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(広報誌「地震本部ニュース」令和2年(2020年)夏号)
地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)では、これまで陸域及び海域における観測網の整備や、ゆっくりすべりや深部低周波微動の発見といった、地震現象の理解を深める上で重要な成果を創出してきました。これまで続けられてきた地震観測によるデータの蓄積が進み、流通・公開されることにより、我が国の地震に関する調査研究活動はより一層活発なものになると共に、私たちの地震現象への理解も着実に進んできました。一方で、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生は、超巨大地震のメカニズムに関する理解が不足していたことや、海域における地震観測体制の充実・強化の必要性が浮き彫りになるなど、まだ多くの課題が残されていることを、私たちに示すものとなりました。
地震本部では、東北地方太平洋沖地震後の地震観測や調査研究の状況等を踏まえ、令和元年5月に、「地震調査研究の推進について―地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策(第3期)―」(以下「第3期総合基本施策」という。)を策定しました(詳細は「地震本部ニュース 令和元年(2019年)夏号」を参照)。
第3期総合基本施策で示された課題について効率的・効果的に対処していくため、地震本部政策委員会では、これまでの総合部会を発展的に解消して、令和2年度より新たに予算調整部会及び広報検討部会を設置(図1)して、これまで以上に地震調査研究の推進や広報を実施して参ります。
図1
地震調査研究の分野では、これまでも衛星データの活用など科学技術の進展に伴い様々な手法の開発に挑戦してきました。第3期総合基本施策では、従来の技術による調査研究に加え、近年のIoT、ビッグデータ、AIを始めとするデータサイエンスといった情報科学分野を含む科学技術の著しい進展を踏まえながら、新たな科学技術を活用した防災・減災の観点からの更なる社会貢献への期待が示されるなど、情報科学分野など近年の新しい科学技術の発展を念頭に置いた提言がなされました。
このような中、最近の国外の地震調査研究の動向に目を向けると、米国のあるファンディング機関では、地球科学関連の研究・教育を基に、将来的に必要とされるデータを整備・構築し地震現象をより一層理解・予測することを狙いとして、情報科学と地球科学の連携を推進するファンディングプログラムを提供しています。また、欧州においては米国のようなファンディングプログラムはないものの、一般的なファンディングプログラムにおいて採択されている課題の中には、データサイエンスを活用した地震調査研究に関するものが散見されるなど、情報科学分野と連携した地震研究の推進がなされており、米国・欧州では、情報科学分野と連携した地震研究に対するファンディングが進んでいる状況にあります。
我が国の地震調査研究においても、このような国外での取り組みを踏まえつつ、地震分野と情報科学分野の一層の連携を推進していくことを狙いとして、令和元年度に地震本部政策委員会の下に設置した「新たな科学技術を活用した地震調査研究に関する専門委員会」(以下「専門委員会」という。)において、従来の地震調査研究の手法に情報科学分野など新たな科学技術との連携の可能性及びその方策について議論・検討を進めていくこととしました。国内における地震分野と情報科学分野が連携した調査研究の取り組み状況から、現在専門委員会では、第3期総合基本施策で示された、今後10年間に取り組むべき地震調査研究について、次のような方向性をイメージしています。
また、これらの取り組みをより効果的に実施するために、データの種別やフォーマットは、あらかじめ整理されたデータベースとして整備すると共に、地震分野と情報科学分野の連携を促すための研究プログラムを提供するなど、情報科学と地震学の連携強化の基礎となるような取り組みも検討しています。今後も専門家の意見を踏まえながら、地震学分野への新たな科学技術の活用について、更に検討を進めて参ります。
(広報誌「地震本部ニュース」令和2年(2020年)夏号)
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