地震調査研究推進本部地震調査委員会は、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表しました。その後、「今後の重点的調査観測について」(平成17年8月)の中で、新たに基盤的調査観測の対象とすべき12の活断層帯が挙げられました。
今回、その中のひとつである幌延断層帯について、平成19年度に北海道立地質研究所(現:北海道立総合研究機構地質研究所)が実施した調査および平成21年度に北海道立地質研究所・産業技術総合研究所が実施した調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて評価し、平成22年11月25日に公表しました。ここではその概要を紹介します。
今回、その中のひとつである幌延断層帯について、平成19年度に北海道立地質研究所(現:北海道立総合研究機構地質研究所)が実施した調査および平成21年度に北海道立地質研究所・産業技術総合研究所が実施した調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて評価し、平成22年11月25日に公表しました。ここではその概要を紹介します。
幌延断層帯は、北海道宗谷地方の宗谷丘陵の西縁に沿って分布する活断層とされています。北海道稚内市に分布し、東側が西側に対して相対的に隆起する、長さ約22kmの逆断層とされてきました。
しかし、断層帯を挟んだ海成段丘面高度に著しい差はなく、また、断層帯を横断する反射断面では、西に単傾斜する地質構造のみが確認でき、断層運動によるずれは認められません。したがって、断層東側に位置する宗谷丘陵が現在に至るまで継続的に隆起していることを示す変動地形学的証拠は認められず、またそのような地殻変動を生じさせる地下の断層の存在も認められていません。
以上のことから、宗谷丘陵の西縁に沿って分布し、宗谷丘陵を相対的に隆起させる東側隆起の活断層としての幌延断層帯は存在しないと考えられます。
なお、この断層帯が通過するとされる地域に存在する崖地形は、差別浸食による組織地形と判断できます。一方で、この地域の地層が西傾斜していることは明らかであり、この西傾斜の構造を生じさせる活動が現在も継続している可能性は否定できません。しかし、そのような変形をもたらす地下深部の断層が存在するとしても、その断層の上端が地表に達し、幌延断層帯を形成しているとは考えられないため、今回の評価の対象外とすることとしました。
反射法弾性波探査や群列ボーリングの結果から、この地域の地層が西傾斜していることは明らかですが、成因を含め、その詳細は明らかになっていません。また、この地域の西側には低角東傾斜のサロベツ断層帯が存在し、その震源断層下端はこの地域の地下深部にまで達している可能性があるため、天塩山地周辺の活構造の分布については、引き続き調査する必要があります。
■幌延断層帯の評価結果については、以下をご覧ください。
(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)2月号)