地震調査研究推進本部地震調査委員会は、「宮古島断層帯の長期評価」をとりまとめ、平成22年5月20日に公表しました。ここではその概要を紹介します。
宮古島断層帯は、北西−南東方向に並走する長沼断層系、与那原(よなばる)断層系、野原(のばる)断層系、腰原(こしばる)断層系、嘉手(かで)断層系、牧山断層、来間(くりま)断層によって構成され、分布形状や活動性の違いにより宮古島断層帯中部と宮古島断層帯西部に区分されます。
宮古島断層帯中部は長沼断層系、与那原断層系、野原断層系で構成され、長さは28㎞以上で、北西−南東方向に延びており、断層の東側が西側に対して相対的に沈降する正断層です。
宮古島断層帯西部は腰原断層系、嘉手断層系、牧山断層、来間断層で構成され、長さは17㎞以上で、北西−南東方向に延びており、断層の東側が西側に対して相対的に沈降する正断層です。
(1)宮古島断層帯中部
●最新の活動
約40 〜90 万年前以降に活動していることが認められるが、最近の活動を示す地形、地質の痕跡は見つかっておらず、最新活動時期を含めた活動履歴は不明
●平均活動間隔
不明●1回のずれの量
2m程度もしくはそれ以上 (上下成分)(2)宮古島断層帯西部
●過去の活動
約12万年前以降に活動した可能性及び1667年の歴史地震時に断層沿いで地変を生じた記録もあるが、明瞭な地形、地質的な痕跡は見つかっておらず、最新活動時期を含めた活動履歴は不明●平均活動間隔
不明●1回のずれの量
1m程度もしくはそれ以上( 上下成分)(1)宮古島断層帯中部
宮古島断層帯中部は、全体がひとつの区間として活動する場合、マグニチュード7.2程度もしくはそれ以上の地震が発生する可能性があります。
その時、断層近傍の地表面では、東側が西側に対して相対的に2m程度もしくはそれ以上に低くなる段差が生じる可能性があります。ただし、宮古島断層帯中部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明です。
(2)宮古島断層帯西部
宮古島断層帯西部は、全体がひとつの区間として活動する場合、マグニチュード6.9程度もしくはそれ以上の地震が発生する可能性があります。その時、断層近傍の地表面では、東側が西側に対して相対的に1m程度もしくはそれ以上に低くなる段差が生じる可能性があります。ただし、宮古島断層帯西部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明です。
宮古島断層帯の評価結果については、右をご覧ください。 https://www.jishin.go.jp/main/chousa/10may_miyakojima/index.htm
宮古島断層帯は、石灰岩の露出する亜熱帯の島しょ地域にあり、比較的低平な地形であることから河川が発達しておらず、地質学的に断層活動を判断する上で指標となる堆積物に乏しいため、通常のトレンチ調査やボーリング調査による活動履歴の復元が難しく、最新活動を含む活動履歴についてほとんどデータが得られていません。しかし、石灰岩の分布と断層との関係などからみて、断層帯の西側ほど活動的である可能性があり、今後は海域での調査も含め、断層帯西部を中心に過去の活動に関するデータを蓄積する必要があります。
この震度分布図は、地震の長期評価への理解を深めるとともに、地震に対するイメージを持っていただくために予測を行ったものです。
[解 説]
図は長期評価で想定された地震が発生した場合に予測される、宮古列島の震度分布の概要を示しています。
宮古島断層帯中部がひとつの区間として活動する地震(M7.2)の場合には、宮古島や池間島・大神島は震度6弱(橙色)以上の強い揺れに見舞われます。所によっては、本断層帯に沿った範囲や、宮古島西岸の一部などに震度6強(赤色)の大変強い揺れが予測されています。伊良部島・下地島では、震度5強(黄色)から6弱の揺れが、来間島では震度5強の揺れが予測されています。多良間島の一部は、震度5弱(黄緑色)の揺れに見舞われます。
宮古島断層帯西部がひとつの区間として活動する地震(M6.9)の場合には、宮古島西岸の一部や本断層帯に沿った範囲に震度6強の大変強い揺れが予測されています。宮古島の大部分や、伊良部島・下地島・来間島は震度6弱の強い揺れに、宮古島東部の一部や、池間島・大神島は震度5強の揺れに見舞われます。
なお、実際の揺れは、予測されたものよりも1〜2ランク程度大きくなる場合があります。特に活断層の近傍などの震度6弱の場所においても、震度6強以上の揺れになることがあります。
(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)7月号)