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  3. 富士川河口断層帯の長期評価の一部改訂


 地震調査研究推進本部地震調査委員会は、「富士川河口断層帯の長期評価の一部改訂」をとりまとめ、平成22年10月20日に公表しました。ここではその概要を紹介します。
 富士川河口断層帯の評価は平成10年10月14日に公表されていますが、その後、最近の調査結果により、活動履歴などに関する新たな知見が得られたことから、これを基に評価の見直しを行い、一部改訂版としてとりまとめました。




 富士川河口断層帯は、静岡県富士宮市(旧富士宮市及び旧富士郡芝川町)から、富士市(旧庵原【いはら】郡富士川町)を経て静岡市清水区(旧庵原郡由比町及び旧同郡蒲原町)に至る断層帯です。
長さは約26km以上で、概ね南北方向に延びており、断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層です。ただし、本断層帯は、南方海域に延長していると推定され、北方にも延長していく可能性があります。


 富士川河口断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は、約7m/千年と推定されます。
 富士川河口断層帯は、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界付近に位置し、駿河トラフで発生した海溝型地震に伴って活動してきたと推定されます。しかし、地表地質調査では、1回のずれの量が明らかになっておらず、また、本断層帯から離れた浮島ヶ原地区では、堆積物の急激な変化が得られていますが、これから推定される過去の活動時期は、断層近傍の地表地質調査から推定される結果と異なります。
このため、富士川河口断層帯が活動した際の地殻変動をどう考えるかにより、過去の活動時期について以下の2つのケースが考えられます。

(ケースa):浮島ヶ原地区の堆積物の変化から推定した場合
●最新の活動
 13世紀後半以後、18世紀前半以前
●平均活動間隔
 約150〜300年
●1回のずれの量
 1〜2m程度 (上下成分)

(ケースb):断層近傍の地表地質調査結果から推定した場合
●過去の活動
 6世紀以後、9世紀以前、もしくはそれ以後
●平均活動間隔
 約1,300〜1,600年
●1回のずれの量
 10m程度 (上下成分)

 ケースa、bに示された値は、推定される平均活動間隔のそれぞれ最小値、最大値を表しており、実際の平均活動間隔はこれらの範囲内の値である可能性もあります。また、1回のずれの量は平均的なずれの速度と平均活動間隔から間接的に推定されているので、平均活動間隔の値によって変化することに注意する必要があります。
 なお、富士川河口断層帯は、駿河トラフで発生した海溝型地震とは独立して、陸上の活断層部分が活動した可能性もあります。この場合の過去の活動時期及び平均活動間隔はケースbと同じで、1回のずれの量は数m程度である可能性があります。


 過去の活動に基づくと、富士川河口断層帯は、駿河トラフで発生する海溝型地震と連動して同時に活動すると推定され、この場合、海溝型地震と合わせてマグニチュード8程度の地震が発生する可能性があります。
(ケースa)
 断層近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に1〜2m程度高まる段差や撓たわみが生じる可能性があります。また、浮島ヶ原地区周辺では沈降が生じると考えられます。本断層帯では、活動時期が十分特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めています。そのため信頼度は低いものの、将来このような地震が発生する長期確率は表に示すとおりとなります。本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では「高いグループ」に属することになります。
(ケースb)
 断層近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に10m程度高まる段差や撓みが生じる可能性があります。本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は、表に示すとおりです。
本評価で得られた将来の地震発生確率には幅がありますが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では「高いグループ」に属することになります。
 なお、平均活動間隔は、ケースa、bに示される値を上下限とする範囲内である可能性があること、推定される1回のずれの量や地震後経過率などは、平均活動間隔によって変化することに注意する必要があります。


 富士川河口断層帯は、陸上の活断層として考えた場合、平均的なずれの速度が非常に大きい特異な断層帯です。また、本断層帯では、安政東海地震(1854年)をはじめとする過去の東海地震発生時に、地表に明瞭なずれが生じた記録はないものの、過去の東海地震と同時に活動した可能性が考えられます。したがって、近い将来の発生が懸念されている想定東海地震と同時に活動する可能性があると考えられます。
 しかし、富士川河口断層帯と想定東海地震の連動可能性に関する検討は未だ十分とは言えず、連動した際の地震像は明確になっていません。このため、駿河湾周辺で発生する地震像の総合的な理解を進めるとともに、本断層帯のようなプレート境界から派生し、海溝型地震に伴って活動すると考えられる活断層の評価方法について検討する必要があります。
 また、本断層帯に関する調査資料は現状において質、量とも必ずしも十分であるとは言えず、今後は断層の過去の活動や位置・形状を明らかにするための調査を実施する必要があります。


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