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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 静岡県における防災教育

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)11月号)





 昭和51年に東海地震説が社会的に注目されるようになり、地震防災は静岡県における重要関心事のひとつとなりました。それ以外にも、富士山や伊豆東部火山群といった活火山が県内に存在しているため火山防災への関心も低くはありませんし、都市型集中豪雨が注目されるきっかけとなった「昭和49年七夕豪雨」など、顕著な風水害の発生事例も身近なところに存在しています。このような背景から、静岡県民の防災意識の高さは全国有数のレベルにあると言われています。


 さまざまな自然災害の可能性が考えられる静岡県ですが、現在のところ最重要課題として認識されているのは「東海地震」対策です。学校や公共施設の耐震補強といったハード対策が進められ、その耐震化率は全国有数のレベルです。自主防災会の組織率も高く、県内では街中の公園に防災倉庫が設置されているのが普通の光景です。
 こういった標準的な防災対策の推進に加え、防災教育にも力を入れてきたことも静岡県の特徴のひとつです。東海地震の固有課題ともいえる地震予知情報に対応した子どもの引き渡し訓練などが行われており、「学校防災推進協力校」による地域の安全を支える人づくりと安全な学校づくりの推進策について実践研究などもなされています。
 また、各学校におけるさまざまな防災教育を支援する体制も充実しています。防災についての専門的知見を持ち、教員としての豊かな経験も兼ね備えた人材が、しばらくの間学校現場を離れ、県危機管理部と4つの地域危機管理局に配置され、行政と学校との橋渡し的な存在となって活躍しています。これらの人々が中心となって、小中高校及び特別支援学校と防災関係部局が連携した防災教育が展開されてきました。


 東海地震はM8クラスの海溝型大地震としては例外的に震源域の大部分が陸地の真下に広がっています。
そのため、東海地震が発生した場合には主要都市部のほとんどが震度6強以上という極めて強い揺れに見舞われるとともに、場所によっては数分以内に津波の襲来を受けると予想されています。また、県内には浜名湖周辺など液状化の危険性が高い地域も多く存在します。震度6強以上の強い揺れ、広範囲の液状化、そして10mを超える津波が、ほとんど時間差なく連続して発生するのが静岡県で予想される地震被害の特徴です(図1)。連続・複合して発生する災害を想定内にする防災教育が求められています。


 今回の防災教育支援事業では、最新の科学・技術的知見を踏まえた防災教育への新たな取り組みを進めています。まず防災教材の開発として、地震の揺れから津波襲来までの時間推移をわかりやすく提示するための動画の作成に取り組みました( 図2)。津波をシミュレーションするためのデータは中央防災会議のものを活用しました。さらにここ数年で急速に整備が進んでいる航空レーザー測量による1〜 2m毎という高解像度の地形データを使った動画作成にも取り組んでいます。
 津波動画は三陸地方などですでに作られており、防災教育の現場などでの活用実績も知られています。静岡県では県外企業に頼らず県内の産官学の連携で制作に取り組んだことが特徴です。防災は地域性が強い課題であることに加え、数十年あるいは百年以上に及ぶ
息の長い取り組みが求められます。そのためには各地域に根差した知見を取り込むとともに、新しい取り組みでもたらされた技術などが地域内で蓄積していくことが必要だと考えています。
 また、恐怖心や緊急性を煽るだけではない教材の一例として、津波遭遇体験からの生還者の声にもとづいた「大津波サバイバル」という教材の作成も進めています。この教材は2004年のインド洋大津波で極めて大きな被害を受けたインドネシア・バンダアチェで生き残った人へのインタビューとそれを基に作成したイラストを使って作ったものです(図3)。現在、これらの教材を用いた実践に取り組んでいます。
 近年になってその重要性が強く認識されてきた新しい防災課題もあります。例えば被災児童のこころのケアといった問題は必ずしも現場レベルではその認識が広くいきわたっていない状況でした。本事業開始後この問題の重要性を鑑みて、別途の予算措置で「学校現場・養護教諭のための災害後のこころのケアハンドブック」(図4)を作成し、そのテキストを用いた教職員の研修なども実施しています。



 静岡県では先進的な防災教育が長年にわたって取り組まれてきました。しかしながら地元・静岡大学は必ずしも防災教育と防災研究にこれまで熱心ではなかったという反省があります。今後は、本事業の成果に加え、これまでの県内での取り組みを集積して、広く県内および全国の防災教育発展に貢献していきたいと考えています。

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)11月号)

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