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(広報誌「地震本部ニュース」令和元年(2019年)夏号)
わが国は世界でも有数の地震大国であり、特に首都圏では地震が頻発し、地震調査研究推進本部地震調査委員会の長期評価によれば、今後30年以内にマグニチュード(M)7クラスの地震が発生する確率は70%程度と、大変高く評価されています。一方、首都圏は都市機能や人口が集中した社会経済活動の中枢であり、災害に対する脆弱性を内包しています。このため、首都圏で大地震が発生すれば、甚大な被害が出ることが予想されます。中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループの最終報告書(平成25年内閣府・中央防災会議)によれば、都心南部直下でM7.3の地震が起これば、1都3県の30%は震度6弱に見舞われ、最悪のシナリオでは、死者2万3千人、全壊・焼失家屋は61万棟と被害想定されています。一方で、2015年5月に発生した小笠原諸島西方沖地震(M8.1、深さ682km)等に見られるような遠地や深発地震では、震度は都内で4程度でも長周期の揺れが卓越し、多くのエレベータが停止するなど、事業の中断や経済機会損失にもつながります。首都機能の維持を図るため、詳細な災害リスク評価と対応策の研究開発が重要かつ喫緊の課題となっています。
防災科学技術研究所(以下、「防災科研」という)では、「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」を、文部科学省の補助事業として2017年度より開始しました。5か年にわたる本プロジェクトは、3つのサブプロジェクトで構成されます。
理学分野(サブプロジェクトb)では、予測力の向上を目指し、地中のどこで地震が発生し、如何に揺れが地表に伝播するかを研究しています。工学分野(サブプロジェクトc)では、予防力の向上を目指し、地表に伝搬した揺れが如何に建物構造や非構造部材に作用するかを研究しています。社会科学分野(サブプロジェクトa)では、対応力の向上を目指し、地震の規模や被害状況に応じ、如何に社会や人が対応すべきかを研究しています。そして、それら3つのサブプロジェクトの有機的連携を通じて学際的な研究開発を推進しています。
本プロジェクトでは、官民連携超高密度地震観測システムの構築および非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するセンサー情報収集によりビッグデータを整備することで、官民一体の総合的な災害対応や事業継続、個人の防災行動等に資することを目指しています。例えば、2017年度から民間の地震観測データの収集に向けた取り組みを開始し、首都圏地震観測網(MeSO-net)等の観測データとの統合解析から得られる超高解像度の揺れの情報について、データ流通を含めた利活用方法を検討しています。
また、本プロジェクトの特徴として、研究成果の社会実装に向けて、産官学民からなるデータ利活用協議会(以下、「デ活」という)を設置しています。「デ活」発足宣言後、毎年4回の公開シンポジウムには毎回非常に多くの方にご参加いただくとともに、2019年4月までに57の組織会員(45企業、3自治体、8団体、その他1)と12の個人会員に入会していただきました。「デ活」規約のもと、組織会員の中から各企業の役員やサブプロジェクト統括が「デ活」理事会の役員となり、理事会および総会を開催しています。
民間の地震観測データの活用については、組織会員となった企業・団体等とテータ提供の覚書を交わし、データ取得地点等の匿名化等にも配慮をしながら利活用の検討を進めています。2019年度からは、更なるデータ利活用の深化・拡大に向けて、会員ニーズ別に分科会を組織し、ぞれぞれの分野での問題解決に取り組む民間企業や行政機関等を構成員として、社会のニーズ把握・課題解決に特化した研究活動を開始しました。このテーマ別の分科会活動において、各分野の専門家が参画企業等と連携しながら、社会的課題に対する具体的なフィールドおよびテーマの下で協議を進める中で、事業成果のさらなる一体化を目指しています。
(広報誌「地震本部ニュース」令和元年(2019年)夏号)
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