現在、文部科学省が実施している海域活断層調査では、「新たな活断層調査について」(地震調査研究推進本部、2009)で掲げられた陸上で認定されている主要活断層帯の海域延長部を主たる対象としている。しかし、最近の内陸での大地震が主要活断層帯以外の活断層や地下の伏在断層で発生していることから、今後は、分布が海域のみに限られている活断層に対する調査も実施していくべきである。また、海底活断層の詳細な活動履歴については、把握に必要な年代試料の採取が地域的な堆積環境に左右されることから、調査された海域は限られている。技術的には条件さえ整えば陸域並みの評価が可能であることから、困難さは伴っても粘り強く調査が継続されていくことが望まれる。ただし、現実的には日本列島の沿岸全海域を短期間で調査することは困難であるため、既存データを有効活用しつつ、どの海域を優先し、そこをどのような調査仕様により実施するのかが重要である。
その観点において、近年、日本海東縁部のひずみ集中帯においては2004年中越地震、2007年中越沖地震などの被害地震が発生しており、調査の優先順位は高いと考える。これらの地震の震源域には海陸を問わず断層関連褶しゅう曲きょくが発達しており、これを形成する断層の活動性や深部形状の評価手法を早急に確立していく必要がある。
また、2011年東北地方太平洋沖地震に関しては、沈み込み帯において発生した地震であり、本稿で述べている海域活断層調査の対象とは異なる範はん疇ちゅうのものであるが、このような巨大地震に伴って誘発的に発生する地震の中には、調査対象とするべきものも含まれている。例えば、2011年4月11日福島県浜通りの地震(M7.0)では地表に正断層型の地震断層が出現している。この地震のテクトニクス的な背景を考えれば、これと同様な地震が太平洋側沿岸海底下に発生する可能性があり、このような地震のポテンシャルを示す海底活断層の把握も早急に進めるべきと考える。
(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)4月号)