地震調査研究推進本部は、平成15年2月12日に公表した中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)を、最近の調査結果により活動履歴などに関する新たな知見が得られたことから、これを基に評価の見直しを行い、一部改訂版としてとりまとめ、2月18日に公表しました。ここではその概要を紹介します。
中央構造線断層帯は、奈良県香芝(かしば)市から五條市、和歌山県和歌山市、淡路島の兵庫県南あわじ市(旧三原郡南淡【なんだん】町)の南方海域を経て、徳島県鳴門市から愛媛県伊予市まで四国北部をほぼ東西に横断し、伊予灘に達しています。断層はさらに西に延びますが、ここでは佐田岬北西沖付近よりも東側を評価の対象としています。全体として長さは約360kmで、右横ずれを主体とし、上下方向のずれを伴う断層帯です。なお、断層帯の最東端の奈良県香芝市から五條市に至る金剛山地東縁部は断層の西側が東側に対して相
対的に隆起する逆断層です。
中央構造線断層帯は、過去の活動時期の違いなどから、全体が6つの区間に分けられます。
①金剛山地東縁
金剛山地東縁の奈良県香芝市から五條市付近までの区間
●最新の活動:約2,000年前以後、4世紀以前
●平均活動間隔:約2,000〜14,000年
●1回のずれの量:1m程度(上下成分)
②和泉山脈南縁
和泉山脈南縁の奈良県五條市から和歌山市付近に至る区間
●最新の活動:7世紀以後、9世紀以前
●平均活動間隔:約1,100〜2,300年
●1回のずれの量:4m程度(右横ずれ成分)
③紀淡海峡−鳴門海峡
和歌山市付近ないしその西側の紀淡海峡から鳴門海峡に至る区間
●最新の活動:約3,100年前以後、約2,600年前以前
●平均活動間隔:約4,000〜6,000年
●1回のずれの量:不明
④讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部
石鎚断層及びこれより東側の区間
●最新の活動:16世紀
●平均活動間隔:約1,000〜1,600年
●1回のずれの量:6〜7m程度(右横ずれ成分)
⑤石鎚山脈北縁(岡村断層)
石鎚山脈北縁の岡村断層からなる区間
●最新の活動:16世紀
●平均活動間隔:約1,000〜2,500年
●1回のずれの量:6m程度(右横ずれ成分)
⑥石鎚山脈北縁西部−伊予灘
石鎚山脈北縁西部の川上断層から伊予灘の佐田岬北西沖に至る区間
●最新の活動:16世紀
●平均活動間隔:約1,000〜2,900年
●1回のずれの量:2〜3m程度(右横ずれ成分)
中央構造線断層帯は連続的に分布しており、地表における断層の形状のみから将来同時に活動する区間を評価するのは困難です。ここでは主に過去の活動時期から全体を6つの区間に区分しましたが、これらの区間が個別に活動する可能性や、複数の区間が同時に活動する可能性、さらにはこれら6つの区間とは異なる範囲が活動する可能性も否定できません。
6つの区間が個別に活動する場合、地震の発生が想定され(表1)、長期確率は表2に示すとおりです。
金剛山地東縁と和泉山脈南縁の区間は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では「高いグループ」に属することになります。また、紀淡海峡−鳴門海峡、讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部、石鎚山脈北縁(岡村断層)、及び石鎚山脈北縁西部−伊予灘の区間は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では「やや高いグループ」に属することになります。
なお、上記6つの区間とは異なる範囲が活動する可能性や断層帯全体が同時に活動する可能性も否定できません。断層帯全体が同時に活動した場合は、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定されます。
この場合の地震発生の長期確率は求めることはできませんが、想定した6つの区間が個別に活動する長期確率を超えることはないと考えられています。
本断層帯ではこれまで数多くの調査研究が行われていますが、本断層帯は長大であり、その活動様式は複雑であると考えられます。したがって、過去の活動履歴をより一層明らかにするとともに、その活動区間や活動様式の特性を明らかにする必要があります。
また、ここでは佐田岬北西沖を本断層帯の西端として評価しましたが、活動度がやや低いと推定される区間を経て断層はさらに西に延びており、九州の別府−万年山断層帯へと続いています。したがって、ここで評価した断層帯の西端付近については、さらに西側の断層との関係を明らかにする必要があります。
中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の評価結果については、下記をご覧ください。
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/11feb_chuokozo/index.htm
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/11feb_chuokozo/index.htm
(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)4月号)