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(広報誌「地震本部ニュース」平成29年(2017年)夏号)

みんなで翻刻ホームページ ─市民参加のオンライン翻刻プロジェクト─
みんなで翻刻 【地震史料】

みんなで翻刻ホームページ

■ はじめに ■

 みんなで翻刻は、2017年1月にリリースしたWeb上のプロジェクトです。地震について先人たちが書いた文書(史料)を翻刻(解読)することを目標にスタートしました。一般の方をふくむ多数の参加者を得て、オープンサイエンスの視点からも注目していただいています。

■ みんなで翻刻【地震史料】 ■

 百聞は一見に如かず。お手元にパソコンがある方は、ぜひアクセスしながら読んでいただければと思います。パソコンのブラウザで(https://honkoku.org/)にアクセスしてみてください(Twitter やFacebook 等のアカウントが必要になります)。
 まず表示されるのが「ホーム画面」です。メニュー、タイムライン、進捗状況・ランキングが並んでいます。メニューにはステージごとの「史料一覧」があります。一覧では各史料の1コマ目の画像とタイトルや関連する地震名などの書誌情報が表示され、キーワード検索もできます。

(史料例)諸国海辺

(史料例)諸国海辺

 史料画像や翻刻結果を眺めるだけでも色々な発見があり楽しいと思います。「ホーム画面」や「史料一覧」で画像をクリックすると「翻刻画面」に移動します。最初は「閲覧モード」です。右側に史料画像、左側に翻刻テキストのスペースがあります。既に誰かが翻刻を入力している場合はそのテキストが表示されています。コマ間の移動ができますので、ページをめくるように画像や翻刻テキストをご覧ください。翻刻にご参加いただく方は「編集開始」を押して「編集モード」に入ってください。具体的な翻刻のやり方は、「翻刻ガイドライン」や「凡例」をご参照ください。
 原稿を書いている時点(2017年6月末)で、222万文字弱が入力されています。単純に文字数だけでいうと新書本15冊分くらいでしょうか。

■ 「みんな」で翻刻するための工夫 ■

 多くの方に参加していただくために、操作性や機能を工夫しています(開発・実装を担当したのは国立歴史民俗博物館の橋本雄太さんです)。たとえば、「編集モード」の中心は新規に開発された縦書きエディタです。現代ではあまり使わない文字などの入力を支援する機能(「特殊記法」)などがあります。また、各所にマスコットキャラクターの「しみまる」が登場してガイドしてくれます。「ランキング」「あっぱれ」「レベル」などは、参加者の方に楽しみながら翻刻していただくための工夫です。
 「みんな」でスムーズに共同作業できる環境づくりのため、「添削希望」「編集コメント」「ノート」などの機能を実装しています。初級者の方が読めなかった部分や間違えた部分を上級者の方が直していくことは頻繁にありますが、これらの機能により「みんな」で協力して翻刻できていると思います。
 まったくの初心者であってもご参加いただけるように、「まなぶ」機能が用意されています。これは「くずし字学習支援アプリKuLA」と完全に連動していて、楽しみながらくずし字の読解について学べます。「まなぶ」で基本を身につけて、実際の史料で腕試し、という使い方もできます。また、手元の史料をもとに参加者どうしが交流する「つながる」機能もあります。「つながる」機能から、未知の史料の発見につながるかもしれません。
 多くの皆さんに参加していただくため、通常の報道発表のほか、SNSやニコニコ動画とのコラボなど積極的に情報発信しています。プロジェクトを通して、地震研究や防災にふだんは関心が高くない方々に興味をもっていただけるのではないかと思います。

翻刻開始

翻刻開始

■ みんなで翻刻と地震調査研究 ■

 過去の地震発生履歴は、史料を翻刻し分析することから明らかになったものも多く(たとえば、地震本部ニュース2012年11月号(P.8)の武村雅之さんや2015年冬号(P.10)の西山昭仁さんの記事をご参照ください)その結果は地震本部の長期評価などでも参照されています。近代的な地震観測網による観測がなされているのは明治以降、この百数十年くらいのことです。地震について書かれた史料を解読することにより、それ以前に発生した地震の経験を今後の災害軽減にいかすという意義も大きいと考えています。
 とはいっても、ほとんどの地震研究者は文字(くずし字)を読めず、史料を観測データと同じように自由に扱えません。くずし字がテキストに変換されることで、検索などの機械処理ができるようになり、新たな発見につながる可能性があります。

■ みんなで翻刻の今後 ■

 プロジェクトの最初の目標は、東京大学地震研究所図書室が所蔵する「石本文庫」のうち114点をすべて翻刻することでした。これは公開から141日目に達成されましたが、私たちの予想を越える早さでした。その後、ステージ2および3として、同図書室の所蔵史料でデジタル撮影済のものを順次追加しています。
 地震史料の翻刻を目標としてスタートしたプロジェクトですが、この手法は各分野の史料に適用可能です。また、昨今話題になっている機械学習を用いた史料解読のための基礎データとなる可能性も秘めています。今後は、地震史料の翻刻を継続しつつ、ほかの分野の研究者や史料の所蔵者とも協力して、オンライン翻刻のための基盤として発展できればよいと考えています。

加納 靖之(かのう・やすゆき)

加納 靖之(かのう・やすゆき) 京都大学防災研究所・助教(附属地震予知研究センター勤務)
2005年京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻博士後期課程修了、博士(理学)の学位取得。京都大学大学院理学研究科21世紀COE研究員を経て、2008年3月より現職。地震と地下水の関係や古地震について研究しています。みんなで翻刻のアイデアは、京都大学理学研究科の中西一郎さんと始めた京都大学古地震研究会(http://kozisin.info/)から生まれました。文理融合でさまざまな人々が集う研究会です。


(広報誌「地震本部ニュース」平成29年(2017年)夏号)

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