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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 地震リスク評価とリスクコミニュケーション

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)7月号)




 東日本大震災では、東北から関東にかけての太平洋側の広い地域で大きな揺れや津波に見舞われ、多くの企業が被災しました。建物の構造躯体に被害が無かった場合でも、天井や間仕切壁の損傷・落下、設備機器の転倒や移動、電気や水などのインフラの途絶などで、事業を再開できない事例が多数ありました。また、部品や原材料の供給が途絶えて操業できない工場もありました。
 清水建設では、地震調査研究推進本部の作成した確率論的地震動予測地図の計算手法をベースに、お客様の保有する施設の地震リスクの大きさや地震対策の効果を定量的に評価できるシステムを開発し、お客様とのリスクコミュニケーションに活用しています。ここでは、そのシステムの概要と、システムの活用に当たって感じていることをご紹介します。


 本システムは、地震調査研究推進本部の作成した確率論的地震動予測地図の計算手法をベースに、対象とする場所の地震危険度をピンポイントで評価できるように発展させ、さらにその地点に建つ建物(主に、生産施設を対象としている)のリスク評価にもつなげたシステムです。評価システムのフロー図を図1に示します。本システムでは、その地点での地震危険度を評価する「地震ハザード解析」と建物・生産施設の地震脆ぜい弱じゃく性を評価する「施設フラジリティ解析」をベースに、建物や設備が損傷することによる直接的な損失だけでなく、事業中断による間接的な損失も評価できるようになっています。


 地震ハザード解析について、もう少し詳しく説明します。本システムでは、対象地点の住所を画面上で検索して入力できるようになっています。住所を入力すると自動的に対象地点の地図が表示されますが、逆に地図上で場所を指定することもできます。システムには、あらかじめ日本全体の地震の発生情報とその地点の地盤の揺れやすさの情報が入っており、確率論的地震動予測地図の計算手法をベースに、対象地点での地震危険度を評価します。評価結果として、図2に示すように、その地点の地盤の揺れやすさの値、今後30年間に震度6弱以上の揺れに襲われる確率、周辺の主な活断層や海溝型地震の情報などが画面上に出力されます。展示会などで本システムを紹介するときには、この結果をその場でA4 一枚のシートに出力し、結果をご説明した上でお持ち帰りいただくということをしています。


 次に、施設に関連する諸定数(階数や構造、初期投資額、1日当たりの生産額、建物や設備の耐震グレードなど)を入力すると、対象とする施設の地震リスクを評価できます。建物の被害額の予測例を図3に示します。50年に10%の確率で発生する揺れの大きさに対する被害額の予測のほかに、10年、30年、50年という期間を想定したときの被害額も予測できます。
被害額の中には、建物・設備、生産装置、ユーティリティが損傷を受ける直接的な損失のほかに、生産施設やライフラインの復旧に時間がかかり事業が中断した場合の間接的な損失も含まれています。施設の諸定数は複数入力できますので、建物が一般的な耐震構造の場合、制震構造の場合、部分的に免震を取り入れた場合、建物全体を免震構造にした場合などの結果を比較して表示することができ、地震対策の効果を定量的に把握できます。また、被害額の内訳もわかりますので、費用対効果が高い地震対策を選択することもできます。


 展示会などで、来場されたお客様に本評価システムのデモをする機会があります。最初はあまり地震に興味をもたれていない方でも、自分でパソコンを操作して住所を入力したり、自分に関係のある場所でのピンポイントの評価結果が表示されると、関心をもっていただけるようです。ただ、確率論的な評価結果を理解していただくのは、短時間の説明では難しいものがあります。複数地点(会社と自宅、本社と支店など)の結果を出して、距離的には近い場所なのに結果の数値が異なるのは地盤の揺れやすさが異なるためだとか、揺れにくい方の地盤でより地震危険度が高いのは、近くに発生確率の高い大地震の震源があるため、などと相対的な関係を説明すると、よく理解していただけるようです。このように、本評価システムを使った地震リスクの説明は、お客様とのリスクコミュニケーションのきっかけとして役立っています。
 東日本大震災の影響で、一般の方の地震に対する関心も高まっています。地震のリスクを知って正しく理解していただき、建物の耐震補強、制震構造や免震構造の採用など、適切な地震対策に結び付けていただくことができればと考えています。

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)7月号)

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