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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. アキ(Aki)を使おう

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)6月号)


 「東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震は、阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震と比べると、揺れの源である断層の長さが10倍、幅が10倍、ずれの量が10倍で、震源域の強大さ(専門用語で地震モーメント)は千倍です。千円札と一円玉ほども違うのです。」このような説明をすると、「でもマグニチュードは、そんなに違いません。どうしてですか?」という問いが返ってくる。
このような問いを発する人に、対数スケールを説明するのは、必ずしも容易ではない。「なぜ、専門家はそのような、一般の人にわかりにくい数字を使うのですか?」こう問いつめられたら、専門家の皆さんはどう答えるのか?
 福島第一原子力発電所の事故では、京ベクレルという、日常生活には無縁の桁の数字が登場して驚いた。単位としては知っていたが、実際に使われたのを見たのは、恐らくこれが初めてではないだろうか。何か大変なことが起こっているに違いないと多くの方が思われたに違いない。対数ではなく実数を使っているから、その大きさがすぐわかる。
 対数を用いたマグニチュードのわかりにくさは、地震国共通の課題のようだ。米国地質調査所のLucy Jonesさんは、「私はマグニチュードが大嫌い。」で始まる論文を書かれている(Seismol. Res. Lett., 2000)。そして対数ではない数字として、地震モーメント(震源域の強大さ)を使うことを提案した。最近よく目にするようになった、シーベルトやベクレルのように、学者名を単位名とすることも具体的に提案している。その単位は、地震モーメントを世界で初めて求めた安芸敬一先生(故人)の名前からAkiとしようと言うのである。兵庫県南部地震の24万アキに対して、東北地方太平洋沖地震は4億アキとなる。いかに大きいかが実感できるだろう。せっかく米国の地震学者が提案してくれているのに、使わない手はない。

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)6月号)

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