パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 文部科学省における地震調査研究に関する取組(文部科学省)

(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)4月号)

 文部科学省は、地震調査研究推進本部(以下、地震本部)の事務局として、地震本部の審議・活動を円滑に推進するとともに、地震・津波による被害の軽減を目指し、海底観測網の整備や、南海トラフや日本海などの海域の調査、全国の主要な活断層の調査など、様々な地震に関する調査研究を推進しています。ここでは、平成25年度に実施を予定している主な事業について紹介します。


 南海トラフで発生する地震は今後30年以内の発生率が高く、中央防災会議においても南海トラフで発生する可能性のある最大クラスの被害想定が昨年8月に公表され、関係地域では防災・減災対策の一層の強化が求められています。
 本プロジェクトでは、調査観測データが不足している南海トラフの海溝軸付近や地震発生の特性が十分に解明されていない南西諸島海溝周辺の詳細な構造を調査すべく、地下構造調査や歴史資料などの調査や、これに基づく、地震・津波シミュレーションを実施する予定です。これらの結果は地震本部での長期評価に役立てられます。
 また、地域の防災・減災研究として、調査結果を基にした地震・津波被害予測の実施や、それに基づいた災害に強い都市計画や避難行動対策等の研究を実施する予定です(図1、2)。

 日本海東縁部では活断層が複雑に集中しており、ひずみ集中帯の重点的調査観測事業(平成19~24年)において地震発生モデルを構築するなどの調査観測を進めてきましたが、北陸沖や北海道沖については調査未了域であり、日本海西部では調査観測がほとんどなされていない状況です。日本海側の地方自治体では、東日本大震災以降、地震・津波の想定の検討が活発に進められてきていますが、これに必要な調査観測データが不十分な状態となっています。
 本プロジェクトでは、プレート構造の把握のための調査や、震源断層モデルや津波波源モデルの構築や強震動・津波シミュレーションの実施などを行う予定です(図3)。また、南海トラフや千島海溝付近の海溝型の巨大地震発生前後には、過去に背弧域(図4)において内陸や沿岸部の地震が発生している事例が見られることから、海溝型地震と内陸沿岸地震との関連性に関する研究も行う予定です。これらの結果は地震本部の長期評価や地方自治体における地震・津波の想定などに役立てられます。

 今後発生しうる首都直下地震や南海トラフの巨大地震等により引き起こされ得る都市災害に対して、被害軽減や早期復旧を図るための研究を行います。首都直下地震が発生した場合は甚大な被害が発生することが予測されており、首都圏の地震発生過程の解明や、被害予測シミュレーション等を実施し、地震ハザード・リスク予測のための研究を行います。また、首都直下地震では多くの建物が損傷するおそれがあることから、早期復旧や業務継続を図るため、建物の健全度モニタリングシステムの開発など、建物・都市の機能維持・回復のための調査研究を行います。人口や建物が集中している都市部では、公的な災害対応には限界があるため、一人ひとりの災害への対応能力の向上が重要なことから、地方自治体担当者の災害対応能力向上、一般市民の防災啓発のための訓練・研修プログラムの開発など、都市災害における災害対応能力の向上方策に関する調査・研究を行います。


 東北地方太平洋沖(日本海溝沿い)では今後も規模の大きな地震・津波が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われるおそれがあることから、これらの対策のため、地震・津波の早期検知や地震発生メカニズム解明を目的として、北海道沖から房総沖までの日本海溝沿いに、観測点150か所、総延長約5,600kmのケーブル式観測網(地震計・水圧計)の整備を平成27年度の運用開始を目指して行っています(図5)。平成24年度までは、観測ルートの事前調査や観測機器の製造を行ってきました。平成25年には各海域ごとに、順次海底への敷設工事を始め、整備完了海域から観測データがリアルタイムで取得される予定です。観測データは、気象庁等の関係機関に送られ、迅速かつ的確な災害情報の提供に貢献するとともに、地震本部で行われている地震・津波の将来予測(長期評価)に活用することで、被災地住民等の安心・安全の確保や復興過程における災害に強いまちづくりに貢献します。(地震本部ニュース2012年2月号及び3月号も参照ください。)

 切迫性が高く、甚大な被害を及ぼすおそれがある南海トラフでの大規模海溝型地震・津波に迅速に対応するため、東南海・南海地震の想定震源域に地震計や水圧計等を組み込んだマルチセンサーを備えたリアルタイム観測可能な地震・津波観測監視システムの整備を引き続き行います。東南海域のシステム(DONETI)については、すでに平成23年度から本格的な運用が開始されており、観測データは気象庁等にも配信され、津波警報等に活用されています。南海域のシステム(DONETII)については、平成24年度までは、観測ルートの事前調査や観測機器の製造等を行っていましたが、平成25年度には基幹ケーブルを敷設することを予定しています。今後も平成27年度中の本格運用開始を目指して、着実に整備を行っていく予定です(図6)。


 これまで、文部科学省では、地震本部で行われる活断層の長期評価や強震動評価のため、活動度が高く大きな地震(地表の長さ20km以上、M7以上)を発生させる可能性がある陸域の断層を、「主要活断層帯」として全国で110指定して調査を行ってきました。さらに、これらの断層のうち社会的影響が大きい地域に存在する活断層や評価の精度が十分でない活断層に対し、重点的調査や補完調査を行ってきています。また、近年、主要活断層帯以外に、短い活断層や沿岸部の活断層において被害を伴う地震が発生していることから、地表での長さが「短い活断層」 や「沿岸部活断層」についても調査を実施していく予定です。これらの成果は、地震本部での活断層の長期評価や強震動評価などに順次反映されていく予定です(図7)。

 内陸の活断層については全国を統一的基準のもとに認定し、カタログ化された「新編 日本の活断層(1991)」が刊行されており、地震本部の活断層の長期評価はこのカタログで認定された活断層を対象としていますが、海域についてはこのようなカタログは整理されていないのが現状です。海域における断層で生じる地震は津波の要因となることから、地震本部で今後検討する予定の津波評価や地方自治体の津波想定等のためには、海域の断層の情報(断層の長さ、形状等)が必要となってきます。これまで、様々な機関により、多くの調査が行われ海域の断層図が作成されていますが、精度や解釈は各機関によって異なり、一元化したカタログは作成されていません。そこで本プロジェクトでは、各機関で行ったデータ等を収集し、最新の技術で統一的に解析を実施することで、統一的な基準に基づいた断層の抽出を行います。抽出された断層を基にモデル化を行い、最終的には海域断層のデータベースを構築する予定です。このデータは、地震本部の津波評価や地方自治体の津波想定等に活用されるとともに、沿岸域の企業立地計画や既存建造物の設計に資する有益な情報として役立てられる予定です。

(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)4月号)

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する