パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 千島海溝沿いの地震活動の長期評価

(広報誌「地震本部ニュース」平成29年(2017年)冬号)

地震調査研究推進本部 千島海溝沿いの地震活動の長期評価

1.評価の経緯

 地震調査委員会では、これまでに、海域で発生するプレート間地震等(海溝型地震)について長期評価を行い、公表してきました。しかし、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震のような超巨大地震を評価の対象とできなかったことを受け、従来の長期評価手法を見直し、新たな手法の検討を行うこととして、平成25年に「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」を、平成26年に「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)」を公表しました。新たな長期評価手法については検討途上ではありますが、北海道南東部に広がる千島海溝沿いについても、近年の研究により、過去に巨大な津波を引き起こす地震が発生していた可能性が指摘されているため、これまでに得られた新しい調査観測・研究の成果を取り入れ、千島海溝沿いの地震活動の長期評価を改訂し、第三版としてとりまとめました。

2.長期評価方針

 千島海溝沿いの地震活動の長期評価については、平成15年に公表、平成16年に改訂して以降、多くの調査観測・研究が実施されてきました。その成果を取り入れ、以下の点に留意し、評価の改訂を行いました。

3.評価の対象とした領域と地震

 今回の評価は、北海道南東沖からカムチャツカ半島南部沖合に至る千島・カムチャツカ海溝の南西部を主な対象としました。この領域を「十勝沖」「根室沖」「色丹島沖及び択捉島沖」の大きく3つに分け、それぞれの領域の間に「境界領域」(隣接する領域で地震が発生した際に、併せて破壊される可能性のある領域)を置きました(図1)。千島海溝沿いで発生する地震は、北海道の乗る陸のプレートに南東から沈み込む海のプレート(太平洋プレート)の間(プレート間地震)と、沈み込むプレートの内部(プレート内地震)で発生します(図2)。平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震のような、低頻度で発生するマグニチュード(M)9クラスの地震を「超巨大地震」、平成15年(2003年)十勝沖地震(M8.0)のような、概ねM8を超える地震を「プレート間巨大地震」、それよりも規模の小さい、概ねM7を超える地震を「ひとまわり小さいプレート間地震」として評価しました。また、海溝付近で発生し、地震の揺れに比べ津波の規模が大きくなる地震を「十勝沖から択捉島沖にかけての海溝寄りのプレート間地震(津波地震等)」として新たに評価しました。プレート内地震としては、沈み込んだプレート内の地震を、やや深い地震とやや浅い地震に分けて評価しました。前者は平成5年(1993年)釧路沖地震(M7.5)、後者は平成6年(1994年)北海道東方沖地震(M8.2)が該当します。さらに、海溝軸よりも外側(沖側)で発生する地震を「海溝軸外側の地震」として新たに評価しました。

図1 千島海溝沿いで発生するプレート間地震の評価対象領域(赤で囲まれた領域) 灰色で示す領域は境界領域。白点線は海溝軸で、赤点線は海溝寄りの領域を分ける線。

図1 千島海溝沿いで発生するプレート間地震の評価対象領域(赤で囲まれた領域) 灰色で示す領域は境界領域。白点線は海溝軸で、赤点線は海溝寄りの領域を分ける線。


図2 評価対象とした地震

図2 評価対象とした地震

4.将来の地震の評価

・超巨大地震(17世紀型)

 北海道本島の東部では、海岸付近や湿原の土中から津波堆積物が発見されています(図3)(津波堆積物研究については、地震本部ニュース2015 年春号を参照)。その分布から推定される津波は、北海道で記録が残るどの津波よりも大きなものでした。その最新の発生時期は17 世紀で、規模はM8.8 程度であったと推定されています。今回の長期評価では、北海道本島の東部に巨大な津波をもたらすような地震を「超巨大地震(17 世紀型)」と呼び、霧多布(きりたっぷ) 湿原・藻散布(もちりっぷ) 湿原で行われた津波堆積物調査結果から、平均発生間隔を約340 ~ 380 年、今後30 年以内の発生確率を7~ 40% と推定しました(図4)。地震規模については、17 世紀以前の地震や、北方領土における堆積物の分布が不明であることから、M8.8 程度以上としました。17 世紀の発生から、既に400 年程度経過しているため、地震の発生は切迫していると考えられます。ただし、津波堆積物調査結果からは、個別の地震の発生間隔が100 ~ 800 年と大きくばらついていることが推定されていて、そのような不確実さが地震規模や確率の評価に反映されています。そのため、北方領土を含めた堆積物の分布解明や、地震発生年代推定の高精度化など、今後の研究の進展が求められます。

図3 北海道東部で確認された津波堆積物(産業技術総合研究所提供)1694 年の火山灰の下に津波堆積物があり、17 世紀に発生したことが推定される。

図3 北海道東部で確認された津波堆積物(産業技術総合研究所提供)1694 年の火山灰の下に津波堆積物があり、17 世紀に発生したことが推定される。


・プレート間巨大地震・ひとまわり小さいプレート間地震

 プレートの沈み込みに伴う概ねM8 以上の地震については、十勝沖では2003 年に地震が発生したため、今後30 年以内の地震発生確率は7%(2017年1月1日時点、以下同)、規模はM8.0 ~ 8.6 程度と評価しました。根室沖では確率は70% 程度、規模はM7.8 ~ 8.5 程度と評価しました。色丹島沖及び択捉島沖については、特定の震源域で繰り返し発生する地震として扱うことが難しいため、図1の領域内のどこかで発生するものとして発生確率を推定しました。その結果、確率は60% 程度、規模はM7.7 ~ 8.5程度と評価しました。
 ひとまわり小さいプレート間地震については、どの領域でも今後30年以内の地震発生確率が高くなっていて、千島海溝沿いでは地震活動が活発であることが推定されます。

図4 長期評価結果 確率は今後30 年間の地震発生確率で、「前回の評価」とともに、2017 年1月1日時点の確率に変換して表示している。

図4 長期評価結果 確率は今後30 年間の地震発生確率で、「前回の評価」とともに、2017 年1月1日時点の確率に変換して表示している。

(広報誌「地震本部ニュース」平成29年(2017年)冬号)

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する