文部科学省による防災教育支援事業(平成20〜21年度)実施地域の公募に対し、阪神・淡路大震災の被災地域における5つの防災教育関係機関(兵庫県教育委員会、神戸市教育委員会、神戸学院大学、兵庫県立舞子高等学校、人と防災未来センター)が新たに「防災教育開発機構」を立ち上げて、企画提案を行い、これが採択されました。
同事業は、地域内のさまざまな主体が連携して防災教育の高度化と普及を図ることを目的としています。
当地域においては、図1に示すように、前述の5機関に加え神戸海洋気象台、兵庫県防災企画局、神戸市消防局、神戸市危機管理室の計9機関が中心となって、阪神・淡路大震災が生んだ新たな防災教育を全国に普及することを目指しました。
事業の最終段階で震災15年を迎えるこの時期に、「震災の教訓とは何か」について防災教育の観点から整理し、全国に発信したいという地域全体の意思も、応募の大きな契機となっていました。
事業は全国複数の地域で実施されるものですが、当地域における取組の特徴として、
1.多くの主体が参加
2.連携によるさまざまな取組
3.成果の地域外への普及が前提
が挙げられます。取組の中心となる9機関の代表から構成される防災教育推進委員会を計6回開催し、「9機関がどのように連携して成果を生み出すか」、「成果をどのように他地域に発信させていくか」について、順次検討を進めていきました。
その結果、平成20〜21年度において、図2に示すような成果を得ることができました。事業により開発された主な成果物の概要を次に示します。
◆全国の防災教育の分類表
(主担当:神戸学院大学)
・防災教育の担い手が独自の防災教育を展開する際に参考となるよう、全国の防災教育を、活動内容と教育目的の2 軸で分類。
◆緊急地震速報関連教材
(主担当:神戸学院大学)
・緊急地震速報が配信されたらどのように行動をすべきかを考え、話し合えるカード教材。
◆GIS活用ハザードマップ作成授業
(主担当:人と防災未来センター)
・まち歩き学習で得た情報と災害危険度GISデータを重ね合わせてハザードマップを作成し、インターネット配信する授業。
◆障がい者対応教材
(主担当:人と防災未来センター)
・発達・視覚障害等に対応し、すでに神戸で開発、全国普及されている先進的な防災教材をDAISY (Digital Accessible Information SYstem)化。
◆防災教育支援ガイドブック
(主担当:神戸市消防局)
・地域の支援を得て小学校で実施できる41の防災教育メニューの提示。国際機関と連携して英語版を作成し、海外で活用。
◆冊子「未来につなぐ防災教育」
(主担当:神戸市教育委員会)
・震災から現在までの神戸での防災教育の実践内容と課題への対応について、震災を知らない教員等が活用できる形にとりまとめ。
◆教員研修プログラム
(主担当:兵庫県教育委員会)
・兵庫県の防災教育推進指導員養成講座(初・中・上級)を改善するとともに、同プログラムから一般教員向け事例を「防災教育研修プログラム事例集」にとりまとめ。
・防災教育推進指導員養成講座修了者で構成する震災・学校支援チーム(EARTH)の訓練・研修会のプログラムの見直し。
◆ユース震災語り部DVD
(主担当:兵庫県立舞子高等学校、人と防災未来センター)
・震災当時子どもだった若者が、今の子どもに語り継ぐDVD(写真は、小学校におけるDVDを活用した授業風景)。
以上の成果物は、それぞれ主担当機関を中心に複数機関の連携により生み出されたものです。また、成果物の関連性を持たせることにも努めました。例えば、「ユース震災語り部DVD」は、教員向け冊子の中で紹介され、教員研修プログラムでも活用されています。
当地域の防災教育支援事業は平成21年度で終了しましたが、今後とも事業成果の普及に努めるとともに、事業を通じて得られた関係機関のネットワークを生かして新たな取組を検討するため、防災教育開発機構を存続させ、関係9機関の会合も定期的に開催することとしています。
委員会での検討内容等、詳細については、防災教育開発機構ホームページを参照してください。 http://www.dri.ne.jp/bousaikyouiku/
(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)7月号)