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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 次期ケーブル式海底地震・津波観測システムのあり方について 〜海域観測に関する検討ワーキンググループ報告書の概要〜

(広報誌「地震本部ニュース」平成30年(2018年)秋号)

次期ケーブル式海底地震・津波観測システムのあり方について〜 海域観測に関する検討ワーキンググループ報告書の概要〜

1.はじめに

 地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)の政策委員会調査観測計画部会(以下「本部会」という。)では、「地震調査研究における今後の海域観測の方針について」(平成28年11月策定)(以下「本方針」という。)として、海域における定常的な観測網の整備をより戦略的に進める必要があることなどを背景に、今後優先して整備すべき海域観測網や整備対象となる海域等について取りまとめを行いました。
 本方針で明記された海域観測に関する検討事項の一つとして、今後の大規模な次期ケーブル式海底地震・津波観測システムの整備にあたって、研究者や技術者による検討体制を構築し、これまでのケーブル式システムの実績を踏まえつつ、長期間の安定性・信頼性を確保するとともに拡張性や発展性にも配慮したシステムの検討が挙げられています。これにより、本部会では、研究者や技術者による検討体制として「海域観測に関する検討ワーキンググループ」(以下「本WG」という。)を設置しました。
 本WGでは、「南海トラフの西側(高知県沖から日向灘)の海域における次期ケーブル式海底地震・津波観測システム」(以下「次期システム」という。)の整備につての検討を当面の審議事項として、委員、有識者、地方公共団体からのヒアリングを行いながら、次期システムの基本的考え方や具体例などを「次期ケーブル式海底地震波観測システムのあり方について 報告書」(以下「本報告書」という。)としてとりまとめるに至りました。
 ここでは、本報告書の主な概要を紹介いたします。

2.次期ケーブル式海底地震・津波観測システム整備の基本的考え方

 本報告書では、まず「次期ケーブル式海底地震・津波観測システム整備の基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)をとりまとめました。次期システムの設計、整備及びその後の運用は、この基本的考え方に基づき行う必要があります。

(1)目的

(2)観測すべき現象

(3)観測点の配置

(4)データの信頼性、精度、オープン化

(5)新たな技術開発の必要性及び拡張性

(6)データ解析技術の高度化

(7)コスト

(8)その他

表1 次期システムにおける観測すべき現象と使用する測器(センサー)

表1 次期システムにおける観測すべき現象と使用する測器(センサー)

3.次期ケーブル式海底地震・津波観測システム案について

 本報告書では、2. の基本的考え方を満たす具体的なシステムについて、広域での早急な整備が必要とされ、かつ、広帯域地震観測や新たな観測機器を接続するための拡張性が必要となることから、広域での迅速な展開に適したインライン型と、広帯域地震計やひずみ計・傾斜計などを接続するための拡張性を持つノード型のそれぞれの要素を持ち合わせたシステムが提案され(図1)、この案を基本として整備等に向けた具体的な検討を進めていくことが適当であると記されています。

※システムの概要

図1 次期ケーブル式海底地震・津波観測システム案の概要

図1 次期ケーブル式海底地震・津波観測システム案の概要
(この次期システム案については、敷設海域や陸上局舎を設置する地域の地方公共団体等の関係者との調整を経たものではないなどの理由により、実際の整備を行う場合には、観測点の位置などのシステムの概要に変更があり得ます。)

4.今後の進め方について

 本報告書では、既存の海底地震・津波観測システムの実績やデータ活用の現状、関連分野の最新動向、地方公共団体からの期待等を踏まえつつ、次期システムについての基本的考え方や、それを満たす次期システム案をとりまとめるに至りました。
 今後は、この次期システムをいち早く実現すべく、必要な予算を確保するとともに、既存の海底地震・津波観測システムの整備・運用に関わっている関係機関が緊密に連携した体制を構築し、利活用が想定される機関とも調整等を行いながらオールジャパンで推進していくことが望まれています。
 加えて、次期システムの整備・運用においては、将来システムを視野に入れて、今後の技術を実証するプラットフォームとして活用することも検討すべきです。

5.おわりに

 南海トラフ巨大地震は、地震本部の長期評価で発生確率が高いと評価されるとともに、内閣府の算出した被害想定では、最悪のケースで約32万人の死者が出ることが予想されており、同地震による被害軽減に資するため、次期システムの早急な整備の必要性は論を待たないところです。
 次期システムには、地震動即時予測や津波即時予測の高度化、海域での地震・地殻変動のモニタリング強化が期待され、加えて、海溝型地震の発生メカニズムの理解や発生予測の高度化等により、防災・減災対策の向上に貢献することが望まれています。
 次期システムの実現に向けて関係機関が一丸となってまい進することで、地域の防災・減災に貢献するとともに、地震・津波研究の高度化をもたらす次期システムができる限り早期に整備されることが期待されます。

(広報誌「地震本部ニュース」平成30年(2018年)秋号)

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