昨年3月に発生した東日本大震災では、前号で紹介した国土地理院の測量技術を活用して、地震、津波に関連したさまざまな情報を取得しました。
電子基準点によるGNSS(Global Navigation Satellite Systems)連続観測の解析結果から、宮城県牡鹿半島で水平方向に最大で約5.3m、上下方向に約1.2mの地殻変動を捉えています(図1)。さらに、地殻変動の観測結果から震源断層モデル及びすべり分布モデルを作成し、公表しました(図2)。
図1 水平方向(左)と上下方向(右)の地殻変動等変動量線図
図2 GNSS連続観測から推定した震源断層モデル(左)とすべり分布モデル(右)
陸域観測技術衛星「だいち」のデータを用いたSAR 干渉解析を実施し、東日本全域の面的な地殻変動を把握しました(図3)。
地震発生の翌日より、青森県から千葉県の太平洋沿岸部において航空機による空中写真の撮影を行い、関係機関に提供しました。また、被災前後の写真を比較できるように左右に配置し、ホームページで公表しました(図4)。
撮影した空中写真を基に、被害状況等を表示した主題図を作成しています。東日本大震災においても、被災後の空中写真や衛星画像(福島第一原子力発電所周辺)の判読を基に、浸水範囲概況図の作成や津波による浸水面積(561km2)の計測を行い、関係機関に提供するとともに、ホームページで公表しました(図5)。
復旧・復興事業に必要な位置の基準を整備するため、地震によって変動した地域の基幹的な三角点(位置の基準点)約1,900点を測量し、電子基準点の位置と合わせて求められる地殻変動量から補正パラメータを構築し、地震によって変動した三角点約43,000点の測量成果の改定を実施しました。また、地震によって変動した地域の水準点(高さの基準点)約1,900点の測量を行い、水準点の測量成果の改定を実施しました。
航空レーザ測量を実施し、高精度な標高データを取得することで、数値標高モデルの作成や被災後のデジタル標高地形図の作成を実施しました(図6)。
また、災害復興事業に使用するための災害復興計画基図を整備し、国や地方公共団体へ提供しています(図7)。
災害が発生した際に、調査・収集した被害情報や応急対策・復旧復興を支援するための情報の多くは、国土地理院のホームページから電子国土Web システムを用いて提供しています(図8)。
国土地理院では、被災地の現況把握及び災害対策並びに復旧・復興計画の策定等を支援するため、国土に関するさまざまな地理空間情報を整備・提供しています。
国土地理院ホームページURL〔http://www.gsi.go.jp/〕
(広報誌「地震本部ニュース」平成25年(2013年)4月号)