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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 2009年サモア諸島沖地震津波の現地調査



 2009年9月29日午前6 時48分(現地時間)、太平洋ポリネシアの島国サモアの南方でマグニチュード8.1の巨大地震が発生しました。この地震に伴い発生した津波は、地震後約20分以内に周辺の島々を襲い、サモア(独立国とアメリカ領)とトンガに、死者180人以上という甚大な被害を及ぼしました。ここでは、地震発生後に実施した現地調査から、アメリカ領サモア・トゥトゥイラ島(Tutuila島)における津波被害についてわかったことを報告します。
 調査団は、地震発生から5 日後の10月4日夜にアメリカ領サモアに到着し、5日から8日までの4日間調査を実施しました。調査には日本からの4名に加え、アメリカとサモアの研究者3名が参加し、合計7名で調査を行いました。ここでは、トゥトゥイラ島の津波高さと津波による建物被害について報告します。なお、本調査はJST-JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力事業(代表: 佐竹健治)、および平成20年度産業技術研究助成事業( 代表: 越村俊一) の補助を受けました。


 図1に、測定した津波高さの分布を示します。ここでいう「津波高さ」とは、建物に残った海水の痕や樹木等に付着した雑草などの津波の痕跡を津波来襲前の海面からの高さとして表現したものです。我々が調査した範囲では、島の南西部を10m以上の津波が襲い(最大16m)、津波のエネルギーは島の西側に集まっていたことがわかりました。また、中央部の湾の奥でも津波高さが5mに達するほど増幅されたことがわかりました。以下では、島の南側の2地点について詳しく述べます。
 ポロア村(Poloa)は島の南西部にある小さな村です。ここでは村全体が津波の被害を受けました。図2にポロアで調査した津波の高さと被害の様子を示します。ここでは最大16mの津波が来襲していたことがわかり(写真1)、すべての建物が流失・破壊されました(写真2)。これほどの規模の津波が襲ったにも関わらず、ほとんどの住民が地震の揺れが収まった後に迅速に避難をしたおかげで、犠牲者は逃げ遅れた人1名にとどまりました。
津波から生き延びるための唯一の方法は迅速な避難行動であり、「強い地震の揺れの後には津波に注意」という教訓がいかに大切であるかがわかります。
 トゥトゥイラ島では、地震発生から14分後に気象局からラジオを通じて津波警報と避難勧告が発令されており、多くの人がラジオを聞いて避難をしました。しかし、場合によっては津波の来襲に間に合わない場合もあるので、沿岸部で強い地震の揺れを感じたら、警報や避難勧告を待たずに、すぐ高台に避難することを心がけておくべきです。





 次に、島中央部のパゴパゴ(Pago Pago)の被災地の様子を報告します。パゴパゴは島の中で最も人口密度の高い市街地であり、地震発生から約20分で津波が到達したことが報告されています。ここでは、地震発生から約4時間後にアメリカの人工衛星QuickBirdが被災地の撮影に成功しました。図3に地震前後のパゴパゴの衛星画像と被災地の写真を示します(上が津波来襲後、下が津波来襲前)。津波の来襲前の衛星画像からは、緑の草地やグラウンド、バスケットボールコートがはっきり見えます。しかし、津波後の画像を見ると、津波の浸水により草地が姿を消し、瓦礫や土砂に覆われていることがわかります。また、写真3に示す場所には建物がありましたが、現地に行くと流失していたことが確認できました。また写真4は衛星画像には写りませんが、津波によって流された自動車が建物の中にまで漂流していたことも確認できます。同様に、街中にも津波によって破壊されて流された建物の瓦礫が多く残されていました(写真5)。
 パゴパゴでの調査の結果、津波の高さは海面から5mにまで達し、街中の津波の浸水深さは2〜3mに及んだことが確認されました。図1からわかるとおり、パゴパゴ湾の形状はL 字型をしており、通常は外洋の波浪の影響を受けにくい穏やかな湾です。しかし、津波は通常の波浪と違って波長や周期が非常に長く(パゴパゴ湾で観測された津波の周期は約20分でした)、湾の長さと津波の波長が近くなると共振により津波の高さが増幅されてしまいます。我が国にもこのような複雑な形状の湾は数多くあるので、穏やかな湾の奥であっても甚大な被害が発生することに注意が必要です。

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