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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 子供たちを津波から守る(釜石市)

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)6月号)





 三陸海岸に面する本市は、明治以降、幾度の津波に襲われていますが、特に多くの犠牲者を出した明治29年6月15日の明治三陸津波から114年、昭和8年3月3日の昭和三陸津波から77年が経過し、津波の怖さを伝える人も少なくなっています。
 市では、生命、財産に甚大な被害を与える津波から子どもたちを守るため、教育現場、地域住民の皆さんと協力し、防災教育に取り組んでいます。 ここでは、防災教育支援事業により2か年にわたり実施した4つのテーマについて紹介します。


 これまでホームページで公開していた「動く津波ハザードマップ」は、パソコンに表示した地図上で津波の来襲イメージを確認するものでしたが、今回の改良版では、個別の避難シナリオを設定することが可能となりました。これにより、自宅の位置、避難場所の位置、家族構成、避難開始までの時間等を設定することで、津波に巻き込まれず、無事に避難できるかどうかをアニメーションによって疑似体験する
ことができます。また、地点の標高値や避難場所までの距離の表示も可能となりました。


 子どもたちを守るためには、子どもたちの身近にいる学校教員や地域住民の協力が欠かせません。
 各学校で津波防災教育を推進するにあたって、本市には内陸部出身や、津波についての知識や避難などの経験がない教員も多く、赴任した教員には、沿岸特有の災害である津波の怖さを知ってもらうため、毎年、津波防災研修を実施します。また、子どもの親を含む地域住民にも津波防災研修が必要です。
 近年、自主防災会の活動が活発になっており、昨年度、市では地域の防災リーダーを対象とした津波防災研修の実施やワークショップを通じて津波防災マップを作成しました。1月には、釜石市自主防災会連絡協議会が設立され、研修会や防災訓練を相互で実施し いくことが決定されましたが、「地域の安全は地域で守る」の理念の下、さまざまな活動が期待されます。


 実際に津波の怖さを体験したことのない子どもたちに、どうやってその怖さを教えるか。
 市教育委員会は、モデル校の教員らでワーキンググループを立ち上げ、小学校(低・中・高学年)、中学校の学習進度に応じて授業を実施できるように「津波防災教育の手引き」を作成し、手引きに基づいた授業が行われています。
 小学校低学年の授業では、避難の必要性や津波の特徴などを学びます。授業の中で津波の映像を初めて見る児童も多く、「人が津波に襲われて、怖かった」、「家などがくずれて、すごく怖かった」などの意見が聞かれました。
 小学校中学年になると、過去の津波被害を学んだり、体験者の話を聞くカリキュラムが組まれます。
 小学校高学年では、リアス式海岸という地形により波高が高くなる津波の特徴など、さらに踏み込んだ内容を学びます。
 中学校になると地域の一員として、津波から地域を守る対策を学び、津波被害の悲惨さを次世代に語り継ぐことの大切さを学びます。この授業を受けた生徒は、「自分たちがしっかりと避難場所を把握して、逃げる手助けをしたい」、「自ら進んで地域の活動をしたい。お年寄りの家に救助に向かいたい」と感想を述べています。
 今後、市内沿岸地域の各小・中学校では、学校教育計画に「津波防災教育計画」が組み込まれ、津波に対する授業が行われます。


 津波が襲ってくるのは、学校や家にいるときばかりではありません。登下校中など、頼る大人がいない時のために地域の協力を得て、「子ども津波避難の家」の設置を進めています。昨年度は、一地区をモデル地区として約100件に設置し、協力者の皆さんを対象とした津波避難勉強会を実施しました。
 「子ども津波避難の家」には、ステッカーが掲示され、今後、市内沿岸の他地域においても、同様の取り組みを行います。


 三陸海岸に立地する本市においては、地震・津波災害に見舞われた過去の教訓を自覚し、万が一の場合には、地域の住民が一致団結して、防災・減災行動をとることが必要です。
 そのためには、単に行政が防災施設の整備や防災知識の提供を行うだけでなく、学校、地域、行政が連携して具体的な行動を起こす仕組みを作ることも求められます。
 自助、共助の必然性が伴う防災教育は、その過程の中で協力、創意工夫を凝らし、取り組みを行うことにより、子どもたちが生涯にわたって安全で安心のできる生活を営むための資質や能力を育て、更には、地域における担い手不足やリーダー不足などの課題解決にも役立つものと考えます。
 市では、本事業での取り組み成果を踏まえ、今後も防災教育を継続し、地域防災力のさらなる向上に取り組みます。

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)6月号)

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