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  3. 平成30年北海道胆振東部地震の評価 〜地殻変動から探る震源断層〜

(広報誌「地震本部ニュース」平成30年(2018年)冬号)

平成30年北海道胆振東部地震の評価 〜地殻変動から探る震源断層〜

1.はじめに

 「平成30年北海道胆振東部地震」は、平成30年9月6日午前3時7分に胆振地方中東部の深さ37km(暫定値)を震源として発生したマグニチュード6.7の地震で、北海道厚真町で震度7の揺れが観測されました。この地震では、液状化現象や広範囲な土砂崩れの発生により、死傷者が出る等の多大な被害を伴いました。地震調査委員会は、地震発生当日に臨時会を開催し、各機関によって収集された情報に基づいて、本地震の詳細について議論し、「平成30年北海道胆振東部地震の評価」を公表しました。また、後日開催された地震調査委員会の定例会では、新たに得られた情報を踏まえた本地震の再評価が行われました。

2.平成30年北海道胆振東部地震の評価

 地震調査委員会は毎月定例会を開催し、毎月の地震活動を評価していますが、大きな地震が発生した場合等には臨時会を開催し、その地震についての評価を行います。委員会では地震を評価するために、地震活動や地殻変動に関するデータ等に基づいて議論が行われます。図1は定例会を経て公表された平成30年北海道胆振東部地震の評価文です。評価文の他、根拠となったデータ、図表等については地震本部ホームページの「毎月の地震活動」の各地震の評価からご覧になれます。


図1 平成30年北海道胆振東部地震の評価と解説
図1 平成30年北海道胆振東部地震の評価と解説

3.宇宙から捉える地震の姿

 大きな地震が発生すると、震源が地下深部であってもその影響は地表にも表れ、地殻変動として観測されます。例えば、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震では東日本の広い範囲で震源域(太平洋側)に向かって地面が動く地殻変動が観測されました。現在、このような地殻変動の観測はGNSS※や陸域観測技術衛星2号「だいち2号」といった宇宙技術を用いて高精度かつ広域的に行われています。
 それでは今回の地震ではどのような地殻変動が生じたのでしょうか。図2は今回の震央周辺に設置されているGNSS連続観測点(電子基準点)で観測された地殻変動です。矢印は電子基準点が設置されている地点が地震によって水平方向に動いた向きと変動量を表しています。この図から門別観測点が南に約5cm、苫小牧観測点が東に約4cm動いたことがわかります。このように、GNSSでは観測した地点の変動を測ることができる一方、「だいち2号」の合成開口レーダー(SAR)による観測データの解析では、広域的かつ面的な変動をとらえることができます。図3Aは今回の地震前後のデータを用いた解析結果で、震央の南東側で変動が現れていることを示しています。図3BとCはより詳細な解析結果で、震央周辺が最大約7cm隆起し、その東側では最大約4cm東向きに動く地殻変動があったことを示しています。さらに、これらの地殻変動データを組み合わせることで震源断層を推定することができ(図4)、推定された震源断層の上端は深さ15km程度にまで達しているという結果が得られました。

※GNSSとは:
GNSS (Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム) は、GPS、みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)等の衛星測位システムの総称です。

図2 電子基準点で観測された地震に伴う地殻変動(水平成分)
図2 電子基準点で観測された地震に伴う地殻変動(水平成分)

図3 (A)「だいち2号」によるSAR干渉画像(震央×の南東側で衛星に近づく方向の変動が見られる)、(B、C)2.5次元解析による準上下成分と準東西成分の変動量

図3 (A)「だいち2号」によるSAR干渉画像(震央×の南東側で衛星に近づく方向の変動が見られる)
(B、C)2.5次元解析による準上下成分と準東西成分の変動量

図4 地殻変動データから推定された震源断層モデルの概念図
図4 地殻変動データから推定された震源断層モデルの概念図

4.全国地震動予測地図で見る平成30年北海道胆振東部地震

 地震本部が公表している全国地震動予測地図2018年版では、全国各地点における今後30年間で震度6弱以上の揺れに見舞われる確率や、全国各地の表層地盤の揺れやすさ、主要活断層帯で地震が発生した場合の地表震度分布等を確認することができます(図5)。
 図5Aを見ると、今回の地震の震央付近のむかわ町、厚真町から札幌市、美唄市にかけて震度6弱の揺れに見舞われる確率が高い地域となっていて、表層地盤の揺れやすさ(図5B)をみても確率の高い地域が周囲より揺れやすい地盤であることがわかります。
 地震の発生する場所や地盤の揺れやすさによっては、今回の地震のように震源から遠い場所でも強い揺れに見舞われ、それに伴い被害が発生することがあります。防災対策の基礎情報や防災意識の高揚に役立つよう、地震ハザードステーション(J-SHIS)では図5A〜Cのような情報を提供していますので、皆さんが住んでいる地域や働いている地域の確認等にご活用ください。

図5 ( A)今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図、(B)表層地盤の揺れやすさ(速度増幅率)、(C)石狩低地東縁断層帯で地震が発生した場合の地表震度分布(青星印は想定した破壊開始点)、(D)今回の地震(+)による推計震度分布(気象庁公表)

図5 (A)今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図、(B)表層地盤の揺れやすさ(速度増幅率)
(C)石狩低地東縁断層帯で地震が発生した場合の地表震度分布(青星印は想定した破壊開始点)
(D)今回の地震(+)による推計震度分布(気象庁公表)

(広報誌「地震本部ニュース」平成30年(2018年)冬号)

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