で地震カタログを拡充し、より多くのデータで地下の断層の姿を明らかにしていきたいと考えています。

 サブテーマ3「後続波を用いた断層面形状の決定」では、サブテーマ1によって読み取られた後続波を利用して、地下の断層などを検出して、その形状を推定します。後続波によって地下の反射面や速度コントラストの存在を明らかにした上で、その成因を探るという手順を取る予定です。

 サブテーマ4「情報科学を活用した地震調査研究基盤の構築」では、地震の調査研究に情報科学を活用しやすいように、整理されたデータセットの作成と本研究課題で開発した手法を実装する計算機プログラムの公開を行います。地震波形読み取りの機械学習の際の学習データ等に活用できるよう、産総研で実施した地震観測で取得した地震波形データにP波・S波到達時刻などの情報を付したデータセットを作ります。また、プログラム公開に際しては、地震研究者の利便性を考慮して、本研究課題の成果が広く地震調査研究に活用されるように努めます。

 本研究課題では、産総研の総合研究所らしい幅の広さを生かして、地質調査総合センター活断層・火山研究部門から地震学を専門とする研究者を、人工知能研究センターから情報科学を専門とする研究者を集めて、互いに協力する体制を整えました。更に、立命館大学情報理工学部の協力を得て研究を実施します。定期的にオンライン会議を開催し、研究アイディアの交換や研究課題の洗い出しを進めており、順調に滑り出しています。令和4年度からはポスドク(産総研特別研究員)を活断層・火山研究部門と人工知能研究センターで1名ずつ雇用して、さらに研究を加速させる予定です。次世代を担う若手研究者の参画をお待ちしています。

(広報誌「地震本部ニュース」令和3年(2021年)秋号)

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