地震調査研究推進本部(「地震本部」)は、東日本大震災を踏まえ、政府の活動の指針である「新たな地震調査研究の推進について−地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成21年4月策定)の見直しに向けた検討を進めてまいりました。第31回中央防災会議の議を経て、9月6日付で改訂することが正式に決まりましたので、その概要について紹介します。
地震本部は阪神・淡路大震災を契機に制定された地震防災対策特別措置法に基づき、地震調査研究を政府として一元的に推進することを目的として設置されました。同法には、地震本部の所掌として、政府全体の地震調査研究の指針となる「総合的かつ基本的な施策の立案」が定められており、平成11年4
月に地震調査研究の基本的な施策をまとめた「地震調査研究の推進について」を策定し、平成21年4 月には地震調査研究の進展状況等を踏まえ、今後10年間の基本的施策をまとめた「新たな地震調査研究の推進について」(新総合基本施策)を策定しました。
しかし、地震本部は、東日本大震災を踏まえ、平成23年9月に地震調査研究の課題等を検証し、新総合基本施策を見直すことを決定しました。
見直しの議論は、主に政策委員会の下に設置されている総合部会において、第24回(平成23年12月26日)から第31回会合(平成24 年7月17日)までの計7回行われ(第30回除く)、関係省庁の東日本大震災を踏まえた対応状況や、大学の地震調査研究の進捗状況、地方公共団体・民間企業の地震調査研究の活用状況についてヒアリング、国民や地方公共団体へのアンケート調査を行い、東日本大震災を踏まえた地震調査研究の課題・教訓等を議論し、検討を行いました。見直し案は、一般の意見募集(パブリックコメント)を経て総合部会で取りまとめられ、さらに第41回政策委員会での議論を経て、第33 回本部会議(平成24年7月30日)において固められました。その後、平成24年9月6日の第31回中央防災会議において、妥当なものであると認められ、同日付で正式に地震本部決定となりました。
見直しのポイントを、図に示します。まず、1番目の地震長期予測については、今回の東北地方太平洋沖地震の発生の可能性を十分に検討していなかったという課題を踏まえ、先般、被害想定が発表された南海トラフの巨大地震も含めて、マグニチュード9クラスの超巨大地震についても評価が可能となるよう、評価手法の改善を行うとともに、過去の地震発生履歴データ等の充実を図ることとしています。
2番目の地震の即時予測や、3番目の津波予測については、今回の東日本大震災において緊急地震速報の誤報が発生したことや津波警報の第一報が過小評価になったことを踏まえ、海域の観測網等を積極的に活用するなどして、地震や津波の即時予測技術の高度化に向けた研究を推進することとしています。
4番目の研究成果の社会還元については、これまでは、地震調査研究の成果が、必ずしも十分に防災・減災に貢献できていなかったことを踏まえ、防災教育等の支援や工学・社会学分野との連携強化等を推進することとしています。
地震本部は、今回改訂した「新たな地震調査の推進について」に基づき、防災・減災に確実に貢献するよう、今後とも関係機関一丸となって、地震調査研究の推進に取り組んでまいります。なお、今回改訂された全文については、以下のURLをご参照ください。
https://www.jishin.go.jp/reports/policy_report/
(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)8月号)